概要
一般的には、「こうであってほしい/ほしかった」という強い願望を持つことや、他者に提示されたイメージの完成度・説得力の高さから「実際にそうだった気がしてきた」「何ならついでにこんなこともあった気がしてきた」と錯覚したりすることで生じる。
洗脳のように他者から植え付けられるものもあれば、ただの妄想や思い込みの場合もある。
学術用語として存在する「虚偽記憶/過誤記憶」とも重なる部分があり、また、マンデラ効果(複数名が同じ内容の事実に即さない記憶を持っている事)や都市伝説(例えば「違う時期の違う場所の光景である紅葉と桜」を「同じ場所の連続した風景」と誤って想起した場合「あちらでは桜が咲いているのに、こちらでは紅葉が散っている」という思い出になり、こういった出来事を事実と誤認すると「桃源郷伝説」や「神様と会った記憶」というような神秘的な思い出にすり替わることになる。他にも夢の内容と現実の記憶が混ざって、「人面犬などの妙な化け物と出会した記憶」を持ってしまったりなど)とも関わってくる。
近年では『呪術廻戦』本編内での利用によって読者に印象付けられた。
突如
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存在しない記憶ーーー
『呪術廻戦』用語としての「存在しない記憶」
正確には本作の地の文(ナレーション)でのみ使われたものであり、登場人物が発言したりストーリー上で使われたりする用語ではない。
作中では呪術高専東京校・京都校の交流会の中で、東堂葵が虎杖悠仁に性癖を尋ねた結果、「尻(ケツ)と身長(タッパ)のデカい女の子」という自身と全く同じ好みを答えられたことで、初対面にもかかわらず東堂が虎杖と同じ中学校で親友として過ごした日々という文字通り「存在しない記憶」を勝手に妄想したシーンで初使用された。
この時点では、東堂の突飛な性格・思考回路や極度の妄想癖を強調するギャグ的な演出・展開であると思われていた。
ところが、渋谷事変における虎杖と脹相の戦闘において、虎杖を死の間際まで追い込んだ脹相の脳裏に同じ「存在しない記憶」という東堂と同じ表現と共に、脹相が壊相、血塗、虎杖、その他九相図の亡骸たちと共に食卓で談笑する記憶が流れ込み、強い混乱を来してその場から逃走してしまった。
つまり、「存在しない記憶」とは東堂の変態が高じたものではなく虎杖に原因があるものだという可能性が浮上したのである。
東堂の場合は本人の性格もあってか高専の仲間からはさらりと受け流されており、脹相戦の衝撃的な幕引きを際立たせている。
関連キャラクター
「存在しない記憶」以降東堂は「自分は虎杖とは中学校時代からの親友である」かのように振る舞い始め、彼との呪力レッスンと花御との戦いの中で虎杖も東堂に「親友」として洗脳されてしまった(決着後に戻った)。
東堂は交流会以後も虎杖のことをさも当然のように「超親友(ブラザー)」として扱っており、そのせいで京都校1年新田新は二人が実の兄弟であると思い込んでしまった。
当初はかなり狼狽していたが、脹相はもとから「自身の術式の影響で、血の繋がった兄弟の異変を感じられる」能力を持っていることから「実の兄弟である虎杖の『死』を強烈に感じ取ってしまった」と結論付け、自身と虎杖が戦うよう仕向けた夏油(偽)に立ち向かう。
これ以降虎杖のことを大切な弟として扱うようになり、自分のことをお兄ちゃんと呼ぶよう求めるまで至る。
虎杖が壊相・血塗を殺した件については事故だとして受け入れ、東京で呪霊を狩る虎杖に当然のように付き添っている。
また、読者間では吉野順平も同じ影響を受けていたと推測する運びもある(虎杖のことを「虎杖君」と呼んでいたのにもかかわらず、最後の最後で「ゆうじ」と称した為)。
読者の考察
東堂の時点では単なるギャグ描写と見られていた「存在しない記憶」だが、その後脹相に同じ現象が起きたことで読者は大いに混乱することになる。
元からコミカルな描写をされていた東堂と違い、極めてシリアスな状況で「存在しない記憶」が発現したことに加え、作者が自他ともに認めるBLEACHファンであることも手伝って、虎杖に「過去改変」や「記憶操作」の能力があると考察する読者が多く、虎杖洗脳能力説が一気に広まった。
さらに第1話や回想でも虎杖は、校内で私服でいるにもかかわらずそれを咎められる様子もなかった事から、読者の間ではこれも洗脳による結果ではないかと考察する向きもあった。
最終的な結末
このように存在しない記憶が虎杖の能力ではという考察が読者の間で広まったのだが、その後は作者の芥見氏本人が「存在しない記憶は虎杖の能力ではない」と、この説を公の場で完全否定した。
さらに脹相と虎杖の関係が明らかになり、脹相が存在しない記憶を幻視した理由も判明。あの「存在しない記憶」が虎杖の能力によるものではない事が正式に確定した。
つまり、上記した虎杖洗脳能力説は完全に読者の早合点でしかなかったのである。作者の芥見氏としては脹相で存在しない記憶という表現を被せたのも、ただの天丼演出でしかなかったらしく、むしろネットを中心にして虎杖洗脳説が広まった事に驚いたとの事である。
この公表によって、読者の間で盛んに行われた虎杖洗脳説は急速に下火になって消えて行った。
ちなみに上記した虎杖が校内で私服でいた理由も、虎杖の高校は放課後の校則は緩く、さらに虎杖は放課後にそのまま祖父の病院に直行していた為に、私服に着替えていたという事だった。
順平が今際の際に「ゆうじ」と呼んだのも特に深い理由はなく、東堂が存在しない記憶を幻視したのもただただ東堂の変態性が高じた結果であってそれ以上でも以下でもない。
アニメでは
原作で話題になった場面であり、物語においても黒幕の正体に繋がる重要なシーンでもあるため、アニメ2期の渋谷事変編OPの「SPECIALZ」で頭を抱える脹相のシーンが挿入されている。
そして第37話「赫鱗」での脹相戦で存在しない記憶の場面が描かれる事になり・・
- 榊原良子氏のナレーションで語られる中、原作では解説が吹き出しだった「存在しない記憶」の説明が1場面の画面になる。
- フィルム映画を連想させるスタートから兄弟たちの食事シーンが、80~90年代のホームビデオのような画質になり、普段の画面比率の16:9が4:3に変わる。
- 原作では虎杖が兄である脹相にパンを渡すだけだったが、アニメではスパゲッティに変更され血塗にスパゲッティを与え口を吹き喜ぶ血塗と虎杖、脹相が「あーん」してもらう場面など原作にはなかったシーンが追加され兄弟愛要素が増加している。また場面の途中から脹相と壊相の服が虎杖の着ているパーカーと同じ赤色になるなど彼が存在しない記憶に蝕まれている場面が強調されている。
- 原作にも存在していたが、同じ卓で試験管に入った他の呪胎九相図達も1画面内で登場し白黒からカラーになった事で認識しやすくなった事もあり脹相が「10人兄弟の兄」という部分がより分かりやすくなった。
その他
アニメ化の際、第1クールOP「廻廻奇譚」にて順平が東京校関係者と共に花見をしているという「存在しない記憶」を前もって組み込んだと思われるワンシーンが挿入されていた事で、特に原作既読者が初っ端から多大なダメージを負った。その後にノイズが走って暗転するワンカットが入る為かなりの異質感が演出されている。
pixivでの利用
呪術廻戦は少年漫画としてもかなりシビアな作風が特徴で、あまりにも救いのない結末を迎えるキャラクターや、強い友情で結ばれながらも敵同士になってしまった関係など、読者の心を抉るような展開が描かれることが多い。
これを受けてPixiv上では、呪術廻戦本編で描かれなかった幸せな結末や、本編ではありえない関係性など、「こうあってほしかった」「こうだったらよかったのに」という願いが込められた二次創作作品に付けられるタグとして使われている。
つまり、呪術廻戦版どうしてこうならなかった。
勿論作中で登場した「東堂や脹相にまつわる存在しない記憶」に関する作品も投稿されている。虎杖の能力としての存在しない記憶に関する投稿も存在したが、こちらは公式で否定されて以降は殆ど投稿はされなくなった。いずれにせよ総じて呪術廻戦本編のネタバレを含む作品が多いので検索の際は注意が必要。
なお、上述の通り元々は呪術廻戦に限った用語ではないこともあり、使い勝手がいい為か他作品のイラストでもこのタグが使われることも珍しくなく、最近では同時期のヒット作である為かウマ娘のイラストによく付けられている。
関連イラスト
関連タグ
捏造 妄想 どうしてこうならなかった もうこれが公式でいいよ
- 半天狗、マキマ、パワー:同時期に週刊少年ジャンプで連載していた漫画の記憶改竄系キャラクター達であり、彼・彼女らも「存在しない記憶」能力持ちと(ネタで)言われる事がある。
- TAROMAN:1970年代に放送された特撮番組…という設定で製作されており、もはやこの作品自体が存在しない記憶の塊である。
- 人造昆虫カブトボーグV×V:タイトルの「V×V」、唐突な話の始まり方、次回に続く終わり方をして次回に関係無い話を放送、今まで居なかったキャラがあたかも最初から居たような扱いなどからファン達は有りもしない無印、Vシリーズの話題をする。
- 戦隊レッド異世界で冒険者になる:公式が主人公であるキズナレッドの登場作品であるキズナファイブがニチアサで放送されていたかのようなポストをしたり、更には……と言う意味でも存在しない記憶を生み出している。
- 言ってないセリフシリーズ:言いそうなセリフであっても劇中では言ってないのでニュアンス的にはここにも該当する。
- という夢を見たんだ:誰かにとっての理想的な状況を「夢オチ」として終了させるシナリオ。
- 擬似体験ってどういうことです?:『攻殻機動隊』で登場したセリフ。内容は存在しない記憶とほぼ同じである。
- 全て遠き理想郷:『Fateシリーズ』における理想郷および宝具。こちらも「こうあってほしかった」という用法で使われる。
- 集団幻覚、マンデラ効果:イメージの共有人数が増えるとこう呼ばれる。
- 存在しろ記憶:pixivの用法で実質的に上位互換なタグ。