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スーパーチャージャー

すーぱーちゃーじゃー

レシプロエンジン、及びロータリーエンジンで用いられる過給器のこと。一般的には機械式過給器のみを指す。
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概要編集

スーパーチャージャーとはレシプロエンジン、及びロータリーエンジンで用いられる過給機のこと。通常、ピストン(ローター)の運動によって「吸い込む」空気を、能動的に「押し込む」。


このうち排気ガスの潜熱をタービンで回収して運動エネルギーとし、コンプレッサーを駆動するものをターボチャージャー(排出ガス式過給器)と呼ばれる。一般的に言うスーパーチャージャーはエンジンの動力を用いるもの(機械式過給器)である。


基本的な構成と特徴編集

ここで言うスーパーチャージャー(以下SC)は、エンジンの出力軸(クランクシャフト)からベルトなどを介して取り出した動力によって圧縮機(コンプレッサー)を駆動し、吸入気を圧縮してエンジンに供給する機械式過給機である。エンジンからの排気を利用する排出ガス式過給機、すなわちターボチャージャーと比較すると、「スロットル(アクセル)開度に対する反応が優れる」という特性がある。


ターボチャージャーとの比較編集

正しくターボチャージャーと、クランクシャフト駆動のスーパーチャージャーとを比べた場合、この様になる。


  • ターボチャージャー
    • メリット:NA(過給なし)やターボ以外の過給器を装着したエンジンでは、損失として捨てている熱で動作するため、熱効率の向上につながる
    • デメリット:タービンが少なからず排気抵抗となるため、特に過給がかかっていない状態ではトルク損失が発生する

 また、ガスタービンに近い構造のためエンジン回転との連動が悪くエンジンの応答性がNAやターボ以外の過給機付きのエンジンに劣る(いわゆるターボラグの問題)


  • (ターボを除く)スーパーチャージャー
    • メリット:排気系の抵抗増大がないため、トルク損失を出さずに出力を向上できる
    • デメリット:(コンベンショナルなレシプロエンジンの場合)熱効率の向上にはほとんど寄与しない

 それどころか、回転が低い領域などスーパーチャージャー駆動に要する機械損失が過給による出力増を上回り実出力ではかえってマイナスとなる場合もあるたクラッチを設けて効率の下がる領域では作動を休止させる必要がある。





重量と体積の大きさでターボチャージャーに対し不利だが、架装性については一長一短となる。自動車用程度の過給圧だと、ターボは高温の排気を浴びる関係でかなり加熱し、またこの高温がオイル交換サイクルの短縮につながる。また、タービンを滑らかに回すためには、各シリンダーからの排気圧力が一定である必要があり、通常はシリンダーの排気ポートからターボハウジングまでの長さが同じとなる等長マニホールド(通称タコ足)を必要とする。また、これらは高温に晒されるためその断熱対策も必要になる。さらにターボ自体が排気の抵抗になるため、それを可能な限り減らす為に、マルチバルブ化が望ましくなる。

これに対し、自動車用スーパーチャージャーは、基本的にはファンベルトのラインから回転を貰っているため、この近くに配置しなければならない制約があるが、逆に言うと途中に遊輪をかますなり、すでに一緒に回っているエアコンプーリーやウォーターポンププーリーのラインから取るなど、割と柔軟な対応も可能ではある。スーパーチャージャーも潤滑油を必要とするが、自動車用程度の過給圧だとエンジンの循環潤滑系からオイルを圧送して入れ替えるほどの必要はなく、そのほとんどはエンジンオイルとは別にスーパーチャージャーのハウジングに封入されていて、定期的に交換する。


そして、よく言われる「低回転はスーパーチャージャーが適していて、高回転はターボチャージャーの方が高効率になる」


これ、全くの逆


考えれば解るのだが、スーパーチャージャーはエンジンと一緒に回転数が上がっていくので、コンプレッサーの吐出量は高回転ほど多くなる

ではターボの方はどうなのかと言うと、ここで多くの人が勘違いしているのだが、ターボチャージャーのタービンが回収するのは運動エネルギー(排気の圧力)ではなく熱エネルギーである(エンジン本体で運動エネルギーに変換されきれなかった熱、そのままだと損失となる。ターボが高効率と言われるのは昔のレシプロエンジンの熱効率が30%前後で、損失として捨てていた熱で過給を行う為)。なので、シリンダー内がリッチ(燃料を増量)になって排気ガスが高温になると、エンジンが低回転のうちからターボは過給を始める。

ただ、スーパーチャージャーが電磁クラッチやバイパスバルブでアクセル操作に応じて過給のオン・オフができたのに対し、ターボはどうしてもアクセル開放から有効な過給圧がかかるまで時間を要すること(ターボラグ)から、現状の日本ではこの様に誤認されてしまった。

実際には、ターボ車にブースト計をつけて観測しながら走行すれば解るが、ターボの過給圧はアクセルを大きく開いて回転数を上げている最中に最大限かかり、高回転でアクセルを緩めると小さくなる。

スーパーチャージャーが高回転やアクセルオフ時に過給を切るのは、過給による向上値が過給器を回すことでのトルク損失を常に大きく上回っている為、逆にアクセルオフにしても、むしろ暫くの間回転数が上がり続けてしまい、特に回転数の変動が大きい自動車用としては実用性に難がある上エンジン自体を過回転で壊してしまう危険性がある為。


なので大間違いなのが、かつてのスバルの至宝・EN07と、ロータリーエンジンと、各々の過給器の関係。

EN07は、同時期の他社3気筒エンジンに比してロングストロークの軽自動車用としては高トルクエンジンである。したがって、EN07のスーパーチャージャー車はスーパーチャージャーが高回転側を補っていたのである。これにより、レックス・VXは当時のアルトワークスミラ・TR-XXといった他社DOHCターボエンジン車に、SOHCのまま肩を並べた。ヴィヴィオでのDOHC化は、純粋な高性能化よりも、バブル経済絶頂期、「DOHCである」という宣伝効果が必要だったため

この後、スバルの2匹目のドジョウを狙って他車が軽4気筒エンジンを設定するが、3気筒エンジンと同じ程度のボア・ストローク比としてしまったため、いずれもフリクションロス増大からのトルク不足に泣く(EN07の大成功は、2気筒550ccのEK23で始まった3代目レックスをフルモデルチェンジしないでそのボンネットに収める、という制約がかえって功を奏した)が、それを補う手段として使われたのは低回転に強いターボである。


一方、ロータリーエンジンは、往復型のレシプロと速度型のガスタービンの中間に位置する特性のため、レシプロエンジンと比べた場合のウィークポイントはガスタービンと似ている。なので、ガスタービンの後方燃焼器の様にラグがなく即座に過給圧がかかるスーパーチャージャーの方が、所詮ストリートランナー程度の実用域改善が強く感じられる。

だが、ロータリーエンジンは排気の脈動がレシプロエンジンと比べると少ないため、実際にはターボとの相性の方がより良いこの人レベルの人がサーキットで限界を追求するには、ターボの方がいいのである。


ディーゼルエンジンガソリンエンジンに比べSCとの相性が悪く、ターボとの相性が良い」

これも誤り

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに対して、圧倒的に高い熱効率が長所である。…………そう、ターボを動かすのは「排気ガスに残存している熱エネルギー」なので、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを比べた場合、ターボと相性がいいのは熱効率の悪いガソリンエンジンということになる。

ではなぜ日本でこの誤解が蔓延したのかと言うと、官公庁やその周辺(というかだいたいこいつせい)で、高圧の燃料噴射装置を必要とする直接噴射方式をその信頼性から嫌う向きがあった。また、小型トラックやクロスカントリー車など、平成初期のRVブームの頃までの1,000~5,000cc級ディーゼルエンジンは、その頃までこれらの商品は常に大量に売れる商品ではなかった事から、商品コストの低減の為にエンジンの設計が古典的なものでとどまっている事が多く、その増加によるディーゼル公害の深刻化が顕在化し、EGR効率改善のために燃料噴射系を見直した、トヨタ1KZ-TE、三菱4M40が投入されるまで、1970年代、一部は1950~1960年代の設計を、1990年代に引きずっていた。

この為、国鉄気動車群の排気管異常過熱などに代表されるように、1980年から2000年頃までの日本の高速ディーゼルエンジンは総じてその長所を全て放棄するに等しいレベルで熱効率が悪く、そのせいでターボの効率が良いように感じられたのである。

この「ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの捻れ」が長年顕在化しなかったのは、「政策として軽油に税優遇を与えて流通価格を抑えていたこと」と、「このようなディーゼルエンジンが搭載されているクラスの自動車はガソリンエンジンも古臭い設計のものがほとんどでやはり熱効率が悪い物が多かった」こと。

多少新しいとは言え、それでも1980年代初期登場のガソリンエンジンにターボを装備した、日産CA18ETを搭載した2代目バネット・ラルゴ コーチ(クルージング系)が、平成初期のRVブームの頃、セダンやスポーツカーばりの高回転型エンジンを搭載したバネット・セレナの発売までRV最速と呼ばれたのもさもありなんである。


日本では、1970年代後半から1990年代にかけて、猫も杓子もターボターボと、一部のスーパーチャージャー車を除くと軽からスーパーカーまでターボグレードが設定されていた為、日本の自動車メーカーは総じてターボの取り扱いノウハウが蓄積されており、また、ターボチャージャーのメーカーであるIHIなどの開発・製造能力がチートレベルで高くなった結果ターボのスーパーチャージャーに対する弱みがほとんど潰されてしまい日本ではごく少数の稀な例となっている。

しかし、世界的には、欧州車やアメリカ車など、スーパーチャージャーの採用例は決して少数派ではない。




機械式過給器の方式編集

遠心式編集

遠心式圧縮機を利用、主に航空機用のレシプロエンジンに使用された方式で、自動車用としても使用されることがある。


航空機は、気圧が低く酸素が少ない高空を飛行するため、過給機を必須としていた。高度によって過給機の回転速度を切り替えることができるものもあり、一段二速と呼ばれる。また、高々度での性能を高めるために複数の過給機を持つものもあり、一段目の過給機で圧縮された空気をさらに二段目で圧縮する方式は二段過給と呼ぶ。一段目と二段目の間で圧縮され、高温高圧になった空気を中間冷却器(インタークーラー)で冷却するエンジン(例・英国ロールス・ロイス マーリン)や、SCとターボチャージャーを組み合わせたツインチャージャーエンジンも存在した。


現在の自動車用アフターマーケット向け商品は、日本のHKS、オーストリアのBRP-ROTAX、アメリカのPro-Chargerあたりが著名。


ルーツ式編集

元々は産業用の送風機として開発された方式で、「ルーツブロア」とも呼ばれる。1860年にルーツ兄弟が溶鉱炉の送風機として特許を取得した。その後1900年になり、ゴットリープ・ダイムラーが特許を取ったエンジンの過給機として使われた。

ふたつのローターがかみ合い送風する。旧来のものは断面が繭型の二葉式であり、加工が簡単な利点から多用された。現在は主にねじれた三葉式のものが用いられる。二葉式と三葉式では吸気、吐出部位が異なる。四葉のものを開発したイートン・コーポレーションのような例もあった。内部圧縮はなく、高圧過給には向いていない。かつては二段過給式もあり、レース用エンジンに使用された。


ルーツ式がSCによく使われるのは、過給機に取られるロスを少なく抑えやすいためで、ファンを用いた方式とは異なり空気の吸入側と吐出側が常に完全に仕切られる構造のため、停止状態でも吐出側の高圧空気が吸入側に漏れない利点がある。この構造では回転数と吐出容積が全回転域でほぼ比例し、エンジンの必要吸気量に一致させることが容易で、無駄が生じない。 この点、排気流はどのみち捨てるエネルギーであり、無駄に回しても問題にならない、とするターボチャージャーとは発想が異なる。逆にターボチャージャーは、排気ガスが十分出るまで過給機が動作しないため、タービンインペラ、コンプレッサインペラと呼ばれるタービンを回す構造にして、停止している状態でも空気が自由に流れるようにしてある。


ツインチャージャー編集

ルーツ式SCとターボチャージャーを組み合せた方式。低回転域ではSCが、高回転域ではターボチャージャーが過給を担当する。

採用例は少ないが、ランチア・デルタS4と日産・マーチRでは、ラリーでのレスポンスを重視して開発され、フォルクスワーゲン・ゴルフGT TSIおよびフォルクスワーゲン・ジェッタTSIコンフォートラインでは、燃費性能とハイパフォーマンスの両立を目指して採用された。


リショルム式編集

ルーツ式と同じ様にふたつのローターを持つが、ルーツ式とは異なり内部圧縮があり、高圧過給でも効率が落ちない。産業用にも広く用いられる方式。鉄道車両の空気圧縮機や冷凍機でも冷媒を圧縮するために使用される。レシプロ式と比較して振動が少なく、効率が高い。潜水艦など、一部の静粛性を求められる艦船でも使用される。


スクロール式編集

メカニズム的には家庭用エアコンの室外機に使用されているものとほぼ同等である。ドイツの自動車メーカー・フォルクスワーゲンが「Gラーダ」の商標で、ポロ G40、コラード G60、パサート G60に装備していた。


プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー(PWS)編集

上記いずれものSCとは原理が全く異なるもの。「圧力の異なる層同士が接した際、高圧側に均質化される」という原理を利用したもので、クランク軸の回転力で駆動されるレンコン状のローターに高圧の排気ガスを送り込み、その圧力波で吸気側を加圧するというもの。圧力差が大きいほうが効率が高いため、ガソリンエンジンよりもディーゼルエンジン向きとされる。


ターボチャージャーのようなスロットルラグが発生しない、ローターは回転するのみで機械的な圧縮を行っていないため出力の損失が少ないというメリットはあるが、始動時に吸気と排気を混ぜないための締め切りバルブのメンテナンスを怠ると煤やスラッジが堆積して動作不良を起こす、過給効率はどうしてもターボチャージャーに劣るなどのデメリットが存在し、一般化することなく廃れていった。

日本ではマツダがカペラ及び後継車種クロノスのディーゼルエンジン搭載車に採用し、ガソリン車に匹敵する動力性能を発揮したが、上記締め切りバルブのメンテナンスを怠ったことに起因するトラブルが多発し、その後は一般的なターボチャージャーに変更された。


フィクションの世界では、次原隆二週刊少年ジャンプで連載していた『特別交通機動隊 スーパーパトロール』にてポルシェ959個人タクシーを検挙するために主人公が駆るパトカー仕様のRX-7FC3S・前期型)の13BエンジンにPWSを装着するエピソードが描かれている。


電動式スーパーチャージャー編集

電気モーターによってコンプレッサーを回す過給機。SC、ターボチャージャーのいずれとも異なる第三の方式の過給機であり、電動ターボともいう。


ターボ、SCとも少なからずエンジンの抵抗を生み出すが、電気式では通常回しているオルタネーターから駆動力を得るため、オルタネーターの負荷増大により若干のエンジン抵抗とはなるものの、排気抵抗やトルク損失がほとんどなくて済む。余った排気ガスのエネルギーをモーターで回生することも可能である。


関連タグ編集

ターボチャージャー

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