CV:柿原徹也
概要
本作の主人公《南雲ハジメ》のクラスメイトで、白崎香織・八重樫雫・坂上龍太郎の幼馴染。17歳。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人。地球では雫の祖父が師範代を務める八重樫道場に在籍しており、剣道の腕前は全国クラス。そして天職は勇者と、まさに非の打ち所の無い人物に見えるが、実は内面にかなりの問題を抱えていた…。
家族は同じく容姿端麗な経営コンサルタント業の父・聖治、元ヤンで八重樫流の師範クラスと互角レベルに腕っぷしが超強い人気モデル雑誌の編集長である母・美耶と、雫を心酔する女子達『ソウルシスターズ』を束ねる妹・美月がおり、光輝の家族は後日談『ありふれたアフターストーリー』にて登場する。
人物
※以下、WEB・書籍版のネタバレを含むため、注意。
正義感と善意の塊の様な性格で、持ち前のルックスとカリスマ性も相まって、学校の生徒達から強い信頼と高い人気を持つ。
傍らに香織や雫がいる事から少ないが、月に二回以上告白されるほど女子からモテている。
一方で、その完璧超人ぶりのせいで雫曰く「自分の正しさを疑う事を知らない」ために、自分の考えが常に正しいと信じて疑わず、悪く言えば自分と違う他人の価値観を受け入れられない、自分の非を認められない等の性格上の欠点も多く、その自覚もない。
また、優しさや善意といった清廉潔白な表面と裏腹に、自分が気に入らないもしくは邪魔だと認識した相手に対して遠巻きに貶めたり、無理矢理な大義名分を取り繕ってまで排斥しようと考えたりする自己中心的な本質、光輝自身はそうした自分自身の負の一面を断固として認めようとしない。
故に、精神的には子供っぽく自分本位な面が目立ち、この事を周囲(特に雫)が諫めても、自分自身に災いが降りかかってしまう事がほとんど無かったため、真剣に耳を傾けようとしなかった。
また、正義感の強さ故に短絡的で思い込みの激しい部分に加え、本人は無自覚なのだが、かなりの自信過剰かつ自意識過剰で、それが時として自分を過大評価し過ぎな面や、親しい人、愛する人達に対する独占欲に繋がる事もある。
更に人の善意を無条件で信じては良い様に利用されて、周囲に迷惑をかけてしまったり、自分にとって不都合な事態に直面すると他人に責任転嫁して自分の行いを都合良く正当化する悪癖がある(この点は周囲から「ご都合解釈」と評される)。
元から強いヒーロー願望の持ち主であり、地球から異世界トータスへ召喚されるまでは人生や人間関係において挫折らしい挫折も味わった事が皆無だった。この弊害で、現実の苦労や厳しさを考慮しない理想主義者となってしまい、トータスを救う「勇者」として戦って欲しいというトータス側の要求も、そのブランド名に魅了された勢いから、後先考えず安易な考えで受け入れてしまい、結果的に他のクラスメイト達がなし崩し的に協力させられる事になってしまっており(ただし、あくまで光輝は周囲に協力を呼びかけただけであり、協力する事を強制したわけではない。協力する事を選択したのは、完全にクラスメイト達自身の意思である)、聖教教会のイシュタルからは、世界を救う勇者というより『便利な手駒』として利用されている。
が、光輝本人にその事への自覚や責任感は無いどころか、「異世界で魔物達と戦う以上いつかは人族と殺し合いをしなければならなくなる」という想像力さえ持っていなかった(平和な現代日本で生きてきたのなら無理もない事ではあるが)ために、魔族とは言え自分達を殺そうとする相手を殺すのに躊躇し、仲間を窮地に陥れてしまう事さえあった。
こういった人格が形成されたのは、弁護士だった祖父・完治の影響によるところが大きい。完治は幼少期の光輝を気遣って、弁護士としての自身の体験談を語る際には意図的に美化した表現を使っており、現実的な体験談は光輝がもっと年を重ねてから話すつもりでいた。しかし、完治が後者を話す前に急死したため、光輝は前者の体験談のみを胸に刻み込んでしまった。
加えて、光輝自身の能力の高さゆえに地球では失敗や挫折を経験した事がなく、現実では通用しない理想的な正しさを抱いたまま成長してしまったのである。
そんな光輝の『理想論をまかり通せるほどに優秀過ぎた』一面は両親は勿論のこと、師匠でもあった雫の祖父・八重樫鷲三からも密かに案じられており、「優秀故に人より少し遅いだけで、社会に出ればいつかは必ず失敗を経験する」と静観されていたが、その前に『異世界召喚』という想像の埒外にともいえる出来事を以て”挫折”、”現実”に直面する事になっただけでなく、価値観や信念等の全てにおいて真逆といえる存在が台頭してきた事で、彼のそれまで信じていた物が次第に崩れるだけでなく、やがて最悪の形でそれらの弊害が表出する事となる……。
対人関係
幼馴染の香織、雫、龍太郎の事は大切に思っており、その他の人間関係においても基本的に誰に対しても優しいのだが、その振る舞いは八方美人とも言え、更に人によって接し方に露骨な差が出てたり、中途半端になっている為、後々厄介な問題となってしまっている。
幼馴染の1人。彼女に対しては異性として好意を抱いていたが、一方で彼女がずっと自分の傍にいると思い込むなど、無自覚に強い独占欲を抱いてもいた。
過去のとある出来事から、香織はトータスに召喚される以前からハジメに対して純粋に恋心を抱き、積極的に接していたのだが、光輝はその経緯を知らずに「香織が好きなのは自分だ」と勝手に思い込んでおり、それどころか「香織はやる気も協調性も無いオタクで独りぼっちのハジメに同情して接しているだけ」とハジメの学校での不真面目な振る舞いも含めハジメに対しあまりいい感情を持ち合わせていない原因となっている。
幼馴染の1人。香織に対して程ではないが、彼女に対しても無自覚に独占欲を抱いていた。
雫も光輝が実家の道場に入門した当初は好意を抱いていたが、小学生の頃に自分と仲が良い事に嫉妬した女子達から雫が嫌がらせを受けて光輝に助けを求めた際、光輝は自身の性善説に基づいた安易な考えで事態を重く捉える事が出来なかった。そのため、結果的に光輝は加害者側を直接注意して事態を悪化させるだけになってしまった。現在では、雫からは恋愛感情を抱かれておらず、手の掛かる弟の様な扱いを受けている。
幼馴染の1人であり、親友。相棒的な存在で、世界を救うと宣言した際には真っ先に手伝うことを約束された。
八方美人な振る舞いが最も悪い形で顕著になってしまう相手。
前述の理由から「ハジメは自分の弱さを利用して香織に構ってもらっている」と考えていた上ハジメ本人の授業態度があまりにも不真面目であったため、彼に対して嫌悪感、忌避感を抱いてはいたがそれを表には出さずハジメの態度を注意していた。異世界に転移した後も訓練場やダンジョンで檜山大介達がハジメを虐めていた時は怒って止めた後努力しているようには見えない(一応ハジメなりには見えない所で努力していたとのこと)ハジメにもっと努力すべきだとアドバイスしていた。(ハジメは自分のことを棚に上げて悪態をついていたが)
奈落に落ちたハジメと再会した際には、その豹変ぶりと自分さえも凌ぐ圧倒的な力を身につけていた事に驚愕しつつも、奈落での壮絶な経験によって、非常に冷徹且つ徹底した合理主義者になった彼に対するスタンスの違いから、その懐疑心や嫌悪感はより一層強くなり、その矢先に香織がハジメに対する想いを告白して、彼のパーティーに移籍した事をきっかけに対立するようになった。
当のハジメからは何度突っかかっても適当にいなされるばかりか、反論ついでに自分の性格や行動における矛盾点・問題点を酷評されるなど、以前とは打って変わって、真正面から対立される様になった事や、ハジメに対する忌避感を懐く一方で、彼の圧倒的な力に依存している自分自身の不甲斐なさへの悔恨を含めた屈辱感も相まって、やがて光輝自身の性格・言動の矛盾や歪みに拍車をかけていく事となる…。
ハジメにとっては、豹変前から檜山達と同様に鬱陶しい存在としてストレスの原因となっており、豹変後も檜山達に対しては『実力が逆転して圧倒的な差がついた』事だけでなく、『自分が奈落に落ちた真相』という弱みを突く事で完全に閉口させ、「無関心」でいられるのだが、光輝の場合はそうした明確な非があるわけではないので排除はできず、意見が対立したまま硬直状態となった。
そのため、檜山達のような明確な敵対関係という訳では無い同伴や共闘も普通に行っており、意見対立時には主に雫が両者を取り持つなどしてどうにか均衡を保つ事ができ、終盤まではハジメと光輝の間に決定的な決裂や武力衝突といった事は起きなかった。
ちなみに、フェアベルゲンの刊行されている『月刊 フェアベルゲン』の編集長兼長老の一人のマオの悪意で、ハジメに対して男色疑惑があるかのような記事を書かれたことがある。
精神的に追い詰められている彼女に「俺が守ってやる」と優しい声をかけたものの、恵里が事実を歪めて話した事もあり、その深刻な状態を本当の意味で理解してはいなかったが結果的には助けることに成功した。 しかしこれがきっかけでメンヘラ女となってしまうことになる。
作中の様相
本編前半
トータスに召喚された後、率先して「勇者」になる道を選び皆のリーダー格となっていたのだが、『オルクス大迷宮』での実践訓練で、檜山の迂闊な行動でベヒモスが出現。それと同時にガイコツ騎士・トラウムソルジャーの群れも出現して退路を塞がれクラスメイト達がパニックに陥ってしまう。どうにか問題を解決しようとしたが結果的に自分で志願してベヒモスを相手に撤退する時間を稼ごうとしたハジメが、奈落に落下して生死不明になる事態となってしまう。
この事態に、他のクラスメイト達は個人差はあれど精神的に大きなダメージを受けており、中には園部優花の様に戦いを恐れて戦意を失った者さえいたのだが、このまま悲しんでいても状況は好転しないこともありあえて彼が「死んだ」と割り切って戦えなくなってしまった生徒の分まで戦おうと自分やまだ戦う意志のある生徒を鼓舞した。
その後も勇者として着実に能力を向上させていたものの、戦いに対する覚悟については無自覚のまま中途半端となっていた。
事実、ヘルシャー帝国の使者の護衛の一人に変装してハイリヒ王国に訪れていた皇帝ガハルド・D・ヘルシャーに「腕試し」の決闘を行った際には、
「確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。しかし、少々素直すぎる」
「お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ? その自覚があんのかよ?」
「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる?剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ」
…と、散々な評価をされている。さらに、本人の居ないところで本音を聞かれた際は、
「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ」
「理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い」
「自分の理想で周りを殺すタイプだな」
…とボロクソに言われてしまう程だった。
オルクス大迷宮で女魔人族であるカトレアと遭遇した際は、彼女によってメルド団長が瀕死の重傷を負い、他の騎士達も無惨に殺害されてしまったにも拘わらず相手を殺す事を躊躇したのが原因で、それを見抜いたカトレアに追い詰められてしまうが、そこに死んだと思われていたハジメが現れ、彼が魔物やカトレアを倒す形で助けられる。
しかし、さっきまで自分が殺されそうになっていたのにも拘わらず、戦意を喪失したカトレアを躊躇なく殺したことでハジメと対立することとなる。
迷宮からの帰還後、ハジメ一行に付いていく事を決意した香織が彼に告白するのを目の当たりにし、それを受け入れられないばかりか「香織が自分に告白するようハジメが仕組んだ」という、都合のいい邪推をするだけでなく、さっきまで「仲間」と強調していたハジメの事を「敵」への認識に切り替える自分勝手さを見せる。
それに対し、香織本人からは「自分達は確かに幼馴染みだけど、だからってずっと一緒にいる訳じゃないよ」とやんわりながらも決別を言い渡され、雫からも「香織は別にあんたの物じゃないんだから、何をどうするのか決めるのは香織自身よ」と現代の価値観とは逸脱したハジメに感化されていったことからハジメの仲間達を「ハジメに引き込まれた犠牲者達」と見なすようになった。(ハジメの敵は即殺すや複数の女を侍らせるという行為は現代の価値観とはあまりにもかけはなれておりそれに迷いなく賛同する人を洗脳されたと考えることは変ではないともいえる)
アニメ版では、同様に変貌したハジメに懐疑心や忌避感を懐きつつも、命を救ってもらった恩義も感じていたからか、表だった対立はなく一人落ち込んだ様子を見せる程度に留める等、WEB版・書籍版・コミカライズ版よりはわりと素直且つ大人しい印象が強かった。
その後、クラスメイトの恵里が自身に対する歪んだ愛情から魔人族に寝返り、メルドを始めとするハイリヒ王国騎士団を始めとする大勢の命を手にかけていた事を知り、驚愕しながらも彼女を制止しようとするが、直前に恵里から口付けされた拍子に毒を飲まされ、その影響で身体が思うように動かせなくなった上、彼女の傀儡となったメルドを始めとする騎士団員達を前にして、彼らへの情によって反撃できず返り討ちに遭った。
ハジメ一行の奮闘で恵里や侵攻していた魔人族がハイリヒ王国から撤退した後、愛子を介してハジメからトータスの真実について聞かされると「どうしてもっと早く教えてくれなかったんだ!」という疑問を投げかけるも、ハジメからは「思い込みとご都合解釈大好きなお前のことだから、大多数の人間が信じている神を“狂っている”と言われた挙句、お前のしていることは無意味だって俺から言われても、信じなかっただろ」と難癖をつけられてしまう。
さらにハジメに全ての元凶である“神”と戦う意志がない事を知ると、「お前は、俺より強いじゃないか!それだけの力があれば何だって出来るだろ!力があるなら、正しいことのために使うべきじゃないか!」とハジメを非難するが、ハジメからは
「……“力があるなら”か。そんなだから、いつもお前は肝心なところで地面に這いつくばることになるんだよ。
……俺はな、力はいつだって明確な意志のもと振るわれるべきだと考えてる。力があるから何かを為すんじゃない。何かを為したいから力を求め使うんだ。お前は、その意志ってのが薄弱すぎるんだよ」
と、自己中心的な言葉を掛けられてしまった。
それでも勇者として世界を救う為に神代魔法を手に入れる事と、ヘルシャー帝国へ会談の為に向かうリリアーナの護衛の為に、雫、龍太郎、鈴と共に、残る迷宮を攻略しようとするハジメ一行に強引に同行する事となった。
※その後についてはネタバレになるので後述
余談
アニメ版第2期のキャストクレジットでは『天之川光輝』と誤記されていた。
関連タグ
この先は、まだアニメ化されていない第五章以降の光輝の動向に関するネタバレの為、アニメが初見の方は閲覧注意
本編後半
使命に燃えながらハジメ一行に同伴する光輝だったが、訪れたヘルシャー帝国本国において再会した皇帝のガハルトは、先述の一件もあって光輝に対する興味を完全に無くすまでにその評価は最悪となっており、ハジメとの対談の最中は完全に無視されてしまった上に、去り際に「形だけの勇者君」とあからさまに皮肉られる有様だった。
その後も、ハジメのお膳立てで引き起こされたヘルシャー皇族とハウリア族を始めとする亜人の抗争、そして神代魔法を手に入れるべく挑んだハルツィナ樹海での冒険の過程で、ハジメ一行と共に行動していく内に…
- 実力が開きすぎてハジメ一行の足手まといになっていること
- ハジメが自分と違い確固たる信念と覚悟を持っていること
- トータスの人々が「勇者」である自分よりも、ハジメを信頼していること
- 香織だけでなく、雫までもが自分ではなくハジメに惹かれていること
そして何よりも…
- ハジメの事を疎ましがりながらも、一方では自分自身がハジメの力に依存してしまっていること
を思い知らされていく内に、ハジメに対する劣等感、屈辱心、嫉妬心は肥大していくばかりか、自覚のない憎悪となって光輝の心を蝕んでいき、次第に表情にも影が落ちる機会が増え、雫だけでなく龍太郎や鈴からも不安視される様になる…
その為、ハルツィナ樹海攻略の際に、迷宮の試練の一つである『相手に対する好意と敵意が逆転してしまう』トラップにかかった際には、他の面々が総じてハジメに敵意を向ける中、唯一人ハジメを全力で庇い立てするという新鮮な光景が見られた。
そして、第七章で挑んだ最後の大迷宮である氷雪洞窟においては、迷宮全体かけられた魔法の影響で心身の状態が不安定になる中、迷宮の試練の相手役である負の感情をコピーした虚像に言い包められた上に、ハジメが同じく虚像との戦いを終えた雫を背負って現れたのを目撃したのがトリガーとなって、ついに積りに積もったハジメに対する負の感情が暴発。
「ハジメは幼馴染や複数の女の子を洗脳し、勇者として世界を救おうとする自分を邪魔する諸悪の根源であり、彼を殺せばすべてを取り戻せる」という妄想に囚われ、虚像と同化してハジメを攻撃するが、手も足も出ず敗北。
結局、雫がハルツィナ樹海と氷雪洞窟で、龍太郎や鈴が氷雪洞窟で、それぞれ神代魔法を手に入れる事ができた中、自分だけどちらの大迷宮の試練もクリアできず、神代魔法を手に入れられなかった。
後に正気に戻った光輝は、虚像に言い含められ、ハジメに襲いかかってしまった事については流石に罪悪感を覚えながらも、ハジメに直接打ちのめされた事で戦力的にも人間的にも、何もかもハジメと差を開けられてしまった事を実感し、項垂れてしまう。
更にそこへ追い打ちをかける様に、氷雪洞窟の試練を経てハジメへの好意を自覚した雫から「私も南雲くんのことが好きになった」と告げられ、それまで自分の味方と思いこんでいた龍太郎や鈴さえも、どちらにも肩入れ出来ずに静観する様子を目の当たりにし、「皆、アイツの味方だな。人を簡単に殺して、簡単に見捨てるような奴なのに……」とやり場のない鬱憤をハジメに対する皮肉に込めてぼやき、遂には自棄になるあまり「こんな事になるなら、南雲ではなく自分が奈落に―――(落ちればよかった)」と軽率な発言をしそうになった為に香織から強烈な平手打ちを浴びせられながら、「……光輝くん。光輝くんのことは大切な幼馴染だと思ってる。……だから……嫌わせないで」と咎められてしまう。
その直後、ハジメやユエが地球へ帰還する為のアーティファクトの作成する余波で溢れた魔力の波動を通して、奈落に落ちてからユエに出会うまでのハジメの壮絶な経験の回想を目の当たりにした事で、ハジメが決して楽をして今の圧倒的な力を身に着けた訳ではなく、そして徹底したリアリスト・合理主義者に変貌したのも、ひとえに「地球へ帰りたい。取り残してしまった両親とまた会いたい」という想いからだった事は理解し、今しがた自分が発しそうになった言葉は無神経だったと深く恥じて反省と後悔をしたものの、自分自身の意志薄弱さだけはやはり認める事は出来なかった。
ここから先、最終章のネタバレ注意
最終章では黒幕である神「エヒト」とその一派の使徒、魔人族に誘い込まれる形で、ハジメ一行と共に魔国ガーランドへと訪れるが、そこで身も心も完全に魔人族へと成り果てた上でエヒトの傘下に下っていた恵里と再会。
上述のハジメに対する逆恨みや劣等感といった負の感情をつけこまれる形で、彼女が新たに行使できる様になった降霊術 “縛魂”によって洗脳され、生きながら恵里の傀儡と化すと同時に、エヒトに対する信仰心を植え付けられる。
この結果、神エヒトに抗うハジメは勿論、彼に味方する雫や香織、龍太郎やクラスメイト達、更にはトータスの人々もまた、滅ぼすべき悪であるという妄想に囚われ、世界を救うはずの勇者が世界の敵となってしまう。
最終決戦『神話大戦』では恵里に操られる形で、龍太郎と雫と戦い、激闘の末に叩きのめされて洗脳が解ける。
だが、洗脳が解けてもなお、自分が敵に操られて雫や龍太郎達に刃を向けたという事実が受け入れられず、尚も全ての非をハジメに転嫁しようとしつつ、殆ど狂乱状態となりながら文字通り『迷子の子供』の様に暴れるも、龍太郎の身を呈して制止された直後、雫から強烈な鉄拳が炸裂する。
「歯ぁ食いしばりなさいっ!大馬鹿者っ!」
「あんたが泣いて謝るまで殴るのを止めないわ!」と宣告と共に、馬乗りになった雫から、歯が折れて口から飛んでいく程、強烈な往復ビンタならぬ往復殴打で徹底的に顔面を殴られつつ、これまでの積もりに積もった想いを激情に乗せて説教される。
「こんなはずじゃなかった?そんなの当たり前でしょう!思い通りになる人生なんてないわよ!
皆、歯を食いしばって、頭抱えて、“それでも”って頑張ってんのよ!目の前の事実から逃げ出しておいて、戦おうともしないで、望んだ未来なんて手に入るわけないでしょう!
あんたはね、結局、ただの甘ったれたガキよっ。都合の悪いことからは目を逸らして、言い訳ばかりに頭を回して、それも間に合わなくなったら他人のせいにして……」
そう叱りながらも、『幼馴染』として自分を見捨てずに助けようとする雫の言葉を聞いて、ようやく完全に正気に戻った。
しかし正気に戻ってすぐ、光輝が正気に戻った事で自分の元から離れたと絶望した恵里が、眼の前で自害を図り、光輝は最後まで彼女を説得しようとしたが、とうとう制止できなかった。
この大きな失敗を経て、ようやく自分の間違いを自覚し、現実を受け入れる事となった。
以降はこれまでの独りよがりな考えと行いを悔いる様になったのだが、それに伴い、自虐的な発言が増え、当初見せていた爽やかさやカリスマ性はすっかり鳴りを潜めて、やや塞ぎ込みがちなネガティブな性格になる等、名実共にトータスに召喚された時のハジメと立場が逆転してしまった。
特に恵里の一件に関しては、「彼女を救ってなどいなかった」と一層強い心の傷となって、自責の念を抱き続ける事となる。
全てが終わった後、ハジメとユエが錬成した羅針盤とクリスタルキーが完成した事で地球の帰還が決まり、クラスメイト達が歓喜に沸く中、光輝のみは彼らの輪に入る事も出来ず、罪の意識を引きずったまま地球に帰還する事となった……。
後日談『ありふれたアフターストーリー』
※アフターは連載順と時系列がバラバラなっているので注意。ここではあくまで時系列順に記す。
- 「アフターⅡ 光輝編」まで
日本に帰還後、一度は高校に復学し学園祭に参加するなど、ある程度の期間在学していたが、やはり自責の念は強く、最終的に自主退学した後、贖罪のために単身トータスに戻り、ギルドからの討伐依頼を受けるなどして魔物退治の日々を送っていた。
依頼されていない魔物までついでに倒したりとオーバーワーク気味に行動する事が多い上に、『神話大戦』で洗脳されていたとは言え、エヒト側に与してしまった事を知る人々から懐疑や軽蔑の目で見られ、陰口を叩かれる始末であったが、それでもトータスの人々の信頼と期待を最悪の形で裏切ったことには変わりなく、故に身から出た錆の結果であるからと反論する事なく黙って受け入れたりと、自分を顧みない行動も目立つ様になる。
自分では既に勇者の資格はないと思っているが、専用武器である「聖剣」が自分の元を離れようとせず、なぜ自分がいまだ「勇者」のままなのか悩み続けていたが、『神話大戦』から約一年後にトータスとは別の異世界にあるシンクレア王国に召喚され、王女モアナとの出会いとシンクレアを守るための戦いの中で、本編では成し得なかった「勇者」として、自分に出来る事を果たしていく中で、「答え」を見付けていく。
また、戦いの終盤で自身の捜索に来たハジメに対し
「俺、やっぱりお前のことが大っ嫌いだ」
ハジメ「奇遇だな。俺もそう思ったところだ」
と憎まれ口を叩き合う事で、遅まきながらハジメの事を認める事が出来た。
そしてハジメもまた、光輝が葛藤や挫折を振り切って成長した事を認め、『勇者』としてシンクレア王国を救わんとする光輝の為に、お膳立てとしてその他の雑兵達の相手役を自ら買って出ると、黒幕である≪黒王≫との戦いに挑む彼を送り出した。
「後ろを頼む――魔王」
ハジメ「前だけ見てろ――勇者」
そして、長らく抱え続けてきた葛藤と迷いを振り切り、≪黒王≫を倒した光輝は、戦いと冒険を経て愛し合う仲になったモアナやシンクレア王国で出会った人々、そして香織、雫、龍太郎、鈴、そしてハジメやユエら幼馴染や元クラスメイトらから暖かく迎えられ、王女の地位から解放されたモアナと共にトータスに戻るというハッピーエンドを迎える……
…と、ここで終わればよかったのだが、せっかく大団円に纏まろうとしていたそのタイミングを狙ったかの如く、三度目となる異世界への扉が開き、再び次なる別世界へと転送されそうになり、遂に彼の中で何かが切れた。
「も、もうっ、嫌だぁあああああああああああーーーッ!!!」
キャラ崩壊レベルで嫌がるあまり、ハジメに飛びつき…
ハジメ「てめぇっ、この野郎! 離しやがれぇっ、クソ勇者ぁあああああああっ」
「絶対にお前を離さないぞっ、魔王ぉおおおおおおっ」
と、結果的に彼を道連れにして転送された。
ある意味、初めて光輝がハジメに一矢報いた瞬間だった……。
- 「光輝編」終了以降
その後は、終末のSFな世界観な第三の異世界にある要塞都市コルトランにハジメと共に転送され、図らずも同世界を救うべく協力し合う事となる。
その過程でハジメとの関係も、漫才の様な掛け合いを繰り広げつつ、戦闘では互いに背を預け合うまでに、更に改善(?)されていく事となった。
それに伴い良くも悪くも吹っ切れた事で、以降は『イジられ役』『ツッコミ役』『苦労人』属性が追加される事となった。一応、本編の時も偶にハジメ(豹変後)とコミカルなやり取りを交わす場面もあったが、これ以降それが顕著となり、真面目一辺倒なシリアス寄りなキャラであったのが少なからず崩壊する事となった。
そして、別ルートで召喚されたどっかの深淵卿も参戦し、激闘の末にコルトランも無事に救い、今度こそ全て解決したかと思いきや、またも別の世界に召喚される羽目になってしまった。
そんなあまりの社畜同然な勇者としての酷使ぶりに、とうとう疲労とストレス、そして怒りが頂点に達して我を忘れた光輝は、自身を召喚した別世界の女神アウラロッド・レア・レフィート(略称「アウラ」)に対して、
「馬鹿野郎っ。どうしてそこで諦めるんだ! がんばれっ、がんばれっ! 女神様だろう!? 貴女ならできるっ、自分でできる! 必ずできる! 貴女を信じる俺を信じろ! 諦めたら、そこで世界終了だぞ!」
アウラ「エッ!? まさかの返答!?」
…とどこぞの熱い方々の格言をごちゃ混ぜたような暴言同然な応援を投げかけて断固拒否するという、今までの光輝であれば考えられない様なキャラ崩壊を起こしてしまった。
しかし光輝にキレられたアウラは、実は光輝以上のハードスケジュールで過労死寸前なOLレベルの社畜女神であり、その憔悴っぷりを見かねて(暴言を吐いてしまった事をハジメと遠藤に(誂い半分に)責められた事もあって)結局助ける事を承認する羽目になる。
その際に図らずもアウラともフラグを立てる事となり、遠藤からは妬まれ、ハジメからはその模様を映像に記録されながら、冷やかされる羽目になる。
※さらに、後にハジメと遠藤が一足早くシンクレア王国に戻った際に、ハジメが上述した映像を光輝の帰りを待つモアナに見せるという余計な事をしたせいで、後に光輝が巻き込まれる事となる修羅場に更なる拍車がかかる事となった。
遠藤「これだからイケメンは。ハーレム男は爆死しろ」
ハジメ「くくっ、あの砂漠の女王(=モアナ)が見たらどんな反応をすっかな。ハーレム男は修羅場って困れ」
「お前等にだけは言われたくないっ!!」
またその際に新たな力として、天剣へと変化したアウラを手にした事で、髪に一部だけ白いメッシュが入り、瞳は左が緋色に、右が翡翠色のオッドアイに、更には右の額から目、頬から首筋にかけて木の枝と蔦が絡み上がったような紋様が浮き出て、黒と白の双剣を構えた姿…という、ハジメや遠藤同様に厨二病の塊ともいえる外見に変化してしまい、ハジメ達から大いに茶化される羽目になった(即座に光輝も「お前等に並んだだけだからな?」とブーメラン的な発言を投げかけ、2人を撃沈させている)。
※ちなみにこの時に遠藤は、酒呑童子こと夜々之緋月に惚れられ、嫁がまた一人増える事になる。
今度こそ一連の件が解決した後も、モアナに加えて女神を辞めたアウラまでもがトータスまでついて来たことで修羅場な三角関係になったり、ハジメやミュウに振り回されたりと、前途多難な日々を送っている。
ただしシンクレアやコルトランなどでの冒険を経て、葛藤や後悔から解放されたお陰で、性格は明るさを取り戻しており、モアナとアウラを連れて実家に一時帰省した時は家族に久しく見せていなかった笑顔を見せ(これには家族も安堵していた)、ようやく本当の意味で帰郷できた。
作中の不遇な扱い
数奇な役回り
元々のご都合主義やキャラの立ち位置、方向性からWeb連載当時、本来のヘイト要員であった檜山大介や、同じく悪堕ち要員であった清水幸利、自身を闇堕ちさせた張本人である中村恵里らに引けをとらないばかりか、場合によっては彼ら以上に読者からのヘイトを集め、「早く殺しましょうよ」(洗脳されて敵に回った際には「これで殺せる」とまで)などの過激な意見が感想に溢れており、特に清水と檜山がハジメの手で殺害されて物語から退場し、恵里が魔国ガーランドへと撤退して最終章で漸く再登場するまでは、彼ら以上のレギュラー的なヘイト要員が登場しなかった事もあって、次いで読者からの不平不満が多い光輝が、本編中におけるヘイトを一身に受ける事となってしまった。
一歩間違えれば最終的に“悪役”という扱いとしてそれぞれ悲惨な形で退場した清水、檜山、絵里と同様か、それ以下の顛末になっていた可能性もあったが、最終的には後日談にてフォロー・救済される形で、多難な現実に振り回されつつも、主人公とも和解(光輝の脳内では)し、新たな恋や平穏を手に入るという、なろう作品におけるこの手のキャラクターとしては、相当恵まれた結末を迎える事ができた。
日頃からクラスの中で決して良い素行とは言い難く、何度周囲から窘められても聞く耳を持とうとしなかったし、何を言われても受け入れず自分の考えだけを正当なものとする光輝は厄介分子となるのは当然の帰結。結局本編中は改善される事のなかった両者の相容れない関係に関しても、客観的に見れば、一見対照的な性格であるが、お互いに自己中心(光輝は「周囲の意見を一切遮断してまで自分だけが中心・先頭に立ちたい自尊型」、ハジメは「周囲との協調を一切遮断してまで自身の欲求を優先させたい孤高型」)且つ経験が足りない未熟な性格だったが故に余計に反目し合い、結果、劇中の様な噛み合わせの悪い仲に至ってしまったともいえる。
擁護として、後述する「悪徳勇者」キャラ達の様な勇者の立場を鼻にかけた傲慢・尊大な振る舞いをする事もなく、清水や檜山、恵里の様に、自発的に悪の道に堕ちる…といった事もなかったばかりか、終盤に恵里に洗脳されるまでは勇者としての使命を光輝の考えのみで全うしようとしていた事と、最後には自分の欠点を認め、改心した事を忘れてはならない。
ただ、同じ『主人公の噛ませ犬』という役回りであっても、基本的に「ここまでクズorバカな奴は現実的ではない」と読者も容易に理解できるくらいに極端なまでにわかりやすい悪役像である事が多い悪徳勇者に対し、(ハジメにも同じ事が言えるが)光輝は(身も蓋もなく言えば)『中途半端』というキャラクターが、「現実にいそう」「こういう奴を実際に見た事がある」と読者がデジャヴを感じられるくらいにリアルな人物像であったためと、光輝自身に自覚がないとは言え遠回しないじめを行い、トータスに召喚されてからは何度も厳しい現実にぶつかり、本編中に度々周囲に忠告もされ”現実の厳しさ”を学ぶ機会は相当数あったのだが、自分の間違いを認めたのが本編終盤の恵理が自害した後という、成長と反省が最後の最後になったことが必要以上にヘイトを集める結果になったとも考えられる。
作者も「(光輝アンチ派の)読者の声を反映させすぎてしまった」と、本編連載中に予想以上に膨れ上がった光輝アンチの意見に流される形で、彼の問題点を過剰に強調するような描写や彼を貶める場面を必要以上に組み入れ過ぎた上、本来であれば物語が進行する過程で、ある程度はフォロー描写も適度に描くなどして読者からの反感・同情のバランスを調節すべき筈だった点を怠ってしまった事を認めている。尤もこれも、作者が公に認めたのがweb版の本編終了後大分経ってからの事だった為、一部読者からは『もう遅い』と指摘された他、「ファンの意見に流された」とわざわざ言い添えた点が『責任転嫁』であると、当然のようにに受け止められた模様。
最終的に本編終了後に『ありふれたアフターストーリー』で漸く光輝のまともなフォロー・救済がされる事となったのは、こうした事情を考慮された故と思われる。
二次創作において
二次創作界隈でも彼の扱いは途轍もなく悪く、殆どの作品が光輝アンチ作品となっている。中には光輝を改悪しているものもあるが、読者からは違和感が持たれていないどころか、『原作でもこんな感じ』『もっと酷い目に遭わせろ』等と称賛を受ける事すらあり、どれだけ好きに無様に書こうが痛めつけようが尊厳破壊しようが許される道化orサンドバッグ扱いされているのが現状である。
これは光輝だけに限らず、今作以外のなろう作品を始めとする様々な創作物における悪役や憎まれ役、ヘイト役に共通して言える問題であるが、『性格・言動が気に入らない』『主人公の邪魔をした』等の理由から、寄ってたかって槍玉に挙げたり、二次創作だからといってネタ・ギャグの範囲を逸脱するレベルで必要以上に、痛めつけたり、辱めたりするのは、客観的に見れば光輝と同類か、彼以上にたちの悪いタイプの『正義の暴走』といえるので、心当たりのある二次創作者は、くれぐれも主観的な見解に偏り過ぎずに、最低限の公平性を保った作品を作る様心がけてほしい。
関連タグ(ネタバレ含む)
なろうやカクヨム等のWeb小説及びライトノベルの人気ジャンル『異世界もの』では定番となりつつあるヴィラン(悪役・敵役)で、『紆余曲折の果てに魔王軍等の本来なら勇者として倒すべき筈の敵勢力に与して、主人公と敵対する』という、いわゆる悪堕ちに至るパターンが多い(ただし前述の通り、光輝は典型的な『読者が義憤の感情を燃やすような最低最悪腐れ外道の悪徳勇者』としては不完全(完璧に当てはまらない)であることに注意されたし)。