存在しない記憶
そんざいしないきおく
概要
存在しない記憶とは、『呪術廻戦』に登場する用語である。
正確には本作の地の文(ナレーション)でのみ使われたものであり、登場人物が発言したりストーリー上で使われたりする用語ではない。
作中では呪術高専東京校・京都校の交流会の中で、東堂葵が虎杖悠仁に性癖を尋ねた結果、「尻(ケツ)と身長(タッパ)のデカい女の子」という自身とドンピシャの好みを答えられたことで、初対面にもかかわらず東堂が虎杖と同じ中学校で親友として過ごした日々という文字通り「存在しない記憶」を勝手に妄想したシーンで初使用された。
東堂は突飛な性格・思考回路の持ち主であり極度の妄想癖もある、といった彼のおかしさを強調するギャグ的な演出・展開だと思われていた……この時点では。
ところが、渋谷事変における虎杖と脹相の戦闘において、虎杖を死の間際まで追い込んだ脹相の脳裏に同じ「存在しない記憶」という東堂と同じ表現と共に、脹相が壊相、血塗、虎杖、その他九相図の亡骸たちと共に食卓で談笑する記憶が流れ込み、強い混乱を来してその場から逃走してしまった。
つまり、「存在しない記憶」とは東堂の変態が高じたものではなく虎杖に原因があるものだという可能性が浮上したのである。
東堂の場合は本人の性格もあってか高専の仲間からはさらりと受け流されており、脹相戦の衝撃的な幕引きを際立たせている。
能力
描写されている限りだと、戦っている相手の脳内に、「過去に虎杖と楽しい日常を過ごしたことがある」というあるはずのない記憶が回想される。加えてこの洗脳(仮)が時間経過で解除される様子はないようで、戦いが終わった後もその記憶は定着し、虎杖を親しい間柄であるかのように思い込み続けてしまう。
被害者(?)一覧
最初に描写された被害者…ではあるが、「存在しない記憶」以降東堂は「自分は虎杖とは中学校時代からの親友である」かのように振る舞い始め、彼との呪力レッスンと花御との戦いの中で虎杖も東堂に「親友」として洗脳されてしまった(決着後に戻った)。
東堂は交流会以後も虎杖のことをさも当然のように「超親友(ブラザー)」として扱っており、そのせいで京都校1年新田新は二人が実の兄弟であると思い込んでしまった。
もはや加害者では?
第二の被害者にして「存在しない記憶」の異質さが明らかになった原因。
当初はかなり狼狽していたが、脹相はもとから「自身の術式の影響で、血の繋がった兄弟の異変を感じられる」能力を持っていることから「実の兄弟である虎杖の『死』を強烈に感じ取ってしまった」と結論付け、自身と虎杖が戦うよう仕向けた夏油(偽)に立ち向かう。
これ以降虎杖のことを大切な弟として扱うようになり、自分のことをお兄ちゃんと呼ぶよう求めるまで至る。
虎杖が壊相・血塗を殺した件については事故だとして受け入れ、東京で呪霊を狩る虎杖に当然のように付き添っている。
なお、偽夏油が虎杖のタフさを「我ながら流石」と評していることから、彼の生んだ呪胎九相図と虎杖がある意味「兄弟」であるのは存在しない記憶ではなく確かな事実である可能性も浮上している。
明らかに「存在しない記憶」の影響を受けているのはこの2名のみだが、読者間では吉野順平も同じ影響を受けていたと推測する運びもある(虎杖のことを「虎杖君」と呼んでいたのにもかかわらず、最後の最後で「ゆうじ」と称したため)。
総括
現状、正確な発動条件などの詳細は不明。そもそも本当に虎杖が使える能力なのかどうか、虎杖本人がこれを自覚しているかどうかも定かではない。
脹相が混乱した様子を見ていた宿儺も疑問符を浮かべていたことから、少なくとも宿儺由来のものではない可能性が高い。
また、六眼を持つ五条が気づいていない以上、一般的な「虎杖の肉体に刻まれた術式」であるという線も薄い。
もしもこれが本当に虎杖の能力であった場合、敵に対して自分に都合のいい記憶を流すことで相手を洗脳することができるという、バランスブレイカー同然の驚異的な能力だということになる。
逆に言えば、東堂の妄想癖・脹相との血縁によってそれぞれ別個に生じた現象だとしてもおかしくはなく、「存在しない記憶」という能力自体が存在しない可能性もゼロではない。
しかし、原作者の芥見下々はとあるインタビューの際、「存在しない記憶は虎杖の能力ではない」と発言している。一体どういう意味なのか。
pixivでは
pixivその他ネット上では、作中の意味とは違った使われ方をする場合がある。
呪術廻戦は少年漫画としてもかなりシビアな作風が特徴で、あまりにも救いのない結末を迎えるキャラクターや、強い友情で結ばれながらも敵同士になってしまった関係など、読者の心を抉るような展開が描かれることが多い。
これを受けてPixiv上では、呪術廻戦本編で描かれなかった幸せな結末や、本編ではありえない関係性など、「こうあってほしかった」「こうだったらよかったのに」という願いが込められた二次創作作品に付けられるタグとして使われている。
つまり、呪術廻戦版どうしてこうならなかった。
もちろん上記の「虎杖の能力(仮)としての存在しない記憶」に関する作品も投稿されている。総じて呪術廻戦本編のネタバレを含む作品が多いので検索の際は注意が必要。
その他
アニメ化の際、第1クールOP「廻廻奇譚」にて順平が東京校関係者と共に花見をしているという「存在しない記憶」を前もって組み込んだと思われるワンシーンが挿入されていたことで、特に原作既読者が初っ端から多大なダメージを負った。その後にノイズが走って暗転するワンカットが入るためかなりの異質感が演出されている。