エミュレータ
えみゅれーた
『エミュレータ』(emulator)とは、コンピューターなどのシステムで他の機械装置の動作・機能を模倣する(エミュレーション)もの。
曖昧さ回避
一般名詞としてのエミュレータ
元々は英語で「真似る者」などの意味を持つ。pixivでは「絵柄エミュ」などと使われることもある。
コンピューターにおけるエミュレータ
コンピューター上で異なるハードウェアの動作を模倣して本来は対応しないソフトウェアを動かす。仮想環境(VM、一つのハードウェアの中で複数の仮想マシンを同時動作させる)と重なる部分が多い。
主な用途としては、
- 新しいシステムで古いシステムとの後方互換を保つ。
- パソコン上でスマートフォンや組み込みシステムなどのソフトウェアを開発する際のテスト環境。
- 古いハードウェア(ゲーム機など)にしか対応していないソフトウェアやコンテンツを楽しむ。
など。
現在のパソコンでレトロPCの環境を再現するものや、Androidなどのモバイル向けアプリをPC上で動かすもの(あるいはその逆)、過去の家庭用ゲーム機のソフトを最近のゲーム機やパソコン上で動かすといったものがある。
エミュレータを動作させるためには、基本的に実機より遙かに高い処理能力が必要。特に複雑な構成の機種のエミュレータの開発は難題で、2基のCPUを搭載するセガサターンの場合は、同世代のプレイステーションどころかプレイステーション2よりもエミュレータの登場が遅れたと言われている。
公式エミュレーション環境の例
仮想環境を利用した互換レイヤー
- VDM/NTVDM - 32ビット版Windows上にMS-DOS環境を複数立ち上げることができる「仮想DOSマシン」。これにより16ビットアプリケーションを動作させる。9x系では、MS-DOSプロンプトから直接DOSの機能を呼び出して動かせる(このときもこの仮想マシンが動いている格好)。NT系ではカーネルにDOSの機能を持たないので、NTVDMというアプリ上の仮想空間で動作するという格好になる(ユーザーは意識しなくて良い)。NTVDMの動作にはIA-32(32ビットのx86)の仮想86モードが必要となる。IA-32を64ビットに拡張したx64の場合CPUが32ビットのLegacyモードで動いていれば動作させられるが、64ビットのLongモードにはこの機能がない。そのため、64ビット版Windowsにはこの仮想環境は含まれない。
- WOW64 - 64ビット(x64、ARM64)版Windows上で32ビットアプリを動かすサブシステム。64ビットのWindowsに標準で含まれている。ただし32ビットと64ビットのコードの混在には対応していないので、それぞれ専用にDLLやOCXを用意してやる必要がある(ブラウザのプラグインなど)。また、x86系(x86とx64)とARM系(ARM32とARM64)の相互変換には制約があり、ARM64からx86には変換できるが、x64はx86以外に対応していない。
- Mixed Mode Manager - PowerPCを搭載したMacintoshで従来の680x0(68K)用のソフトウェアを動かすために搭載されたサブシステム。PowerPCは68Kに比べ圧倒的に高性能だったことに加え、エミュレータそのものの出来も非常に良かったので、ユーザーが違いを意識する必要はほぼない。ClassicMacOSのAPIの仕組みを活用して68KとPowerPCの両方のコードを混ぜることもでき、開発者は速度に影響する部分からコードの書き換えを進めることができた。このシステムがあまりにも良くできていたのでMacのPowerPCへの最適化が遅れたとも言われるが、PowerPC Macでは68K時代のソフトは実機より高速に動作したので、実際のところユーザーはほとんど困ることはなかった。
- Classic - PowerPCで動作しているOSX(Mac OS X v10.4まで)上にClassic Mac OSを直接インストールし、専用アプリを動かすシステム。すぐにOSXに移行できなかったアプリのために用意された。Windows7のXP Modeと同様に、OS9が独立して動作する仕組み(ただしVirturlPCのようにOS9のデスクトップを独立表示させることはできない)。そのため専用アプリを起動した際の見た目はMacOS9の頃と全く同じ。OS9の制約はそのまま引き継がれてしまうので、メモリ保護機能がなかったり、プリエンプティブ・マルチタスク機能がなかったりとOSXの性能の恩恵を受けられない。さらに、Classic上のOS9がクラッシュするとClassicを再起動する必要があり、ハードウェアにアクセスするものなど、一部のアプリには互換性がないという制限もあった。IntelMacには含まれない。
エミュレータに似たシステム
- Rosetta - x86/x64のCPUを搭載したIntel Mac上で、それまでのPowerPC用ソフトウェアを動かすコード変換機構。Intel Mac用のv10.4.4から搭載されたがv10.7で廃止された。Classic環境や64ビットコードには対応しないほか、PowerPCとx86/x64のコードを同一のバイナリに混在させることもできなかった。初期のIntel Macは末期のPowerPC Macとの処理能力の差が少なく、アプリケーションによってはコード変換のオーバーヘッドによる速度低下が目立った。
- Rosetta 2 - Appleシリコン上でIntel Mac用ソフトウェアを動かすコード変換機構。x64命令をARM64命令に変換するだけなのでClassic環境のような仮想環境とは異なる。Xcode12でビルドをやり直すことでどちらにも対応するUniversal Binary化することができる。
- Wine - Linux上でWindowsのアプリケーションを動作できるようにしたもの。仮想環境ではないためエミュレータにはあたらない。