概要
大友克洋が1980年から1981年に発表したSFホラー漫画「童夢」の主要人物。
主人公エッちゃんこと悦子を超能力で追い詰めていく、本作の悪役。
人物
本名内田長二郎。通称チョウさん。
毛の薄い頭に小さな背丈で杖をついている、どこにでも居るような65歳の男性。舞台である堤団地の第3棟608号に住んでいる。かつては娘一家と共に暮らしていたが、現在は彼1人を残して転勤しており、管理人からは厄介払いだと判断されたことから家族関係は冷えきっている様子。表札には同居していた娘達の名前に斜線が引かれており、部屋の中には家具はおろか、生活必需品が何ひとつ置かれていない。
普段は団地内にある広場のべンチに腰掛けながら日向ぼっこをしている。常に笑顔でぼんやりしているため、周囲からはボケ老人扱いされている。
一見人畜無害の老人だが、実は恐ろしい素顔を隠し持っている。
その正体は、長年堤団地で起きている変死事件の黒幕であり、人知を超えた力を有する超能力者である。
チョウさんは人の見ていない所では、大量のバッジやストラップ、オモチャを身に纏った姿で団地を徘徊し、奇妙な力を用いて夜な夜な窃盗や殺人に手を染める。物静かな普段の姿とは異なり、言動はやんちゃないたずらっ子そのものである。欲しい品を手に入れるために住人を操り、飛び降り自殺にみせかけて殺害し続けてきたが、本人に罪の意識は全くなく、これまでの行為を「遊び」と称していた。
幼くして正義感が強く、しっかり者の少女である悦子に対し、老齢でありながら、子どもじみた狂気と歪んだ遊び心を併せ持つチョウさんは、見事に主人公と対極に位置する悪役であるといえよう。
暗躍
第1話
物語開始の時点で既に3年以上に渡り、24人の住人を手にかけている。
劇中ではまず、団地の少年上野タケシの「銀色の羽根のついた青い帽子」目当てに父親の上野元司を殺害した。
その翌日、夜廻り中の警官2人組の内1人を殺し、ピストルを奪う。これを機に事態はさらに重くなり、刑事の高山と上司の山川は動揺するも、犯行の糸口が全く掴めない。
次の夜、なす術なくべンチに座りこむ山川の足元に暗闇からボールが転がり込み、直後袂のポケットベルが鳴り出す。山川はそばの公衆電話で連絡を取るも信号は出してないと告げられ困惑する。やがて得体の知れない犯人の目的がポケットベルだと悟り傍らに置くが、既に興味をなくした犯人の謎の力によってそれは木っ端微塵になる。山川はどこからともなく聞こえてくる犯人の声を追って棟の屋上に辿り着く。
そこに居たのは羽根のついた帽子を被り、盗まれたピストルをぶら下げ、全身に被害者の持っていた品々を身につけたチョウさんだった。
翌朝、面白半分に赤ん坊をベランダから転落死させようとするチョウさんだったが、何者かによって阻止される。驚く彼の前に1人の少女が歩み寄り、「あんなコトしたら赤ちゃんが死んじゃうでしょ」と叱責する。自身が超能力を用いて犯行に及んだことを見抜いたその少女悦子に、チョウさんはただならぬ恐怖を感じるのだった。
第2話
変死を遂げた山川の代理として、彼の盟友である岡村が捜査に乗り出したが、これまでに29人も死んだその事件の真相を暴くことはやはり彼にとっても困難だった。
ある夜、おつかいに出掛けた悦子の前にカッターナイフを手にした浪人生の佐々木勉が立ちはだかる。勉はチョウさんの能力によって操られており、チョウさんにとって脅威になりうる悦子を殺害しようと彼がけしかけたのだった。悦子が叫び声を上げた途端にチョウさんの部屋の窓ガラスが勢いよく割れ、その拍子に勉は自らの首を切り裂いてしまう。血をどくどくと流しながら迫る勉と必死に助けを呼ぶ悦子。団地にはチョウさんの高笑いが不気味に響き渡るのだった。