概要
2012年より販売。
スバルとトヨタによる共同開発のスポーツクーペであり、トヨタ・86とは兄弟車である。
シャシーは軽量・コンパクトを狙って新規に開発。
86との違いは、外装ではヘッドランプ・フロントバンパー・フェンダー部のエンブレムなどが変更、内装はエンブレムなどが変更されている以外に大きな差はない。
エンジンも低重心と重量配分を追求すべく、スバルが開発したFB20型をベースにトヨタの直噴・ポート噴射併用技術である「D-4S」を組み合わせた、新開発のFA20型である。
エンジンのインマニ上面のカバーには「TOYOTA D-4S」と「BOXER SUBARU」が併記されている。
スバルにとって普通車では約10年ぶりのクーペであり、はじめてのFR量産車という異例の存在であった。
2020年7月に新車の受注を終了。86はそれ以降も受注を受け付けていた。
ただしスバルもトヨタもどちらも2019年の時のプレスリリースの発表で新型の開発をしていると発表しており、2020年11月に新型のアメリカ仕様が発表。2021年4月にトヨタと合同で開催したオンラインイベントで、新型86と共に日本仕様車が登場。2021年夏に発売されると発表された。
新しい設計思想が取り入れられ、排気量も2,4Lに強化されている。また、AT仕様車にはアイサイトが搭載され安全面の強化も図られる。
グレード
S
上級グレード。
6MTとパドルシフトつき6ATから選択可能。
シリーズ唯一となる「レザー&アルカンターラパッケージ」と、Rと共通の「エアロパッケージ」の2つのオプションを設定。
86の「GT」にほぼ相当するが、リヤブレーキディスクは15インチとなる。
R
標準グレード。
6MTと6ATから選択可能。
シリーズで唯一「17インチパフォーマンスパッケージ」「スポーツインテリアパッケージ」の2つのオプションに加え、Sと共通の「エアロパッケージ」を設定。
86の「G」にほぼ相当。
RA
競技仕様をベースとしたグレード。
6MTのみ。
エアコンはメーカーオプションとなる。
86の「RC」にほぼ相当するが、カラードバンパーやHID等が標準装備。
限定モデル
tS
2013年8月、「スバルテクニカインターナショナル」(STI)の手により独自の装備を施した「tS」が発売された。
ブレンボ製ベンチレーテッドディスクブレーキ、専用の18インチアルミホイール、アルカンターラと本革のコンビネーションシート等の専用装備が加えられている。
さらにレカロ社製コンビネーションバケットシートやドライカーボンリアスポイラー等の装備を加えた「GT PACKAGE」も設定された。
限定500台発売。
モータースポーツ
2012年からSUPER GT・GT300クラスにスバルテクニカインターナショナル(STI)とR&D SPORTのジョイント体制で参戦している。
エンジンはかつてWRCで鳴らしたEJ20(水平対向4気筒ターボ)に換装されている他、キャビン(居住空間)以外は鋼管パイプフレーム化、ミッションとデフもトランスアクスル化されているなど中身は市販車と比べるともはや別物と言えるレベルで手が加えられている。しかし外観は大きさも含めて市販車からかけ離れすぎない程度に落ち着いている。
参戦規格はプリウスやGRスープラと同じGTA-GT300(旧称JAF-GT)である。FIA-GT3に比べると独自開発が可能で毎戦アップデートを投入できるメリットがあるが、近年のFIA-GT3勢がチャンピオンを獲得しやすい性能調整下では一概に有利とは言い切れない。
コーナーリングスピードは高く、予選でかなりの速さを見せるが、決勝ではEJ20の設計の古さゆえに燃費で苦労することが多い。また他車より小型の4気筒エンジンに凄まじい過給圧(2019年の過給圧レシオは4.11。ざっくり言うと過給で排気量を4倍にしている。他車は高くて2.0程度である)を加えるため、信頼性でも難を示していた時期もあった。
それでも毎年必ず表彰台に上っており、比較的安定して高い順位を推移している。
参戦10周年となる2021年に悲願のタイトルを獲得した(後述)。
ラリーやダートトライアル、ジムカーナでも稀少な国産FRスポーツとして、86、ロードスターとともに人気である。
ワンメイクレースとしては、86/BRZレースが開催されている。
苦難の歴史
2015年、タイヤをそれまでのミシュランから、ダンロップにスイッチした。それはつまり、築き上げたセットアップが水泡に帰すことと同じだった。また、2014年からフル参戦していた井口卓人に加え、山内英輝が加入。結果平均年齢25歳の若手コンビになった。またこの年は鈴鹿1000kmで、3位表彰台を獲得したが、これがこの年の唯一の表彰台になった。しかし、ポールは無く、2018年の菅生まで、途絶えた。
2016年は、序盤は苦戦したものの、第4戦菅生における3位表彰台を契機に続く第5戦富士でも3位表彰台を獲得。そして、第6戦鈴鹿1000kmで、現体制になって以降待望の初勝利を獲得。ポイントリーダーとして臨んだ第7戦タイでクラッシュを喫し、オートポリスの代替も含まれるいわゆるもてぎ2連戦もノーポイントに終わり、シリーズ6位で終える。
2017年、トラクション向上を目的として、トランアクスル化。しかし、これが裏目に出て、表彰台はオートポリスの2位のみに終わり、リタイアか表彰台になってしまうという、浮き沈みが激しいシーズンになった。
2018年、性能調整で、エアリストリクターが撤去され、マシンもレスダウンフォース方向に。そのためか第2戦富士で予選2位を獲得。しかしそれは、参戦車両最少排気量のエンジンに更なる負荷を掛ける事になり、エンジントラブルも多発。富士では上位入賞は叶わなかったが、第3戦鈴鹿で3位表彰台、第6戦菅生でポール・トゥ・インを達成した。
2019年STIの社長が代わり、エンジン開発はそれまでのパワー志向から信頼性に振った結果、大幅に完走率が向上。第6戦菅生では山内英輝がコースレコードを更新するなど、速さを見せた。
2020年コロナ禍で開幕が大幅に遅れるも、開幕戦はトラブルで落としてしまったが、それ以外は2回ポールを獲得するなど、速さを見せるが、勝利は無く、シリーズ5位で終えた。この年はGRスープラが開幕戦でタイヤ無交換でデビューウィンを飾るなど、スープラが圧倒的な速さを見せた。
2021年は市販BRZのフルモデルチェンジに伴い、国内向けの販促も兼ね、新型にスイッチ。監督も元WRCのエンジン開発責任者に代わるなど、体制に変更があった。開幕戦はまさかのQ1敗退で、ノーポイントに終わるも、続く第2戦富士ではポールを獲得。2位表彰台を獲得。続く第4戦もてぎではセットアップを変えた結果、ノーポイントに終わり、第3戦鈴鹿でもポールを獲得するも10位フィニッシュに終わる。第5戦菅生ではポール・トゥ・インを達成。ニューマシンになってからこれが初勝利になった。続く第6戦オートポリスはウェイトを性能調整も含めると150kg積みながら一時はコースレコードを更新し、予選2位スタートで、3位表彰台を獲得し、チャンピオンを獲得に王手をかける。第7戦もてぎでも一時はコースレコードを更新するが、2位スタートで、5位フィニッシュに終わり最終戦富士でライバルと決着を付けることに。最終戦富士ではコースレコードを更新。そして3位表彰台でチャンピオン獲得を決めた。
また、マザーシャシーなどのJAF-GT車両は2016年のVivac 86 MC以来5年ぶりのタイトル獲得となった。
レガシィB4時代から考えると苦節12年、遂にチャンピオンを獲得した。また、井口卓人、山内英輝にとっても初のタイトル獲得となった。
結果ポール4回、優勝1回、表彰台2回という圧倒的な速さを見せた。
ちなみにQ2のアタックは全て山内英輝が担当した。
2022年は王座防衛が期待される。