概要
従来マツダは同一車種でも、国内向けはペットネーム、海外向けは数字と車名を使い分けていた。
本車も3代目までは国内は『アクセラ』、海外向けは『MAZDA3』となっていた。
これが2019年のフルモデルチェンジにあたり、国内も『MAZDA3』へと統一された。
そのため本記事で扱うMAZDA3は、アクセラでいう4代目以降に当たることに留意されたい。
1~3世代目のMAZDA3はアクセラの項目を参照のこと。
BP系(2019年~)
4ドア/5ドアの2種類を用意するという点では先代と同じだが、5ドアはハッチバックからファストバックへ変化した。
わざわざ日本で定着していた名称を捨てただけあって、幾つもの点が斬新で、エポックメイキングと呼んでも差し支えない仕上がりになっている。
パワートレイン
エンジンは4種類。1.5L/2.0Lのガソリン(SKYACTIV-G)と、1.8Lのディーゼル(SKYACTIV-D)に、新たにスパークプラグを用いずガソリンを自然発火させる『SKYACTIV-X』が採用された。これは世界初の試みで、以前から電動技術より内燃機関技術にこだわっていたマツダの面目躍如と言える快挙であった。
しかしエンジン単体では普段遣いに支障が出てしまうため、スーパーチャージャーとマイルドハイブリッドを組み合わせなければならなかった。そのため価格は数十万円も値上がりしたにも関わらず、ドライブフィーリングも燃費もSKYACTIV-Gとあまり違いを感じない、という点で不満の声もある。
とはいえプリウスやインサイトも初代の出来は今ひとつだった過去があるし、誕生直後の技術としては及第点だろう。今後の発展に期待したいところだ。
トランスミッションはマツダらしく6速ATとMTの両方がこの世代でもバッチリ用意されている。
足回り
リアサスペンションは先代のマルチリンク式という複雑な独立懸架を捨てて、比較的簡潔なトーションビーム式となった。
横剛性に優れるため複雑な物理計算を必要とせずに、目標とする走りの質感を達成できるというのがその理由であったが、これは一部の車好きから不興を買っており、「マツダは走りを捨てた」という声もある。
特にMAZDA3の足回りの出来を糾弾するにあたって、上のスラローム実験の動画がよく挙がっている。ただでさえ車重が先代より100kgほど重くなっていることも影響してか、大きくロールしている。
ただし歴代のホットハッチの名車たちにもトーションビーム式は用いられているため、トーションビーム式=悪というわけではないことは留意されたい。
実際にMAZDA3の公道での乗り心地が明確にダメとするレビューはほとんど見つからない。
峠やサーキットで激しく使うのは難しくなったかもしれないが、この車両の性格を考えればデメリットにはならないだろう。
内外装デザイン
内外装デザインは発売直後から現在まで評価は高く、内装の質感の高さについては「レクサスを超えた」とまで言われている。液晶画面の見やすさや静粛性もすこぶる良好である。
おそらくトーションビーム式サスペンションによるコスト抑制が、この豪華内装を実現するのに大いに役立っていると思われる。
世界でもデザインを高く評価され、MAZDA3は2020年のワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞した。この賞を獲得したメーカーはマツダのみで、しかも2016年ロードスターに次いで2例目となる快挙だった。
「アクセラ」の時代はマツダスピードアクセラや2.2XDのような過激なモデルでスポーティーさをアピールしていたが、MAZDA3は一転して豪華なラグジュアリーカーへと変貌を遂げたといえる。
幻のレーシングカー計画
サーキットには向かない、と評した舌の根も乾かぬうちに恐縮だが、実はモータースポーツに用いる計画があった。
北米マツダが世界のツーリングカーレースで用いられている、カスタマー向けレーシングカー『TCR』規定に合わせたレース仕様を開発していた。
しかし開発途中でサスペンションなどに「深刻な開発課題」が発生して投入が遅れたり、2.0L直列4気筒ターボで350馬力を絞り出すエンジンは、残念ながらマツダ製ではなくフォルクスワーゲン製など、懸念材料もいくつかあった。
結局コロナ禍のパンデミックによる景気悪化に伴い、TCR計画はキャンセルされたと公式にアナウンスされている。