船海宮義経
せんかいぐうよしつね
「卍丸よ!!私は千年前にこの幻夢城をたたいた火の勇者義経が霊じゃ」
「急げ!!卍丸!!聖剣船海宮義経で暗黒ランを切るのだ!!ヨミの成長を止めてしまえっ!!」
概要
CV:山田栄子
『天外魔境Ⅱ』に登場するキャラクター。概要は当時発売された最初の本『天外魔境II 卍MARU 公式ガイドブック』を元に記述してあるが、性別についての詳細は後述の【性別について】を参照のこと。
千年前に戦った火の一族の勇者。人魚族出身で『水の貴公子』の異名を持つ。人魚族でありながら、他の人魚族とは違い、人間のような二本足をしている。男装の麗人であり、彼(彼女)は正真正銘の女性である。何故男装する必要があったのかは不明だが、恐らく人魚族の血を隠す必要があったのではないかと思われる。
一人称は『私』で、卍丸のことを『おぬし』と呼び、語尾に『~じゃ』とつけるなど、古風な言葉遣いをする少女。大亀『弁慶』に乗り、安芸の海を駆け巡り、根の一族と戦いを繰り広げて名を馳せた。安芸の国にある人魚村『船海宮』は、義経が自分の聖剣を打った場所でもある。
千年前の戦いでは、幻夢城を攻め落とし、さらに女彦、静、松虫と4人がかりで砂神城を攻め落としたが、ヨミの呪いで蜘蛛の姿に変えられてしまった。その後、砂神城を攻め落として因幡の国を守った功績を称えられて、因幡の国で四神として祀られた。
現在は魂となり『聖剣・船海宮義経』に宿っていて、幻夢城の将軍はまぐり姫を倒すと入手できる。
入手後、卍丸に『奥義・義経斬』を授ける。『義経斬』は紅丸が授ける『紅丸斬』と似た奥義で、敵1グループに対して通常攻撃ダメージを与えるが、敵に与えるダメージが敵の数だけ分散する『紅丸斬』と違って、『義経斬』は命中率が敵の数に応じて減少する。つまり攻撃対象が敵1体なら命中率100%だが、攻撃対象が敵2体なら命中率は50%に下がる。義経曰く「おぬしの心に乱れがあれば、当たらぬとこころえよ!」とのこと。
安芸の国では、弁慶に乗った義経が海を駆け巡って根の一族と戦いを繰り広げていたことが言い伝えられている。
また、船海宮では、義経がこの村出身だったためか、鶴姫(船海宮に住む人魚族の女王)は卍丸一行を歓迎してくれて、極楽太郎の最強装備がしまわれている蔵(吉備の倉敷村にある蔵)の鍵を渡してくれるなど、好意的に接してくれる。
エンディングではマリの力によって紅丸たちと一緒に生き返り、卍丸の背後のモブたちにまじって登場している。
「キミももし強くなったら、是非ボクたちと共に戦ってくれないか!?火の一族は一人でも多くの仲間を必要としている!渡した絵札が少しでもキミの成長の助けになることを祈るよ……じゃあね!」
他のキャラと同じく、外見のデザインが大幅に変わっている。また今作では義経の境遇や紅丸との関係について詳しく設定されている。
火の一族と人魚族の間に生まれたハーフ。人間の姿をしているが、火の一族の父親譲りの気性の激しさと、人魚族の母親譲りの長寿の特徴を受けついでいる。
火の一族と人魚族の混血者であるため、根の一族の参謀・ジャカアシ教授から狙われていて(ジャカアシ教授曰く「解剖したい」とのこと)、義経の両親も彼の配下によって実験材料として連れ去らわれた。
火と根の戦いにはまったく興味を持つことなく暮らしていたが、義経が住む安芸の村を訪れた紅丸と出会い、行動を共にするようになる。紅丸を兄と慕い、彼から礼儀作法から戦術など数多くのことを学び、戦士として成長する。幼い頃から水に親しんでいたこともあり「水の貴公子」と呼ばれ、戦闘では得意の『義経斬』で根の一族と戦う。
一人称は『ボク』で、紅丸のことは『紅丸さん』と呼び、ボーイッシュな言葉遣いをする。美女ぞろいの人魚族の血を引いているだけあり、かなりの美人で、火の都で行われた美女コンテストに参加したときは優勝するほどである。
キャラクター紹介では「彼」と形容されていて、京スポの記事で『女装して美女コンテストに出た』と書かれていたが、天外魔境シリーズの絵師辻野芳輝氏は『当初、少年のつもりで描いた。後々女性だという話を聞いて『JIPANG7』のときは男の子っぽい女性で描き直した。』と動画とツイッターでコメントしていて、性別は女性であることが明かされている。「彼」と形容されているのは旧設定の「男装の麗人」設定(素性を隠すために男と偽っていた設定)が影響していたと推測される。京スポ059号で「悪ふざけで女装して(美女コンテストに)参加したそうなのだが……」と書かれていたが、性別を隠すための男装をしていた(世間には男と思われていた)ならこう書かれるのは当然である。
また、大亀・弁慶とは仲良し友達。義経が紅丸と旅立ってしまったために、弁慶が義経と会えなくて寂しがっていることが京スポのニュースで取り上げられていた。
幻夢城でジャカアシ教授と対峙し、両親を助けることもままならなかった悔しさに苛まされるが、火の勇者として尊敬する紅丸が妹を根の一族に拉致されている中、冷静に軍勢を率いていることを知り、まずこの戦いを終わらすのが使命だと肝に銘じる。その後、砂神城攻めに同行したことがきっかけで、ヨミの呪いを受けるようになり、戦いが終焉にさしかかっている最中、蜘蛛の姿に変えられてしまった。
性別について
このキャラクターは女性設定だが、攻略本の用語集の誤読引用で男性だと解釈されて以降、女性設定派と男性設定派で性別論争が起こっている複雑な問題を抱えたキャラクターである。
PCエンジン版発売後、1992年5月に刊行された『天外魔境II 卍MARU 公式ガイドブック』の「千年前の七人の勇者」のプロフィールでは、義経について『正真正銘の女性』『男装の麗人(女の子)』『(男装していたのは)人魚族の血を隠す必要があった』と書かれていた。そのため、当時、義経が男装の麗人設定(女性設定)でたくさんの二次創作や同人誌が作られていた。
しかし、2000年3月に刊行された『俺の屍を越えてゆけ公式指南書』で桝田省治氏(天外魔境Ⅱの監督と脚本を担当)が
―― ここからは『俺屍』主要キャラクターのことを、桝田さんに直接解説していだたきます。ただし、先にお断りしておきたいのは、桝田さんには前科があるということです。
桝田 実は昔、『天外Ⅱ』の本でキャラの設定を書いたんだけど、ホントにネタがなくなって、「この人は男の格好をしているけど、実は女で……」ってデマカセを書いちゃいました。すいません。
―― ということです。ここでは、桝田さんのそんな「後付け」も含めて、おおらかな公式見解とさせていただきます。
桝田 設定自体後からつけたんだからなぁ。でも、つじつまが合ってるんだから、それで大丈夫だよ(笑)。
とコメントしていて、義経の男装の麗人設定はその場の思いつきでつけた後付け設定だったことが語られていた。
桝田氏は思いつきのデマカセ設定が結果的に上手くつじつまが合った例としてあげていただけなのだが、このコメントを誤読引用したライター(リメイク版天外魔境Ⅱの攻略本『天外魔境Ⅱ公式完全攻略絵巻』(2003年12月刊行)掲載の用語辞典『天辞苑』の編集者)が桝田氏がこの設定を否定した(義経は男性)だと解釈してしまい、義経は男性だと用語集に書かれてしまった。
PCエンジン版の「公式ガイドブック」には、義経は男装の麗人であると書かれているが、現在ではこの情報は否定されている。そもそもこの設定を書き込んだのは、制作者である桝田省治氏自身なのだが、じつはこれはネタがなくなってしまった思いつきであるという。後年氏はインタビューの中でこの情報が嘘であると認めており、現在では義経は男であるということになっている。
ライターが自身の解釈を正当化するために、桝田氏本人が嘘だと認めてなく否定もしてないのに、『後年氏はインタビューの中でこの情報が嘘であると認めており、現在では義経は男であるということになっている。』と書いたことで、これを読んだ大勢のファンが義経は男性設定だと誤解して、長い性別論争が始まった。
桝田氏のコメントを読めば、後付けやつじつまが合ってうまくいった例としてあげられていただけで、嘘もついてなく否定もしてないのは一目瞭然である。
だが、該当コメントが載っている本のタイトルが書かれてなかったため(コメントを読んで事実確認ができなかった)、天辞苑だけを信じたファンによって、桝田氏が嘘設定を書いたと非難されることになってしまった。
桝田氏は他の公式本に載せた設定についてもデマカセや嘘ではないかと疑われてしまったようで、2011年に刊行された『俺の屍を越えてゆけ 新説・公式指南書』に掲載の『再録!!桝田省治による世界観解説』で、嘘なんかついてないと主張していた。
これはオリジナル版『俺屍』に掲載されたものの再録となりますが、当時の桝田さんは、ご自身の過去のデマカセ歴を例に挙げ、ここで書いてあることがデマカセかもしれない可能性を匂わせていました。そこで今回、12年の時を経て、このページにデマカセがあるのかを桝田さんに問いただしたところ……。「僕は嘘なんかついてないよ? そもそも僕は自分ができると思ったこと、考えたことしか言わないしなぁ。だから僕の言葉は嘘に見えるけど嘘じゃないんだよ(笑)」とのことですので、皆様安心してお読みいただきますよう。
桝田氏がわざわざ義経の設定(女性設定)を嘘ではないとコメントしていることから、天辞苑の「後年氏はインタビューでこの情報が嘘であると認めており、現在では義経は男であるということになっている。」の部分は、「編集者の誤読に基づく間違った記述」であることが示されている。桝田氏は公式本に載るものでも自分が語る設定についてはこういう言い方で言っているのであって嘘はついてないと反論していた。
つまり『天外魔境Ⅱ』の義経の性別の件に関しては、桝田氏は『設定自体後からつけたものだが、つじつまが合ってるそれで大丈夫』と、最初はデマカセだったが結果的に人気がでてうまくいったキャラクター設定の例としてあげただけで、男装麗人設定の否定はしてなく、義経が男性だと書いてあるのは天辞苑だけである。
さらに天外魔境シリーズの絵師辻野芳輝氏は義経の性別について動画やツイッターで、『当初、少年のつもりで描いた。後々女性だという話を聞いて『JIPANG7』のときは男の子っぽい女性で描き直した。』と回答していて、『JIPANG7』の義経は女性(男性っぽいけど実は女性というキャラ)設定であることが語られていた。
しかし、天辞苑の記述のためにこのキャラクターが男性だと誤解している人も少なくない。
上述のこの動画で義経は女性だと語られていたが、こちらの動画では『物議を醸した性別は公式に「男」ということになった』とテロップで義経は男性だと説明していた。このテロップを作成したスタッフはウツボ姫の項目で『義経の恋人『百合若』を手にかける。』と義経を松虫と間違えて酷い説明をしていたことから、このキャラクターに詳しくないスタッフで天辞苑だけ読んで男性だと誤解したと思われる。
義経の性別把握の現状をまとめると、
桝田設定:男の格好をしているけど実は女
辻野設定:男の子っぽい女性
天辞苑設定:義経は男であるということになっている
動画のテロップ作成者の設定:公式に「男」ということになった
公式スタッフは女性、天辞苑の編集者や動画スタッフ(テロップ作成者)は男性と主張している状況である。
辻野氏が『どこかでこれ(義経)は女性だっていう話を聞いた』と話していたことから、公式スタッフは女性扱いなのだが、天辞苑だけ読んだ人は男性だと勘違いしている人もいて、公式動画で間違った設定を流されるなど大変不憫なキャラクターである。
二次創作では
義経は女性設定や男装の麗人設定で描かれた作品ばかりである。天外Ⅱの二次創作や同人誌が一番多く量産されていた当時に作られた作品は当然のことながら女性設定で作られ、それらの作品の影響があまりにも強かったためと思われる。今でも旧設定ともいえる女性設定や男装の麗人設定で描かれている。
現在も女性設定を支持するファンばかりだが、その場で思いついた設定でマイナーキャラを人気キャラへと押し上げて大勢のファンを魅了し、二次創作や同人誌をたくさん作らせたという手腕を見せた桝田氏はまさに神(天才)である。
補足
- 『天外魔境II 卍MARU 公式ガイドブック』では紅丸が7人の勇者のリーダー的存在と書かれているが、リメイク版特典の「覚醒之書」には、義経が千年前の火の勇者たちのリーダー格と書かれている。
- ある動画ではウツボ姫についての解説(菊五郎の先祖のカズラ姫がウツボ姫なのかという質問)のテロップで、『(ウツボ姫は)四天魔王の一人で、正体は食人植物。義経の恋人『百合若』を手にかける。』と義経の恋人が百合若だと説明されるという、公式からありえない誤認をされていた。後にその部分はボカシ処理されて誤魔化されているが、あまりにも酷い間違いであり、雑な説明もマイナーキャラゆえかもしれないが不憫である。
- 配信動画で、絹と義経の額の黄色い丸は辻野芳輝氏曰く「なんか付けちゃったね、誰に言われるでもなく(辻野の趣味)」で、タトゥー(ビンディ)みたいなアクセサリーで、インドのイメージや仏様っぽいイメージと解説していた。