概説
現代フランスの国土は、かつてガリア(「ケルト人の土地」)と呼ばれた地域に該当している。ヨーロッパ大陸西部に位置するこの地域は、全体的に海洋性の穏やかな気候と豊かな土地に恵まれてきた。現代においては最も中央集権的な国家の一つにも数えられるが、古くは無数の自治領が存在してきた。
近代には多数の海外植民地を制圧したが、その大部分は既に独立した。現在も植民地である地域で記事があるものは、本記事後半に取り上げよう。
西部
ブルターニュ
15世紀にいたるまで半独立の「公国」であった半島地域。岩がちで早い潮流が洗う海岸と、フランス全土の中では辺境であったその位置から、荒涼とした田舎と見なされがちである。
またその名は「ブレトン人の土地」という意味でもあり、海峡を挟んだグレートブリテン島(フランス語で「グラン・ブルターニュ」)とは古くから交流があった。固有言語のブレトン語はケルト語系の言葉である。
主要都市に海港都市ブレスト、西部最大の港町ナントがある。また、有名なモン・サン・ミシェルはこの地方の北海岸にある。
アンジュー
ロアール川の中流域に広がる肥沃な地域。古城が多いことでも知られている。後にイギリス王家となったプランタジネット家はこの地方の公爵だった。
主要都市にアンジェ。厳密にはアンジューではないが、北に隣接するメーヌ地方にル・マンの町がある。
北部
ピカルディ
ベルギーとの国境にほど近い地域。重工業が早くから栄えた。
主要都市はリール。
ノルマンディー
セーヌ川の下流、英仏海峡に面した地域。近代以降は,沿岸部はリゾート地としても知られる。古くは西フランク王国の時代にノルマン人がこの地方の領有を王に認めさせたことからこの名がつき、後にこの公国のウィリアム(ギヨーム)がイングランドを征服した。第二次世界大戦ではノルマンディー上陸作戦の舞台となる。
主要都市は港湾都市ル・アーブル、ジャンヌ・ダルク終焉の地ルーアンなど。
イル・ド・フランス
セーヌ川の中流、首都パリを中心とする地域。王政時代の王領直轄地の核であり、現在でもパリを中心とする政治の中心地である。
主要都市は首都パリ。
オルレアネ
現在では「サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏」と呼ばれる、オルレアンの町を中心にした地域。ロアール川流域・ローヌ川流域へと抜ける古くからの交通の要衝であり、パリとの間に広がるボース地方などとともに穀倉としても知られてきた。
南部
プロヴァンス
アルプス山脈が地中海へと落ち込むあたり、ローヌ川との境にあたる地域。フランスにとっては最も重要な地中海の出口にあたり、古くは侯国も存在した。名前はローマ時代の「属州」に由来すると言われるとおり、早くからローマの属州化、さらに遡ればギリシャ人の植民が行われた地域である。
主要都市にマルセイユ、アルル、エクスなど。映画祭で有名なカンヌや、高級リゾート地として有名なコートダジュールもこの地方にある。
コルシカ
プロヴァンスの南、地中海上に浮かぶ山がちな島。ナポレオンの出身地としても知られている。対岸のイタリア・ジェノヴァとの繋がりが深い。
主要都市はアジャクシオ。
アキテーヌ
ガロンヌ川が貫く、ピレネー山脈のふもとの地域。ワインの生産が盛んで、百年戦争のころまではイングランド王のフランスにおける最重要拠点の一つであった。リチャード1世もおもにこの地域で育っている。
オーヴェルニュ
北部と南部の境界に位置する山がちな地域。カエサルの征服の際に抵抗したウェルチンジェトリクスの本拠地でもあった。中世には世界史でおなじみの十字軍のきっかけ、クレルモン公会議がこの地方で開催されている。
主要都市にクレルモンフェラン。
東部
アルザス
ライン川の西岸に広がる肥沃な地域。ライン川を挟んだドイツとの繋がりが強く、近代にいたるまでフランス・ドイツが領有を争った。現代では欧州統合の一中心地として知られている。
主要都市はストラスブール(シュトラースブルク),コルマールなど。
シャンパーニュ
シャンパンの由来として知られる地域。丘と谷が繰り返す土地。中世には大市の開催地が集中し、欧州の遠隔地商業の発展を担った。
ブルゴーニュ
ワインで有名な地域で、「ブルグント」ともいう。百年戦争の時代から中世後期にかけて有力なブルゴーニュ公国が栄え、さらに神聖ローマ帝国との前線にもあたっていた。
リヨネー
現代では「ローヌ・アルプ」とも呼ばれる一帯。ローマ時代以来の商都リヨンの周辺に広がり、ローヌ川沿いに南北をつなぐ交通路、サヴォアを通りイタリアに抜ける交通路の交差点にあたり栄えた土地柄である。
主要都市はリヨン。