※ネタバレあり、注意!
「みんな大好きミレディ・ライセンだよぉ~」
CV:ゆかな
概要
「ライセン大峡谷」にある大迷宮の一つ「ライセン迷宮」の奥で、挑戦者に試練を与えるゴーレム。外見はニコちゃんマーク顔の人間大。戦闘時は巨大な甲冑型のゴーレムを操る。
なおミレディゴーレムは漫画作品ではサイズがまちまちになっている。
その正体は、本編の大昔(正確には不明だが、千年以上前らしい)に舞台となる世界「トータス」の神でありながら世界とそこに生きるものを弄ぶ邪神「エヒト」に戦いを挑み、敗北したレジスタンス組織「解放者」のリーダーで当時はメイン画像のような15、6歳の黙っていれば美少女。ただし、貧乳。
神代魔法の一つ「重力魔法」の使い手であり、試練を突破した南雲ハジメ、ユエ、シア・ハウリア達に重力魔法を授ける。
過去の戦いの生き証人であり、ハジメ達にエヒトへの決着を託す(ハジメは神と戦う気などなかったが、「君が君である限り必ず君は神殺しを為す」、「君は君の思った通りに生きればいい。君の選択がきっとこの世界にとっての最良だから」と返している。事実、ハジメとエヒトは最終的に戦うことになる)。
‥‥と、ここまではいいのだが、それらのカッコいい部分を帳消しにするのが彼女の性格である。
ライセン迷宮の各所にあるメッセージを抜き出して見ると‥‥。
「おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪」
「ねぇ、今、どんな気持ち?苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ」
「あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します。いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです。嬉しい? 嬉しいよね?」
ウザい。
とにかくウザいのである。
ライセン迷宮は魔法が使いにくいという特性があるが、ある意味そんなことよりもウザいメッセージによるストレスの方がよほどキツイ。
自身の言動もウザく、聞いた人の10人中10人がブチ切れるレベル。ハジメ一行も殺意を抱いた。
その一方で、過去の戦いと長い年月で仲間たちが皆死んでしまい、一人ゴーレムとして生きながらえていることに悲しんでいる節がある。
壮絶な過去
ミレディも当初からウザかったわけではなく、このようになったのは、彼女が解放者に入るまでの経緯が影響している。
彼女は元々、処刑場として使われていたライセン大峡谷とそこの監獄施設を管理する「ライセン伯爵家」の出身であり、重力魔法に目覚めた彼女は、幼少のころからその魔法で罪人を谷底に落とし処刑する役割を与えられていた。その罪人も、「子供の徴兵に反対した」「獣の耳と尾が生えていた」等、普通なら理不尽な罪状も多かったが、閉ざされた世界で暮らしていたミレディはそこに疑問も抱くことなく、黙々と処刑を続けていた。
そんなある日、父から「神官に暴力を振るった男が異端者集団の可能性があるので、処刑の前に一応問いかけろ」と命じられる。
言われるがままに「何故こんなことを?」と聞いたところ、その男は
「子供が笑えねぇ世界に、なんの価値がある?」
「あんただって、笑って生きたいだろ?」
そう答えて自ら峡谷に飛び降りた。せめて、ミレディに自分を殺させないかのように‥‥。
これ以来、少しずつ処刑に疑問を抱くようになってきたミレディに、さらなる転機が訪れる。それが、侍女兼家庭教師として来た女性「ベル」との出会いだった。
当初は気品に満ちた淑女‥‥と思われていたのだが、それは表向きであり、
「ミレディたん、お帰り~~。ちっこいのに毎日おつかれさまぁ~」
超の付くウザキャラだった。慣れ慣れしくウザい言動の彼女のペースに振り回されるようになったミレディだったが、ベルの影響を受けていつのまにか失っていた感情を取り戻しつつあった。
しかし、処刑しようとした相手に再審を働きかけようとしたことから、ミレディの異変に気付いた父が調査した結果、ベルが反教会組織のメンバーだったことが発覚する。投獄されたベルはミレディに自身の過去を語る。
ベルは嘗て、信託を受ける巫女だった。しかし、あることが切っ掛けで神に見捨てられ、殺されかけたことで(本人曰く「確かに死んだはずだが、何故か生き返った」)エヒトの真意を知り、仲間を集めて解放者を作り上げていた。投獄された仲間を助けるためにライセン家に潜り込んだが、過去の自分と似たミレディを放っておけず、必要以上に干渉していたのだった。
真実を知ってもベルを救おうとするミレディだったが、父はミレディが手を打つ前に処刑を強行しベルを峡谷に落とす。後を追い谷底に降りたミレディが見たのは、即死こそ免れたものの、魔物に襲われ虫の息のベルだった。
必死に回復魔法を掛けようとするミレディにベルが語りかけた。
ベル「手を取り合うことは‥‥罪かしら?」
「‥‥罪、なんかじゃ、ないっ」
ベル「ええ。人は‥‥あいつの、玩具なんかじゃ‥‥ない」
そしてベルはミレディの前で息絶えた。彼女を妹のように思っていたと言い残し‥‥。
ベルの亡骸を抱いて戻ったミレディに、父は「そのゴミを捨てろ」と言い放つ。だが、もはやミレディにそんな言葉に従う気はなかった。そんな彼女を「廃棄処分」しようとする父たちに対し、
ミレディはニヤリと笑い、ウザったらしく宣戦布告した。
「廃棄処分?やれるもんなら、やってみればぁ?」
ウザキャラゴーレムの「涙」
こうして、自分を殺そうとするライセン家を逆に滅ぼした(つまり、一族を皆殺しにした)ミレディはベルの遺志(とウザさ)を継いで解放者に入った。
数年後、解放者のリーダーとなり、エヒトと戦うための同士を探していたミレディが、錬成師の青年オスカー・オルクスを訪ねてきたところから、「ありふれた職業で世界最強零」は始まる。
「おかえりなさい☆あ・な・た♡ごはんにする?お風呂にする?それとも‥‥ミレディたん☆にするぅ?」
オスカー「すいません。間違えました」
‥‥最初は自分や家族同然に育った孤児院の人々が危険な目に会いかねないと断っていたオスカーだったが、別の事件に孤児院の義弟たちが巻き込まれたのを機に戦う覚悟を決める。
「私と一緒に‥‥世界を変えてみない?」
オスカー「地獄の底だろうと付き合うよ」
「え、いや、さすがに地獄の底とかは‥‥流石に重いっていうかぁ。オーくんがミレディちゃんに参っちゃってるのはわかるけど、ヤンデレは趣味じゃないんで~」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
オスカー「てめぇぶっ殺してやるぅうううううっ」
「きゃぁああああっ~、オーくんがキレたぁ~」
‥‥‥‥と、こうして、ミレディとオスカーは自分と同様の神代魔法の使い手を集めるために旅立った。
そして、自身を含めて7人の神代魔法の使い手がそろった。
しかし‥‥‥‥
彼女たちはエヒトに敗北してしまう。
本編1巻によると、解放者たちはエヒト側の情報操作により、神に逆らった世界の敵「反逆者」とされてしまい、エヒトのいる空間「神域」にたどり着くことすらできずに一人また一人と倒れ、オスカーやミレディ達、神代魔法の使い手七人だけになってしまう。
負けを認めざるを得なかった解放者たちは、いつか自分たちのようにエヒトの真意に気付き、戦う者が現れた時に備え、世界各地に大迷宮と、そこでの試練に打ち勝った者に自分たちの神代魔法を継承できるシステムを構築。未来に生きるものに希望を託した。
それから気の遠くなる程の年月が過ぎた。
解放者で生きているのはゴーレムの体になったミレディただ一人となっていた。
それでも、来るべき日のために彼女はライセン迷宮の最奥でひたすら待ち続けた。そこに現れたのがハジメだった。
ハジメ達が去った(というか、魔法を継承後もお宝目当てに荒らそうとしたので追い出した)後、ミレディは居住区の壁を見る。そこには、神代魔法を駆使して作り上げた在りし日のベルを再現した写真や、オスカーや人間だったころの自分たちの写真が飾られていた。
「本当に‥‥現れたんだ‥‥私たちの試練を乗り越えた者が‥‥」
「あれから‥‥どのくらい経ったのかな?千年?二千年?あはは、分かんないや‥‥」
ようやく、待ち望んでいた時が訪れようとしていた。
「みんな‥‥とうとう動き出したよ。私たちの止まっていた時間が」
いつしか、ミレディの声は震えていた。
「夢でも、幻でもないよ」
ニコちゃんマーク顔のゴーレムの体では涙を流すことなどできなかったが、
「私達の歩んだ道は‥‥確かに、未来に繋がっていたよ」
それでも、ミレディは泣いていた。
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以下、最終巻ネタバレ
最後の解放者(ネタバレ注意!!)
エヒトとの最終決戦「神話大戦」に巨大ゴーレムと共に参戦。神の使徒の大軍と戦う人類側をその重力魔法で援護した。
※この時点でミレディの魔力は尽きはじめており、戦えるのはあと一回が限度であったことが「零」で語られている。
そして、エヒトを倒したものの、崩壊を始めた神域に取り残されたハジメ達を助けるために自身も神域に乗り込む。
シア達を地上に送り返し、最奥に取り残されていたハジメとユエに合流。脱出のためのアイテムと最低限の回復を施すと、なんと自分はここに残ると言い出す。
このままでは神域の崩壊によって地上が巻き込まれてしまう。
その前に、自分の残りわずかな命と魔力、それを繋ぎとめていたゴーレムの体を代価にした重力魔法でブラックホールを作り、神域を破壊する。ミレディは最初から死ぬつもりだったのだ。
自己犠牲など似合わないと彼なりに制止しようとするハジメだったが、
「私は、世界も皆も救えなかった。未来に誰かに託すことしかできなかった。‥‥ずっと、ずっと、この時を待っていたんだよ。今、この時、この場所で、人々の為に全力を振るうことが、ここまで私が生き長らえた理由なんだ」
「この残りカスみたいな命を誓い通りに人々の為に使えるんだから。君たちのおかげで‥‥やっと、安心して皆のところに逝けるよ」
魔法で生前の姿を見せるとミレディはずっと抱えていた胸の内を明かした。
それを聞いたハジメ達も、今回ばかりはミレディに敬意を表さずにはいられなかった。
ハジメ「じゃあな、世界の守護者」
ユエ「‥‥さよなら、世界の守護者」
ハジメ達の脱出を確認すると、ミレディは最期の重力魔法の準備に入る。形成されるブラックホールと崩壊していくゴーレムの体。ふと上を見上げると、
そこには、大切な仲間達の姿があった。
走馬灯の類だったかもしれないが、ミレディにとってはそれは紛れもなくオスカー達本人だった。
「なんだ、迎えに来てくれたんだ。えへへ、じゃあ、言っちゃおうかな。遂に、言っちゃおうかな!」
そしてミレディは魔法を発動させ、皆のところに帰っていった。
いつも通り、ウザいくらいの底抜けに明るい笑顔で‥‥‥‥‥。
「みんなぁ、たっだいまぁーー!!」
こうして、ミレディ・ライセンの波乱に満ちた生涯は幕を下ろした。
死後、ハジメ達の手で解放者の真実が明かされ(ただし、混乱を避けるために、エヒトについては『本物の神になり替わった邪神』という形に落ち着いた)、「反逆者」とされていた彼らの名誉は回復。人知れず邪神と戦った英雄として新たに人々の記憶に刻まれることとなった。
あの日、世界を守るために命を燃やし尽くした「最後の解放者」の姿と共に‥‥。
そして‥‥‥‥
どことも知れぬ世界の、いつともしれ知れぬ時代。
小さな町の孤児院に住むある少女の元に、隣国の貴族の青年が訪ねてきた。
彼には本来の名のほかにもう一つ名があった。
青年の「前の」名は「オスカー・オルクス」。
その名を聞いた途端、彼女はすべてを思い出した。
朧気に幼い時から夢として見ていた数々の光景を。仲間たちの、特にずっとそばにいた彼のことを。最後に交わした約束を。そして、自分の「前の」名を。
オスカー「言っただろう、ミレディ。永遠に等しい時が過ぎたとしても、たとえ魂だけになろうと、必ず君を迎えに行く。今度は、僕が君を見つけると」
「うん‥‥うんっ」
どんな理由があってこんな奇跡が起きたのかは本人たちにもわからない。
だが、綻ぶように笑いあう二人の姿は本当に幸せそうだった。