一般的な意味
教会に一画に備え付けられている、赦しの秘跡(痛悔)のための個室。
カーテンに覆われて顔が見えなくなる方の席が神父が座る席とされる。
隣の席は、自身の犯した罪を告白し懺悔するための信者の席とされる。
神父が座る席、小部屋からは小さな扉が備え付けられていて、そこから信者と会話し懺悔を聞く。
神父はここで知った様々な秘密を口外してはならないとされるが、厳密に守られている訳では無い。
(犯罪行為の告白があれば自首を勧めるが、これに従わない場合は警察に通報される。
教会の利益や不利益に繋がるような秘密であれば教会のために活用されることもあるし、
自身の個人的な欲望を叶えるために悪用する神父も当然存在する)
なお、プロテスタントの教会には存在しない。
神父では無く、神に直接懺悔すべきという考えだからである。
『岸辺露伴は動かない』のエピソード
本編で仗助にボコボコにされ、しばらく漫画を休載していた岸辺露伴は漫画の取材の為にイタリアのヴェネツィアに旅行していた。
某教会の懺悔室に興味があった露伴は懺悔室に入るが、間違えて神父の方の部屋に入ってしまい、直後、隣の部屋に男性(以下語り手)が懺悔をしにやって来る。
作品にリアリティを追求する露伴は、これを貴重な実体験を得るチャンスだと思い、神父に成り済まして語り手の懺悔を聞き始めた。
語り手は昔、食品市場で下働きとして働いていた。
残業していたある日、東洋人と思われる浮浪者が現れる。浮浪者は5日間何も食べてないらしく、食べ物を恵んで欲しいと語り手に懇願してきた。
これに対して語り手は、どうせ今まで怠惰な日々を過ごしてきたんだろうな…と浮浪者に怒りを覚え、自分が残業として運んでいた「重いトウモロコシの袋(商品)を全て運び終えること」を条件に出す。
「食べた後で働く」という浮浪者の言い分も認めず、パワハラ同然な扱いで容赦なく働かせた。
しかし、空腹でやつれていた浮浪者はまともに仕事が進まず、トウモロコシの袋の重さに耐えられず、下敷きになってしまった。
語り手はそれを見て、わざと倒れて誤魔化しているんだろと罵っていたが、倒れているはずの浮浪者が、何故か自分の足元から怒り狂った恐ろしい形相で現れ、「この報いはッ!償わせてやるッ!必ずッ!おまえが『幸せの絶頂』になった時に必ずおまえを迎えに戻って来るぜッ!」と吐き捨ててると、驚きのけ反った語り手の前から姿を消した。
直後、同僚達が倒れている浮浪者の元に駆け寄っていた。浮浪者が死亡したことを聞いた語り手は青ざめる。
その日を境に、語り手に幸運が起きた。遠い親戚から遺産が入り、サッカーのくじに当選、自分の考えたトウモロコシの菓子やコーンフレークが大ヒット。ついにはスーパーモデルと結婚し娘を授かった。
そんな幸運の連続から裕福な生活を送る語り手だったが、亡き浮浪者のことをずっと引きずっており、「幸せな絶頂の時に迎えに来る」という言葉に不安を抱えていた。
ある日、執事を引き連れて娘と散歩していた際、ポップコーンを投げて口でキャッチしようとする娘の姿に語り手は『幸せの絶頂』を感じてしまう……。
『岸辺露伴は動かない』 ネタバレ注意
原作・OVAを見た後で閲覧することを推奨します。
『幸せの絶頂』を感じた次の瞬間、突如娘が豹変し、自分の首を絞めつけてきた。
何が起きたのか困惑する語り手だったが、娘の開いた口の中の舌にある人物の顔が現れる。それはあの浮浪者の顔だった。
語り手はすぐに状況を理解した。幽霊となっていた浮浪者が娘に取り憑いたのだ。
娘の豹変に心配して声をかけた執事を殴って気絶させると、浮浪者は語り手に全てを話す「前述の語り手の幸運の数々が、実は全て浮浪者によるものだったこと。そして今、語り手が「幸せな絶頂」になったことで、宣言通り迎え(復讐)に来たことを……」
語り手が「逆恨みはやめてくれ」と叫ぶと、浮浪者は逆恨みと思われたまま殺すのは後味が悪いと考え、本当に逆恨みなのかどうか決めるため、あるゲームを提案する。それは……
・浮浪者が合図を出し、それに合わせてポップコーンを目の前にある外灯のランプより高く投げ、口でキャッチする。
・3回連続でキャッチすること。一度でも失敗したらアウト。
・勿論、合図に遅れたり、投げたポップコーンがランプより低かったらアウト。
・3回キャッチに成功すれば、浮浪者は逆恨みだったとして復讐を諦める。
…という運要素が強く、極めて難易度の高いゲームだった。
もはやクリアしなければ助からない語り手はゲームに挑戦せざるを得なかった。
1回目…陽光の眩しさにポップコーンを見失い、危うく落としかけたが何とかキャッチ。直後に語り手は眩しいから場所を変えたいと頼むも、運命の一部として扱われ、あえなく拒否される。
2回目…太陽が雲に隠れて安心するも、代わりに鳩が現れる。投げたポップコーンを取られそうになるも、咄嗟に袋のポップコーンをばら蒔いて回避し、無事キャッチ。しかし、ばら蒔いたことが裏目に出て鳩が群がってしまう。もう同じ手は使えない。
ラスト3回目…ポップコーンを火で燃やし、鳩を寄せ付ないようにし、火傷覚悟でキャッチしようとするが……雲に隠れていた太陽が顔を出す。眩しい上、ポップコーンが燃えているため光と同化して見えなくなり………語り手の肩に落ちて失敗する。
次の瞬間…語り手は浮浪者に首を切断され死亡。
こうして、逆恨みでないと確信した浮浪者は復讐を達成し、取り憑いていた娘から離れ、成仏していった。
…以上の語り手の話を全て聞いた露伴。だが、同時に疑問を抱いた。
語り手は浮浪者に殺されたはずなのに、今ここで懺悔しているのは一体どういうことなのか?
これに対し、語り手はそのことで懺悔に来たと言う………。
『岸辺露伴は動かない』更なるネタバレ
原作・OVAを見た後で閲覧することを推奨します。
懺悔室の外から何やら声が聞こえ、露伴がこっそり覗くと、そこには語り手の姿である胴体と首が分かれた男がいた。語り手と、その男の口からある事実が明かされる。
男の正体は、主人である語り手の元で働いていた執事。
浮浪者が娘に取り憑く以前。浮浪者に復讐されると不安になっていた語り手は、対策として、執事に金を積み、自分そっくりの顔に整形させた。そして自分自身は執事の顔に整形することで、語り手と執事は入れ替わった。
つまり浮浪者が殺したのは語り手ではなく執事だったったということ。
そして前述の殴られて気絶した執事こそ語り手本人であり、執事を身代わりにして助かったのだ。
なお、この真相の伏線は実は作中に貼られており、読み返すと面白い(偽語り手がお嬢様と呼んでいる、偽語り手が浮浪者に対して一貫して違うんだと否定したり、何で俺がこんな目にと嘆いているなど)。
自分が助かるために無関係な執事を犠牲にした罪の意識から、こうして懺悔に来た語り手であったが……
被害者である胴体と首が分かれた男こと「執事の幽霊」は当然許すはずがなかった。
さらに、一度成仏した浮浪者も偽語り手の魂に違和感を感じ見抜いたのか偽語り手から直接聞いたのかは不明だが、本物が整形で入れ替わり生き伸びていることを知って戻ってきており、浮浪者と執事は結託して、共に復讐することを決意する。執事は「だんな様の娘が『幸せの絶頂』になった時にあんたを迎えに来る」と予告したが、それに対し浮浪者は執事の提案を拒否、そして整形による身代わりにもう騙されることがないよう語り手を四六時中監視するつもりでいる。この際、浮浪者はクソ野郎と前以上にキツい言葉で語り手を罵っている。
この様子を見て露伴は、語り手が悪人であると思いつつも、悪霊に取り憑かれながらも生きようとする彼の姿勢に尊敬していた。機会があれば取材に行ってみたいとのこと。
関連タグ
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