三省堂国語辞典とは?
「明解国語辞典」から派生した国語辞典。記述主義を標榜していることで有名。
三国はこれを実例主義と呼んでいるが、実例主義の反対は作例主義であり、そういった意味でも三国は記述主義である。
新語・カタカナ語・口頭語に強い。類書にない項目や語義も、他の辞書に先駆けて収録する場合が多い。中高生から年配など、幅広い層を対象にしているため、語釈は簡潔かつ平明な表現を用いている。小学校で習わない漢字には、振り仮名が付いている。
第八版ではどうなる?
- 新規項目は約3,500。新たに「ラスボス・リアタイ・インキャ・身バレ・マリトッツォ」などが載る。「誤爆・忖度・尊い」などいくつかの項目に新しい語義区分も追加される。
- すべての語にアクセントが表示されるようになる。
- そのほか、怪しい誤用説・謎マナー・嘘語源に関する記述が加わるのと、用法の発生の年に関する記述も増えるなどの改訂がなされる。
第七版での特徴
話し言葉や俗語も多く収録。その際〔話〕話し言葉・〔俗〕俗語の記号が、語義などに付されている。ほかにも〔女〕女性語・〔児〕幼児語・〔雅〕雅語・〔学〕学生語などの記号が、たくさん付されているので、どの場面で、誰が使う言葉なのかが、ひと目で分かるようになっている。
ちなみに「巨乳」「貧乳」は載っていない〔明鏡国語辞典には載ってある〕。これは性的な俗語は載せないという方針があるからだという。
- 笑うことを意味する「W」が収録されたことでネット上で話題になった。”ダブリュー[W](名)①②③略④〔←warai=笑い〕〔俗〕〔インターネットで〕(あざ)笑うことをあらわす文字。「まさかwww」〔二十一世紀になって広まった使い方〕▽ダブル。”以上その内容。
- 「的を得る」「汚名挽回」「荒げる〔=荒らげる〕」は普通の表現として収録。〔第三~六版で「的を得る」は誤りとしていたが、第七版では、それを撤回した〕
- 「右」「左」は、字の形を用いて解説〔類書では方角で解説することが多い〕。「左」は”①(略)「一」の字では、書きはじめのほう。「リ」の字では、線の短いほう。”と書いてある。
- 「恋愛」「恋」「色情」など、恋愛に関する語も、男女に限らないとして、最新版では、文中に書いてある「男女」を削除。
- 「爆笑」についても「笑う人数が問題にされることが多いが、もともと、何人でもよい」や、「敷居が高い」についても「●近寄りにくい。●気軽に体験できない。」の意味が、誤用の注記なしで書いてあるなど、いろいろと興味深い内容になっている。
- 「全然」については、下に肯定的表現を伴うのは、話し言葉特有の表現であると示されている。
- ほかにも、「〔『なんじゃ』の例文で〕なんじゃらほい」「〔ツイッターでの〕なう・呟く」「〔『歴』の例文で〕恋人いない歴」「耳をダンボにする・マスオさん」「ディスる・リア充・中の人・キター!」なども収録。
- 「計る」「図る」「測る」「謀る」「量る」「諮る」など、異字同訓は、項目として別々に掲げられているので、漢字の使い分けが分かりやすく示されている。
- いちばん最後の項目は「んーん」で、主に女性語・幼児語で「いいえ」という意味を表す。他の辞書には掲載されていない。
- 動詞の可能の言い方では、ら抜き言葉も俗な言い方として掲げてある。例えば「見る」の可能の言い方で、「見られる」に対する「見れる」など。
- 最近発生した言葉や用法には、その普及した年代が記載してある。
書籍情報〔第八版〕
項目数
84,000語〔第七版より約+3,500語〕
▼本書では、改訂のたびに使われなくなった語は削除することが多い。第七版は82,000項目だったが、今回の改訂で約1,700項目削除されることが分かった(この場合、約200項目は別項目と統合された計算なる)。「着メロ・コギャル・携帯メール・スッチー」などが第八版で削除される模様。
編者
見坊豪紀・市川孝・飛田良文・山崎誠・飯間浩明・塩田雄大
発行日
2022年1月30日発行
- 1960年12月10日 初版発行
- 1968年01月10日 新装版発行
- 1974年01月01日 第2版発行
- 1982年02月01日 第3版発行
- 1992年02月10日 第4版発行
- 2001年03月01日 第5版発行
- 2008年01月10日 第6版発行
- 2014年01月10日 第7版発行
判型・ページ
B6判・A6変型版 1,760ページ
▼第七版も1,760ページだったが、判型が少し大きくなり、1ページの収容量と活字の大きさが上がった。
球団コラボ版もあったよ
第七版をベースに、2018年に阪神タイガース版、2019年に広島東洋カープ版、2020年に福岡ソフトバンクホークス版が発行された。
それぞれケース、ビニール表紙、見返し、扉など、装丁関係はもちろん、本文の用例の一部もその球団の仕様に変わっている。表紙は球団をイメージしたカラーで、表見返しには球場の写真も掲載されている。
- 2018年3月 阪神タイガース仕様発行
- 2019年3月 広島東洋カープ仕様発行
- 2020年3月 福岡ソフトバンクホークス版仕様発行
関連タグ
同出版社の国語辞典