概要
野生種 (ノヤク) と家畜種が存在し、野生種にもいくつかのタイプが存在する。
野生種はチベットや甘粛省、ネパール、インド北部などの標高3,000~6,000mの高地に棲み、体毛が長い。17世紀まではロシアにも生息していたとされる。ネパールでは絶滅したとされていたが、2014年に再発見され、記念としてお札のイラストにヤクが乗ることとなった。
外見は牛に似るが肩が隆起し、雌雄とも長いツノを有し、草や地衣類を主食とする。毛がなければオーロックスとかなり近い外見をしている。
体側から腹面にかけてと尾に黒茶色の非常に長い毛が生える。水を弾く長く粗い上毛と綿のような下毛のダブルコートになっており、季節による換毛はない。野生にも、体色以外にも2タイプ存在する。
第一胃での発酵温度が40℃に達する、赤血球が多く普通の牛の半分の大きさであるなど、高地の厳しい気象に適応した体の作りである。
野生のヤクは数千頭まで減少しており、中国では国家第一級の保護動物に指定されている。
体長:雄 280~340cm 雌 200~220cm
体高:雄 170~205cm(220cmという記載もある) 雌 150~160cm
体重:雄 800~1,200kg 雌 325~360kg
4,500年ほど前からチベット族により家畜化され、使役や乗用の他、肉、乳、毛、皮、骨、角、糞に至るまで無駄なく利用できる重要な資産であり、昔は結納にも用いられた。
野生の雄は狂暴だが、家畜のヤクの性質はおとなしく、白、黒、金、駁模様などさまざまな毛色がある。野生種にも、個体数は少ないが金白色の個体(亜種かどうかは不明)が存在する。
余談
- ヤクの語は正式にはオスのみを指し、チベットではメスの事を「ディ」と呼ぶ。
- アメリカバイソンはステップバイソンとヤクのハイブリッドの子孫であり、ヨーロッパバイソンはそのハイブリッドとオーロックスの更なるハイブリッドでもある(しかし、近年ではこれを否定する調査結果も存在する)。家畜のウシとの間にも交配が可能で、そうして生まれた子供は「ゾッキョ」と呼ばれる。
- 武田信玄の近習、小杉左近が徳川家康を「家康に過ぎたるものが二つあり、唐の頭に本多平八」と評したが、「唐の頭」とはヤクの尾毛でできた兜飾りの事。所謂南蛮渡来の品で、当時はとても高級な品であったとされる。そんな珍品を当時三河の一大名に過ぎなかった家康が兜の装飾品として使っていた事を賛辞、揶揄したのが上述の評とされる。