アスタロト
あすたろと
概要
四十の軍団を従える地獄の大公爵とされる強大な悪魔(悪魔の偽王国)。「ゴエティア」においては72柱の悪魔の中で序列29番に位置し、過去と未来を知りあらゆる学問に精通するとされ、召喚した者に秘められた知識を教授する存在だという。
その容姿は上述の「悪魔の偽王国」「ゴエティア」において、竜にまたがる右手に毒蛇を持った天使とされ、口から毒の息や悪臭を撒き散らすという。
アスタロトの名はグリモワールにおいてルシファー、ベルゼブブと並び称される存在(大奥義書、真正奥義書)、アスタロトの印章(アルマデル奥義書)、水曜日に召喚すべき悪魔(教皇ホノリウスの奥義書)など度々言及されている。また、セバスチャン・ミカエリスの「驚嘆すべき憑依の物語」では修道女に憑いた悪魔が“悪魔の階級”を語っており、その中の上位三隊座天使の中にアスタロトの名が出ている。
アスタロトの起源
悪魔アスタロトの源流は旧約聖書「士師記」「列王記」などに登場する女神アシュトレトとされる。
「士師記」の冒頭で、カナンに侵攻したイスラエルの民は時がたつごとに本来信仰すべきはずだったヤハウェを忘れ、現地のバアルやアシュトレト信仰に傾くようになりヤハウェの怒りを買い、民に災難をもたらす。
「列王記」では老いたソロモン王が外国出身の妻に誘われて異教の神アシュトレト、ミルコム、ケモシを信仰し、ヤハウェを怒らせて最終的に王国分裂に繋がる
アシュトレトはオリエント全域で崇拝された女神アスタルテであり、さらに遡ればメソポタミア神話のイシュタルにいきつくという。
イシュタルはウルクの豊穣神イナンナの信仰を核として、王権授与、王権を守る戦神と変遷し、ウルクが没落した後は“諸国の神”という都市国家の枠にはまらない破格の地位についている。特に豊穣、戦神の神性は様々な王の信仰を獲得し、イシュタルは各都市国家の女神を吸収してオリエント世界における女神の普遍的名称として使われるようになった。
アスタルテはウガリット・カナンに起源をもつ女神だが、エジプトなどの外国に信仰が伝わるにつれ戦争の女神、王権の守護者というイシュタルに似通った神性を獲得し、シュメール・アッカドにおいて両者は習合、大いなる地母神としてギリシア・ローマにまでその勢力を拡大させている。
女神転生のアスタロト
初出作品はFC「女神転生」で、種族は“邪神”。表記は「女神転生2」と共にアスタロートである。
デザインは「女神転生2」の頃から竜にまたがる剣または槍を持つ天使の姿で、“魔王”の肩書き、ボス悪魔としての扱いも同作からである。
女神転生作品のアスタロトの特徴として、「イシュタルへの復権」という要素が挙げられる。「真・女神転生」の撃破時の台詞において始まったこの要素は、続編「真・女神転生Ⅱ」においてビナーにアスタロトを連れて行きイシュタルとアシュターを分けるイベントに繋がり、「偽典・女神転生」で聖王バールとイシュタルの物語に結びついている。
近作ではその設定も鳴りをひそめ、「デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王」で魔界の先手、閣下の直属悪魔のような扱いになっている。