概要
KV-1の車体に、152mm榴弾砲を装備した非常に背の高い砲塔を搭載した重戦車である。
この戦車は1939年に、フィンランドとの間で勃発した冬戦争にて、彼らが立てこもる堅牢な防御陣地(マンネンヘルム線)を突破するためだけに開発された。そのため、対戦車戦闘どころか通常の戦車のような歩兵支援や機動戦を殆ど想定していない。汎用性の低く、一種の特殊兵器ともいえるKV-2は生産数は約210両と少なく、冬戦争の後に起きたナチスドイツとの戦争(独ソ戦)の初期段階にて、その生産は打ち切られている。
実は急遽開発が始まったがゆえに、砲塔内は窮屈で砲弾の装填が困難であり、砲塔も無駄に大きなモノになってしまったというなどの多数の問題を抱える。
エピソード
本車両を有名にさせたのは独ソ戦であろう。ドイツ軍には『ギガント』もしくは『街道上の怪物』と呼ばれ、恐れられた。
特に後者の異名は1941年6月24日のリトアニアはラセイニャイ市近郊の街道の分岐点に意図的にか、それとも迷っての事か一両のKV-2が居座った事から始まった。
それはドイツ第6装甲師団の本部と前衛を結ぶ補給線であり、前線橋頭堡に向かうトラック12両はたちまち全滅し、事態を重く見た師団は貴重な5cmPaK38を装備する対戦車中隊を派遣するもその命中弾は悉く跳ね返され、逆に恐らく中隊の5cmPaK38の全てと思われる2門を反撃で失った。
午後になって対戦車戦の切り札ともいうべき8.8cmFlaK18高射砲を投入するも設置中に砲撃を受け、これも返り討ちとなった。
たった一両の戦車に一日中補給路を寸断されている師団は夜になって工兵隊を夜陰に紛れてKV2に接近させ、爆薬を装着させての爆破を試みたが、途中で気付かれ、履帯を破壊しただけに戦果は留まった。
25日、夜が明けるやドイツ側は今度は戦車隊を投入した。ただしこれは囮で、相手がそれに注意を引き付けられている間に本命の8.8cmFlaK18高射砲を安全に射撃させるというもので、作戦は図にあたり、KV-2は水平射撃による10発以上の8.8cmFlaK18高射砲の命中弾を受け沈黙したと思われた。
だが撃破した確認の為に近づいたドイツ兵達を驚かせたのは、命中した6発中(12発という説もあり)貫通したのは僅か2発のみ、そして撃破したと思われたKV-2の砲塔が乗員が意識を取り戻したのか旋回を始めた事だった。咄嗟に工兵が貫通した破孔に手榴弾を押し込み、その爆発で漸くKV-2は今度こそ本当に沈黙した。
このたった一両でドイツ軍を大混乱に陥らせたKV2のエピソードが『街道上の怪物』としてこの戦車を知らしめている。(日本でこのエピソードを紹介したサンケイ出版「ドイツ機甲師団」などでは誤ってKV-1とされ、その為か小林源文氏の劇画『街道上の怪物』でもKV-1となっている)
ただし、152mm榴弾砲を備えた砲塔は輪にかけて重く、通常でも難があったKV-1の機動力がさらに低下しており(7tほど重量増加)、一番の敵は『地盤の弱い場所』であった。
ましてや、車体が斜めになっていると砲塔の旋回すらおぼつかない有様だった。
とはいえ、装甲が非常に厚く(最大100mm以上)、その防御力はまさに要塞であった。
前述のように88mm高射砲すら弾き返し、ましてや当時の主力戦車などの主砲(37mm砲や50mm砲)では全く歯が立たなかった。
そのため、37mm対戦車砲などは『ドアノッカー』とまで呼ばれる始末であった。
(砲弾がまるでドアをノックするように装甲表面を叩くだけだったので)
このように敵からはその卓越した防御力で恐れられたが、本来は特殊兵器でああるにも関わらず、通常の戦車と混成で運用されたため、真価を発揮することはなく、独ソ戦開始後ほどなくして生産は打ち切られ、ソ連の戦車としては少数の生産数で終わった。
その後、同じく152mm榴弾砲を装備したSU-152やISU-152が開発されたが、こちらは回転砲塔を持たない自走砲である。
登場作品
ガールズ&パンツァー:プラウダ高校が使用。カチューシャは頼れる同志としていたが、再装填の合間をあんこう&カバさんチームに攻撃されて呆気なく走行不能に陥った。
ガールズ&パンツァー劇場版:同じくプラウダ高校より登場。TVシリーズよりも大幅に見せ場は増えており、152mm砲の強烈な威力を見せ付けたり、斜面で砲塔を旋回させて転倒したり、大学選抜チームの前に盾となって立ちふさがり、『街道上の怪物をなめるな!』との名台詞も登場した。最終的にはノンナと共に数台のM26を道連れにして撃破される。