概要
オムニ社が開発した治安維持用ロボット。
名前の「ED」とは「法務執行ドロイド(Enforcement Droid)」を意味する。
武装として両腕にアサルトキャノン砲と小型のロケットランチャーを備え、二足歩行による抜群の機動性と、AI制御による犯罪者と一般人の判別能力を持つ。
作中での活躍(笑)
このロボットを治安維持用として投入し、それによって世紀末状態と化したデトロイトの治安を劇的に改善、そしてその宣伝効果を伴って兵器産業に殴り込みをかけるのがオムニ社の筋書きであった。
しかし、オムニ社の重役・ジョーンズが自信満々でお披露目会を開いた時、事件は起きた。
ジョーンズに頼まれてオムニ社員のキニーが犯人役となり、彼がジョーンズに言われた通り銃を向けると、ED209は「武器ヲ捨テナサイ!! 20秒ダケ猶予ヲ与エル」と警告。
警告通りキニーは銃を捨てるが、なんとED209は彼が武器を捨てたことを認識できずに「残リ15秒ダ」とその後も警告を続け、さらにお披露目用にマニュアル操作だったにもかかわらずタイムカウントが切れると同時にキニーを問答無用で射殺。しかも劇場公開時にカットされたシーンではキニーが死亡したことも認識できず、既に死亡していたキニーを蜂の巣にするオーバーキルまで見せつけた。
配線を引きちぎってようやく停止させたが、オールドマン会長からは大目玉を食らい、ロバート・モートンのロボコップ計画が採用されることとなる。
当然、ED209は廃棄処分されそうになるも、ジョーンズが何とか折り合ってオムニ社の警備用として試験導入することに成功。その1号機が、ジョーンズを逮捕しに来たロボコップを排除するために投入され、プログラム『第四指令(オムニ社役員に敵対行動が取れない)』で動きが鈍っていたロボコップをスクラップ寸前にまで追い込むが、ロボコップが苦し紛れにED209の腕を強引に捻じ曲げた時に、何故か発砲を止めずに自らの腕を誤射してしまう。
さらに何故かシステムダウンを引き起こしてロボコップを逃がす隙を作り、どうにかジョーンズが復旧させ追撃をさせるも、今度は階段を降りられないという兵器として致命的な欠陥のために追撃できず、階段に足を踏み出したら案の定段差に足を取られ転倒。駄々っ子のようにもがいている間にロボコップを取り逃がしてしまう。
野戦用ロボットを室内で使うという発想もそうだが、あの程度の階段が障害になるなら不整地踏破など全く不可能と言わざるを得ない。「それくらい開発段階で気づけよ」と思わず突っ込みを入れたくなる、情けないポカである。
哀しき末路、そして悲しき余生
第1作『ロボコップ』では、終盤でオムニ社にパトカーで乗り込んだロボコップに対して駐車違反で警告するが、コブラ・アサルト・キャノンで重武装したロボコップに上半身を吹っ飛ばされ、残った下半身だけがピクピクするという末路を迎えた。
テストも不十分なのに物騒な重火器満載でロールアウトし、自信満々で実弾装填して泣きを見るパターンは続編の『ロボコップ2』でロボコップ2号機(麻薬中毒の犯罪者の脳を搭載した問題ありすぎなロボット)のお披露目式にも受け継がれる、オムニ社の黄金パターンの先駆けでもあった。
ただ、このテストの失敗は「ロボコップ計画を進めたかったモートン派の社員による陰謀」という説も存在するのだが、ED209の素のポンコツっぷりと『ロボコップ2』や『ロボコップ3』での扱われ方も考えると、ぶっちゃけ何のフォローにもなっていない。
何故なら『ロボコップ2』の冒頭のシーンでは、片足がマンホールの穴にはまり動けなくなったED209がレッカー移動されるというニュースが初っ端で流れ、『ロボコップ3』に至っては年端もいかない少女にハッキングされて味方の警備員に銃を向ける始末である。フォローのしようがない欠陥商品でしかないことが解る。
許されざる存在(別の意味で)
ジョーンズの言う通り「野戦でならそれなりに活躍する」だろう。だが、戦場はそんなに甘くない。
「それなり」でいいなら、『ブラックホーク・ダウン』の悲劇も起こってはいない。勝手に止まったり、容易にハッキングされたり、対戦車ライフルでぶっ壊される兵器に居場所は無いのである。
無人兵器の需要は確かに存在する。だが、少なくともED209は過酷な戦地で戦う兵士達の信頼を勝ち得るとは思えない。
そして最終的にオムニ社は日系企業「カネミツ」に身売りすることになったのだが、『ロボコップ』という物語の始まりの時点で、その命運は決まっていたのかもしれない。
リメイク版
逞しくなって帰ってきた!
2014年に公開されたリメイク版にも当然ED209は登場する。今回はなんと軍に正式採用され、量産されている。
大きく改変されたのはその大きさ。なんと全高3.35mとオリジナルの3倍近い。これは大体2階建ての家くらいの高さだといえば見当がつくだろうか。全長もかなり大きくなっている。
また火力も段違いに向上しており、対人・対車両用の複合ウェポンシステムを搭載し、オムニ社のPVでは(企業の宣伝用PVなので割り引く必要はあるが)、M1エイブラムス戦車の主砲射撃に耐え、反撃で同戦車を粉々にしている。なお、このウェポンシステムは「コブラシステム」という名である。
その上劇中では大量の爆薬の至近距離炸裂にも耐え、装甲もかなりのものである。
そして何より、脚部の可動域が増えたため鬼門だった階段の昇り降りも克服している。
「ポンコツなボウヤ」がすっかり「逞しいボウヤ」になって帰ってきた――かに見えた。
それでもED209は変わらなかったのだ。まずお約束の誤射に加え、「丸腰だから」と通してしまう判断力の低さ。
一応フォローすれば、今回は誤射された方は警告しても武器を捨てなかったので、流石にオリジナルほどポンコツではない。
そんなAIで大丈夫か?
今回のED209は攻撃力や防御力はともかく、AIの方にかなり問題がある。
はっきり言えば、かなり判断力が低いのだ。これでは誤射が頻発しそうである。
しかし、今作は世界中の国が戦闘ロボットを採用し、特にアメリカでは戦争の無人化が大きく進んでいるという設定である。
ロボット同士誤射しようが自国の兵士が死ななければ問題は無いし、世論が許す限りいつまでも戦争を続けられる。被占領国の民間人の命?何それ美味しいの?
そんな「無人化された戦争」のありとあらゆる意味でのシンボルとして、今作のED209は存在している。それが何を招くのか、そして数々のポカをどこでどういう風にするかは、ぜひとも実際に作品をその目で見て確認していただきたい。
なお、本作で描写された問題点は『ロボット兵士の戦場』(P・W・シンガー著)という本で詳しく紹介されている。
関連タグ
超兵器(まぁ、当時としては)