ホンドテン
日本の特産種で、本州と四国、九州に分布し、北海道にも移入分布する。対馬に棲息する亜種のツシマテンは天然記念物。
体長44~55cm、尾長17~23cm。体重0.9~1.5㎏程度。メスはオスよりやや小さい。季節により体の色が変わり、夏は毛が赤褐色や暗褐色で顔や四肢の毛衣は黒、喉から胸部が橙色、尾の先端が白い。冬毛には二つのタイプがあり、毛が赤褐色や暗褐色で頭部が灰白色を帯びる「スステン」と、毛衣が黄色や黄褐色で頭部が白い「キテン」(「黄貂」「黄鼬」の字をあてる)に分けられる。雪国はキテン、その他の地域はスステンが多いが、暖地でもキテンを見かけることがある。
エゾクロテン
ユーラシア大陸北部に広く分布するクロテンの北海道亜種である。道南と道央は移入されたホンドテンが優占しており、エゾクロテンは主に道東と道北に生息している。
体格はホンドテンとほぼ同じで、大陸のクロテンよりやや小さい。クロテンとは言うが体毛は黒くはなく、白みがかった黄色から暗褐色が多い。外見・生態ともホンドテンによく似ており見分けるのは難しいが、北海道に移入されたホンドテンはキテンだったため、冬の北海道で鮮やかな黄色い毛色のテンを見かけたらホンドテンである可能性が高い(道南であればほぼ確実にホンドテン)。
人間との関わり
毛皮獣として非常に名が高く、特に冬毛のキテンは珍重され、高値で取引されていた。俗に「テン獲りは二人で行くな」(キテンの毛皮は高価で売れるので、一方がもう一方を殺しかねない)と言い習わされている程。
また、妖怪として伝承する地域も多く、三重県伊賀地方では「狐七化け、狸八化け、貂の九化け、やれ恐ろしや」(テンの変化の力ははキツネやタヌキを凌駕する)と言う言い廻しがある。また、秋田県や石川県では目の前をテン(や、同類のイタチ)が横切ると不吉と言い、広島県ではテンを殺すと火難に遭うと言う伝承が存在する。秋田県北秋田郡地方ではモウスケ(猛助)と呼ばれ、妖怪としての狐よりも恐れられている。福島県では「ヘコ」「コモノ」「ハヤ」「フチカリ」(扶持狩り。扶持、つまり貯蔵食を荒らす事から)などと呼ばれ、雪崩による死亡者の霊魂が化した獣とされている。
鳥山石燕の描いた絵「鼬(イタチとかいているがテンと読む)」という名前で妖怪として描かれており4匹のテンが肩車しあって高く積み重なっている不気味な絵が有名か。
主な種類
- ホンドテン
- クロテン(メイン画像)
- マツテン
- キエリテン(ブナテンとも)
- アメリカテン
- ムナジロテン
- フィッシャー