概要
マンデラ効果(マンデラエフェクトまたはマンデラこうか、英: Mandela Effect)とは、都市伝説、あるいは記憶違いの一種を、不特定多数の人々が(主に過去にあった事実として)記憶している現象を指すインターネットスラングあるいはミームである。
本来は学術用語では無いが、これを基に心理学分野などで研究してみた者も存在する。学術用語として近いのは「虚偽記憶」「過誤記憶」であるが、ある一つの異なる記憶が不特定多数の人間に発生しているのが特徴とも言える。
元がスラングであるためか「マンデラこうか」と日本語読みするよりも、「効果」を「エフェクト」と呼ぶことの方が多い。
単なる冗談で済めばいいが、複数の人々が共通した異なる記憶を持つ場合が多く、これが真実では無いと否定されることに対して反発も生まれ、多くの場合「ある・ない」で喧嘩に発展しがちである。場合によっては「集団記憶改竄」などの陰謀論の元にされたりすることもある。
インターネットの発達やそれに伴うBBSやSNSの発達などにより、個人レベルに過ぎなかった記憶違いが共有され、また個人間では細かい部分が異なっていたものが擦り合わされることにより複数の人間で「細部まで共通した記憶」となってしまうことが発生している。これにより、マンデラ効果による現実との齟齬は日々深刻化している場合がある。
語源
マンデラ効果の「マンデラ」とは、元南アフリカ大統領のネルソン・マンデラその人である。
南アフリカでは当時人種隔離政策アパルトヘイトが実施されており、マンデラはこの解消のために政治運動を繰り返した結果投獄され、アパルトヘイト解消まで長く表舞台に出てこなかった。
上記のことが影響したのかは定かでは無いが、2009年頃、「マンデラは1980年代に死亡したはず」と異なる記憶を持つものが現れ、しかもそれが一人で無かったために「多くの人々が共有する記憶違い」を称するスラングにマンデラの名が選ばれた…という顛末である。
発生理由
多くの場合、人は記憶の端々の曖昧さを、推測や事前に得た知識で補うことが多く、この際に曖昧な部分が間違って記憶されたりすることがままある。
その際の記憶違いが些細なもの(例えばキャラクターの耳や尻尾の色の違い、行動時の手順の違いなど)であり、かつ記憶の元となる存在が有名な人物・事象などであった場合、同じような記憶違いを持つものが多く現れることとなる。
また、死亡説などの場合においては、別の(特に似たような立場の)人間の死の情報を見て、それを本来生存しているはずの人物のものと思い込むことから来ていたりする。特に、実際に死亡した人間と、死亡説の流れる人間についての元々の知識や記憶が曖昧であると起こり易い。
そしてそれらがメディアやインターネットなどの広範囲に共有される媒体を通じることで広く共有化されると、またその記憶自体が曖昧である者まで記憶違いを真実として共有してしまうこととなり、結果多数の者が同じ記憶違いを持ってしまう…と言われている。
一方オカルトなどではマンデラ効果による記憶は真実であるとされ、パラレルワールドが存在する証拠であると考えられる基となっていることがある。
画像や動画の記憶違いの場合、多くの人間が勘違いしているのをいいことに、誤った記憶に基づいた偽画像やコラージュ画像を作り込み、あたかも真実のものであると吹聴する人間がいる。
こうしてその画像を信じてしまった時、第三者に勘違いだと証拠を示されても「陰謀である、改竄されている」と思ってしまう人間もいるため、デマに発展しまった場合は注意が必要であろう。
具体例
代表的な事例を現実と比較した上でここにあげる。
- マンデラ死亡説
- 上記の通り、ネルソン・マンデラが死亡していたというもの。追悼式典などを実際に見たという記憶が共有されていることも多い。実際にはこの説が流れた当時マンデラは存命であったが、2013年に逝去した。
- オーストラリアの位置
- ピカチュウの尻尾
- ドラえもんのうたの歌い出し
- 故・大山のぶ代時代のドラえもんを象徴するオープニング曲。歌い出しが「あんなこといいな」で始まるというものだが、実際は「こんなこといいな」が正しい。(参照)
- ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャーのドラえもんクイズ100問企画でもこの齟齬を試すかのように、18問目でこれが出題された。
- 1998年秋のオールスター感謝祭でも引っ掛け問題として出題され、正解者(61名)の約2倍(116名)の回答者が「あんなこと」の方を選んでしまっていた。
- 諸事情により数回しか流れなかった楽曲
- 「るろうに剣心(1996年版)」のエンディングL'Arc~en~Cielの『the Fourth Avenue Cafe』や「アニポケ」のエンディング『タケシのパラダイス』が該当。これら楽曲は諸事情により数回しか流れなかったのだが、曲のインパクトが強すぎたためか長期間使われていたと錯覚している視聴者が少なくない。
- ジェイソン・ボーヒーズの武器
- ファンタゴールデンアップル味
- ファンタには1970年代にゴールデンアップルと呼ばれるフレーバーが存在したというもの。公式には存在しないとされる。
- 「ゴールデングレープ」というフレーバーが実在しており、グレープの「ブドウだから紫(皮の色)」という着色料を基にした色では無く、ブドウの実本来の色味を活かした金色がかった色であった上、「アップル」の味に似ていたとされ、これが勘違いの原因と言われる。
- のちに2002年、2006年に実際に販売された。嘘から出た実ということになる。
- 天安門事件で、無名の反逆者が戦車に轢き殺された
- 天安門事件で多くの人間が殺害されてしまったことは事実であるが、戦車の前に立ちはだかった「無名の反逆者」と称される人物が轢き殺されたという事実は存在しない。
- 更に言えば、天安門事件での犠牲者に関しては天安門前広場で殺された学生・デモ参加者よりも天安門前広場外で殺された学生・デモ参加者の方が圧倒的に多い。
- 学生が多く殺害されたこと、戦車が威圧的に行進する様子などから、よりセンセーショナルな記憶が間違って覚えられた可能性がある。
- ケネディ大統領暗殺事件
- 1963年11月22日アメリカ大統領のケネディが暗殺される事件が起きるその時に乗っていた人数が実際には6人乗りなのに4人乗りと記憶違いをしている人が多くいる、
- 4人乗りとみられるような写真もあることから陰謀なのではないかと考察する人もいるが、アメリカ各地に保存してある当該暗殺時の車の再現車などに4人乗りのものが混じっていること、再現VTRなどでもそのような自動車が使われたことがあること、実際の車は中央列とケネディの座っていた最後部との間には窓桟が存在しないオープンカーでパッと見で判別がつきにくいことなどが勘違いの元と考えられる。また、コラージュで4人乗りに加工した画像もある。
- ケネディ絡みでは実際の映像がカラーだったのに白黒で見たという話もあるが、これは単に当時まだカラーテレビが普及していなかったためであると思われる。
- 横山やすしの最期
- 横山やすしは暴漢に襲われて殺されたという説。実際の死因は過度な飲酒を続けた事による肝硬変である。
- ただし亡くなる3年半前の1992年8月に何者かに襲われて重体を負った事はあり、この事件との混同が誤解を生んだ原因と思われる。同時にやすしは1989年に吉本興業を解雇されてから事実上の芸能界引退状態にあったため、「テレビでまったく姿を見かけなくなった=92年に負った重体で寝たきりのまま亡くなった」と解釈された可能性が高い。確かに言語障害を患うほどの重傷ではあったもののさすがに実際は立って歩けるほどには回復しており、1995年7月に京都で開催されたやわた太鼓まつりに本人が参加していた様子が当時の写真と音声付きで報告されている。
- 存在しない回
- 存在しないシーン描写
- 存在しない台詞
- 言ってないセリフシリーズも参照。異なる台詞を繋ぎ合わせたり、誤って記憶していたり、はたまた物真似の過程で言っていない台詞を使用する、あるいはそのキャラクターの性格から言いそうな台詞などがこういう勘違いを起こしやすい。