概要
ウィザーディング・ワールドにおける非魔法族、ホモ・サピエンスのマジカルじゃないほう。
いわゆる「普通の人間」のこと。
魔法族は彼らの存在を認識しているが、マグルはたいてい魔法族の存在を認識していない。
また魔法族は(気を使いさえすれば)マグルの技術や道具を使用できるが、マグルは魔法族の技術や魔法を使用できない。
尚「マグル」という呼び名はイギリス魔法界における呼称であり、世界中に存在する各々の国の魔法界によって呼び方は異なる。
【現在判明している呼称】
・イギリス魔法界:マグル
・アメリカ魔法界:ノー・マジ
・フランス魔法界:ノン・マジーク
魔法族にとってのマグル
魔法族とマグルは同じアフリカの地に生まれた人間であり、古来近しい存在だった。
婚姻や交流も当然行われ、マグルの王に取り入って「楽しい生活」を送る賢しい魔法族すらも存在していた。
遅くとも10世紀には魔法族、ひいては純血の優越性を主張する魔法使いが存在していたが、世間の大半はそのような意見をまったく相手にせず、異常で誤ったものだと見なした。
マグルの血をひくマグボブ(Magbob,おそらく魔法の遺伝子/Magicがどこからともなく浮上/bobbed upしてきたことに由来する呼び名)たちはとりわけ優秀な魔法使いであるとして魔法社会に歓迎され、愛されていた。
しかし17世紀に入るとマグルに対する魔法族の態度は大きく変化する。国際機密保持法の施行が決定されたのだ。
これは中世、14世紀頃より魔女狩りが始まったことに起因する。緩やかに着実に欧州で火を吹き上げた私刑の欲求は不幸なマグルを害することがほとんどだったが、やはり魔法族の被害が完全に無いわけではなかった。
マグルの中に生まれた魔法族や、小さな子供、タイミングと運と頭が悪すぎた人が主な魔女狩りの「魔法族側の」被害者だった。
魔女狩り以後魔法族はマグルの目を避け、自らの存在を隠しながら生活するようになる。マグルとの全面抗戦を望む過激派とは対照的に、イギリスのラルストン・ポッターをはじめとする穏健派は魔法の存在を秘匿することで平和を維持しようと提案した。
そしてポッターらによるイギリスウィゼンガモットでの激論の3年後、1692年、みだりにマグルの前で魔法を使うことの禁止を含む国際機密保持法の制定施行が全ての魔法省の参加の下で始まり、ゴドリックの谷やオッタリー・セント・キャッチポールなど各地でコミュニティの分離、「(マグルの)コミュニティ内部に(魔法族の)コミュニティを隠匿する」対応がなされた。文化的な断絶はこれに端を発している。
ただし、マグルとの結婚をはじめ、限定的で私的なマグルとの交際は認められ、家族やそれに準ずるマグルなどに魔法を見せても問題はないというのが一般的な考えである。要は既存のマグル社会にあらぬ混乱を引き起こさないための措置であってあまり厳格すぎる必要はないということだろう。
(スカウラーによるセイラム魔女裁判や魔法界暴露未遂があったアメリカでは、例外的にラパポート法が敷かれ婚姻も交遊も禁止されていた)
マグルやマグル生まれへの差別が忌まれるという一般常識は昔と変わらず当たり前に存在する。
しかし以前は大して力を持たなかった純血主義も保護法以降は一部でじわじわと広がり、純血主義者と呼ばれる魔法族たちはマグルへの偏見・排他的な態度を見せるようになった。
彼らにとってマグルとの交わりは忌避すべきことであり、自らの優位性や伝統を損ねる行為である。
そしてMagbob改めMugggle-bornは、純血主義において穢れた存在Mudblood(穢れた血)とされ、愚かな純血主義者によってマグル同様心ない差別を受けるようになった。1960-90年代にイギリスで猛威を振るった死喰い人はまさにこのような差別意識を根幹に持った集団であった。
一方でマグルにかなり好意的な魔法族もまだ存在していた。ウィーズリー家はその筆頭であり、ロンの父話電や気電が大好きなアーサー・ウィーズリーらのおかげで、原作の数年前からマグル保護法が制定された。(が、これは裏を返せばそれまでマグルを積極的に保護するような法整備が行われていなかったということである)
そしてマグルに衣服や自動車などはその実用性ゆえにマグル嫌いでさえ完全に避けることはできなかった。
ロックンロールやタブロイド文化もまた自然と魔法族が取り入れてしまったマグル文化である。
ただこのような差別の定番として無自覚で非積極的(非攻撃的)なパターンが一番メジャーであるという厄介な問題は魔法界の場合も同じらしく、例えばホラス・スラグホーンやコーネリウス・ファッジなどがあげられる。
ちなみに、マグル生まれ出身の魔法大臣は1707年の魔法省設立の255年後にやっと生まれた。
グリンデルバルドの思想
闇の魔法使い、ゲラート・グリンデルバルドは「魔法族はマグルから隠れる必要などない」という先鋭的な思想を掲げた。
マグルによる壮絶な世界大戦(WW1)があったという当時の時勢もあり、この思想は欧州でかなり支持を得た。だがグリンデルバルドがダンブルドアに破れて収まる。
ダンブルドアによれば、グリンデルバルドは死の秘宝を手に入れ、最強の魔力と死人の軍団を武器にしてマグル世界を征服しようとしていたらしい。このようなイデオロギーをリバイバルさせ、英国の純血旧家やスリザリン卒を巻き込んだのがヴォルデモートである。
ただしヴォルデモートはグリンデルバルドのような政治的理念というよりは、自己の魔力や血統を拗らせた結果マグルへの暴力に向かったという、反社会性パーソナリティ障害からの支配欲求である。あくまで本人の最終目標は理想社会の構築ではなく己の誇示と不死性にあった。