カストロ(HUNTER×HUNTER)
かすとろ
天空闘技場200階クラスの闘士。長髪でヒラヒラとした服を纏う美形の男性。
ゴンが療養中の間にヒソカが戦う相手として登場した。初登場時点で戦績は9勝1敗という優秀な実績を持ち、「フロアマスターに最も近い男」と目されていた。
過去にヒソカと戦い敗北した事があり、その時「洗礼」を受けた事で念能力に目覚める。その後二年をかけてヒソカ打倒を目標に修行を積み、多くの念能力者がひしめく200階で9連勝を果たす。残り1勝利でフロアマスターという所まで来たタイミングでヒソカに再戦を申し込み、取材に対し「勝機が無いなら挑まない」「二年前とは違う」などと自信の高さを表明。それを聞いたキルアが実力を確かめようと“絶”で気配を消して部屋に近付いた所、部屋の中で椅子に座っているカストロに後ろから声をかけられるという事態となり、それと同時に椅子に座っていたカストロはいなくなっていた。
試合会場で彼は余裕の笑みを浮かべるヒソカに、これまでの9戦は一度も全力を出しておらず「全てはヒソカと戦うまでの準備運動に過ぎない」と豪語。試合開始と同時に攻撃を仕掛けた。
当初は自身の念能力で彼を翻弄し、虎咬拳で腕を切断するなど優勢に戦いを進めるものの、能力の正体を見破られてからはヒソカの意図の読めない奇術や「君は踊り狂って死ぬ」といった話術に平常心を揺さぶられ、更に能力に致命的な欠点がある事さえ看破されてしまう。その事で完全に冷静さを失ったカストロは無謀な突撃を仕掛けてしまい、ヒソカが巧妙に張り巡らせていた『伸縮自在の愛(バンジーガム)』の罠にかかって、彼の予言通り踊らされるように身体中を切り裂かれて絶命した。
アニメ第1作ではこのヒソカとの試合が(グロいため)大幅に省略されている。
複数の能力を修めているものの、ウイングの推察によれば天性の系統は強化系に当たる。
虎咬拳(ここうけん)
達人ならば大木を両断するものであり、念の熟練者であるサブが驚愕するほどの威力である。
カストロは更に念で強化し攻撃するスタイルを確立しており、繰り出すことで強力な威力を内包している。
ウイング曰く、カストロの虎咬拳は「すばらしい威力」であり、極めれば随一の使い手になっていたとのこと。
分身(ダブル)
自分の分身を具現化して操る能力。具現化系・操作系・放出系能力の複合技。
本体と連携することで相手の不意をついたり、身代わりや攻撃を防ぐ盾にするなど数的有利を作り出すことが出来る。
また、分身が繰り出す虎咬拳にも念を纏わせて攻撃することが可能であり、作中においても分身体が念の応用技を繰り出せるのは、レイザーくらいしか確認されていない。
この本体と分身の連携による念攻撃を 虎咬真拳と呼ぶが、ヒソカのトリックにより発揮されることはなかった。
かなりの集中力を要するため、重傷を受けている等コンディションが万全でないと思い通りに発動できない扱いにくさがある。
また自分が想像する(平常時の)姿を再現しているため、戦闘中にできた傷や汚れなどは再現できない(本体と見分けがつく)という欠点もあり、カストロはこの欠点に気付いていなかった為、ヒソカに大いに失望された。
ちなみに後のストーリーにも具現化系・操作系・放出系の複合能力を使う念能力者が登場しているが、あちらは「致死級の殺傷力を持つ時限爆弾を数十個以上具現化して遠隔操作する」という能力のために、
- メインの具現化系能力者と補助2人の3人掛かりで発動
- 爆弾の設置には対象に手で触れながらキーワードを発言しなければならない
- 起動には対象に能力の詳細と解除方法を説明する必要がある
など、様々な「制約と誓約」を課した上で成立している。
特に本来具現化系と放出系は最も両立が難しい組み合わせの一つであり、具現化・操作・放出系のどれにも属さないカストロにとっては途方もなく困難で負担の大きい能力であると推察できるにもかかわらず、独力のみで、しかも「制約と誓約」も一切無しという形でこの能力を完成させている。この辺りにヒソカが見込んだ彼の素質の高さが窺える。
また、自分自身の完全コピーという形ではないものの、カストロの他にも分身に類する念能力(念獣や念人形など)の使い手が後に複数登場しており、それらはいずれも
など、分身に特殊な能力を付与しているのに対し、カストロの分身(ダブル)にはそういった特徴がなく、応用の幅が狭いことも難点と言える。
虎咬真拳(ここうしんけん)
「分身(ダブル)」と「虎咬拳」の複合技。具現化した分身(ダブル)と共に虎咬拳で襲いかかる。
分身(ダブル)の方でもヒソカの腕を簡単に切断できるほどの威力がある(具現化系の念は具現化物を体から離すと強度が極端に落ちる)。敵が分身(ダブル)に気づいていない時は非常に強力な戦法であり、カストロにその気があったならヒソカの腕ではなく首を取る事も出来ていた可能性がある。しかしヒソカに分身(ダブル)を使っていることを看破された後は差し出された左腕以外には攻撃を当てられず、不意打ちでなければ有効性はあまり高くないと見受けられる(とはいえ、ヒソカクラスの達人でさえ片腕を犠牲にする覚悟で注意して見ていなければ容易には見破れないほどに精度は完璧である)。
カストロの敗因はヒソカの『伸縮自在の愛』に気付けず重傷を負い、念能力も動きも封じられてしまった事であるが、それ以外にも大きな失態をいくつも犯している。
試合序盤、『分身(ダブル)』に気付いていないヒソカに一方的に打撃を決め、追い込む事は容易だったにもかかわらずカストロは挑発を繰り返し、ヒソカに能力を見破るチャンスを与えてしまっていた。それを問題にならないと過信していたのか、見破られた直後に自ら能力と戦法をペラペラ相手に喋るという真似をしてしまっている。戦いの中で敵に能力を知られる事は命取りになりかねない事への認識が非常に甘かった事が窺える。
またヒソカの演出に惑わされたとはいえ、“隠”で隠された『伸縮自在の愛』を“凝”で見抜く事はカストロには可能だったとされている。ヒソカが念能力を行使していると疑いを持った時点で“凝”を使っていれば少なくとも罠の存在には気付けていたと考えられる。
とどめに『分身(ダブル)』が簡単に本体と見分けがつくという事をカストロ自身が全く気付いていなかった事も自身の能力の研究不足と言わざるを得ない。その欠点を指摘され、対応に窮して無謀な突撃に走ってしまった精神面の脆さとリスク対応の拙さも彼の致命的な弱みである。
総じて念能力による戦いの知識・経験不足がもたらした敗北であったと言える。しかし、それ以上に大きな失敗であり、ヒソカを失望させた原因は彼の『分身(ダブル)』という能力そのものである。
上述の通り『分身(ダブル)』はカストロ自身の系統と相性が極めて悪く、これはヒソカによれば「修得が困難すぎて他の能力を覚える余裕がなくなってしまう」ほどだという。
強化系は念を磨く取り柄があるので強くはなれるのだが、ヒソカからしたら先の知れた話なのである。
すなわちカストロにはこれ以上の伸び代がなくなってしまったのであり、そんなカストロをヒソカは「容量の無駄遣い」と吐き捨て、見切りをつけるに至るのだった。
天空闘技場という舞台の物語において、「フロアマスターに一番近い男」という大層な肩書きを持って登場していながら自慢の念能力を相手に散々貶された挙句無惨に殺されるという不遇なキャラとなってしまった彼だが、その役割は「自分に合わない系統の念能力を身に付けたらどうなるか」という悪例を主人公であるゴンとキルア、そして読者に示すことであり、ただのかませ犬という訳ではない。
また、自身の系統については「水見式」という方法で簡単に確認する事が可能であり、実際にゴンとキルア、ズシはこの方法で自身の系統を先に確かめている。この事からカストロが選択を誤ったのは完全に独学で念能力を鍛えていったからだと推察される。また、彼の“凝”を怠るを始めとした粗は後にゴンやキルアも同じ轍を踏みかけており、それを師の教えによって学習・回避できている。ゴンとキルアのように正しい師の下で適切な指導を受けていれば、カストロも自身に見合う能力を会得し、類稀なその才能を華々しく開花させる事が出来ていたかもしれない(少なくともヒソカは彼の才能に期待していた)。
余談だが、本編開始から蟻編終了までの期間が約一年半、カストロが念修行にかけた二年とはそれより半年も長い。GI編でゴンはビスケの指導を受けながら半年ほど修行を行っていたが、1000万人に一人の逸材と評されたゴンですら半年では放出系の能力一つでさえ実戦で使えるレベルに至っていない。クラピカの場合は半年で念を修得して旅団と戦い、ウボォーギン撃破から継承戦開始までが約二年である。誰の指導も受けずに二年で複数の能力の複合技を完成させたカストロの才能も十分に優秀だったと推して知れる一材料である。
「自分自身の分身を作り出して攻撃の矢面に立たせる」という戦法を選んだ事については、それだけヒソカに対する恐怖がカストロに根深かったという解釈もある。ヒソカとの試合では、彼は(最後の突撃を除いては)攻撃を仕掛ける方法は徹頭徹尾“分身を単体でけしかける”か“分身を先行させた上で影に隠れながら本体で不意打ちを行うか”のどちらかであり、強者然とした態度とは裏腹に内心ヒソカと正面から殴り合うのが怖くて仕方なかったのではないかと想像させられる。
ヒソカに「洗礼」を受けた最初の試合では、念未習得であるにもかかわらずヒソカからダウンを取っており、素の武道家としての実力は極めて高かったと考えられる。後の会長選挙・アルカ編で数多くのハンターがヒソカになす術もなく殺害されたことも踏まえると、戦闘能力ではプロハンターに勝るとも劣らぬものを持っていたと言える。ヒソカが彼を殺さずゴンのように成長に期待するのも頷ける話である。