概要
阪急京都線向けに運用されていた特急形電車・2800系に代わる後継車両・モデルチェンジ車として、1975年から1978年にかけて8両編成8本が製造された(6350F~6357F)。制御方式は抵抗制御。
その後、茨木市駅、高槻市駅付近の高架工事に関連して、特急運用本数が1運用増加することになったため、界磁チョッパ制御方式の8両編成1本(6330F)が1984年に製造され、本系列は合計8両編成9本・72両で製造終了となった。
外観及び内装
外観
両開き2ドアという点は先代2800系と同一であるが、車端部のロングシートを廃し、客用扉を外側に寄せた外見が特徴。標識灯周りには銀色の飾り板を巻き、幌枠は8000系列にも似た上部まで銀の板が延ばされたデザイン。また、阪急で初めて「白鉢巻」と呼ばれる屋根肩のアイボリー塗装を採用し、ワンハンドルマスコンも京都線系では初採用した。
運転室が広くなり、運転室直後のロングシート部に小窓を配置できなくなったため阪急の「H」をかたどったエンブレムが配置された。しかし、新CI移行後、乗客からの要望を受けて1994年から1995年にかけてその位置には小窓が設置された。
当初、アイボリーの塗り分け位置は現在より20mmほど下であり、また前面表示器の枠はマルーン塗装のままだったが、前面表示器位置で途切れて見栄えが悪いという理由で現在の塗り分け位置に落ち着き、前面表示器枠上部にもアイボリーの塗装が施されるようになる。また、6330Fは前面表示器と塗装の干渉を避けるため7300系等と同一の位置まで前面表示器が下げられたが、結局他の6300系と同様の塗装となったことでアイボリー部の面積が拡大した。
内装
転換クロスシートということ以外には木目調の化粧版、ゴールデンオリーブの座席など、あまり他の阪急通勤車との違いは見られない。ただ、シートモケットは縞模様の段織となり、床には小石模様の敷物、広告枠も若干凝ったデザインになるなど、既存車との差別化は図られている。
機器類を5300系と同等(6330Fは7300系と同等)としたため、モーター点検蓋位置にくるクロスシートは取り外し可能。車端部クロスシートには補助いすが設けられており、ラッシュ時には手動(6330Fは自動)でロックをかける方式になっている。京都方先頭車の6450形にはカード式公衆電話が設けられていたが、携帯電話の台頭により現在は撤去されている。
運行開始後の変化
長年、京都線の特急運用・主役として活躍してきたが、転機となったのは国鉄民営化を受けてのJR西日本の新快速による攻勢であった。元より6300系登場以前の国鉄時代から京阪間では激しく競争関係にあり、国鉄の末期赤字時代でも例外的に新快速用に新型車両(117系)がまわされたほどであったが、民営化後翌年に221系が登場、高槻が終日停車駅になったことから、次第に阪急(を含めた他関西私鉄)は劣勢に立たされる。
阪急も京都線の特急の停車駅を増やしたり、ダイヤを度々改正して対抗していたが、それが京都線特急運用としての6300系にとって致命傷となった。2扉であることが駅での乗降に時間がかかるようになり、列車の遅延が目立つようになったからである(もっとも新快速も3扉ながら遅延は常習なのだが)。くわえて新製以来30年にわたる特急運用で、車体の老朽化も激しく、ついには後継の9300系が登場する(当然3ドア車)。
京都線には登場以来半世紀以上走り続ける2300系などが現存、6300系より古い3300系などが全車健在で、これまでの経緯からすれば、急行、普通用に格下げというところだったが、前述の老朽化が目立ち、改造してもコストに合わないという理由で廃車がスタート。2010年2月、35年にわたる京都線特急運用を一旦終えた。特殊な異端児であった最終増備車6330Fも2009年11月に廃車となっている。
定期特急引退後
3編成は4両編成に短縮してリニューアルし、阪急嵐山線運用に転用された。
2011年3月には1編成が6両編成に短縮して観光客向けの列車に改造され、快速特急「京とれいん」として再デビューした。
嵐山線用
阪急嵐山線、桂-嵐山間の普通列車に充当。登場時のクロスシートは9300系と同等のクロスシート(2+1列)と一部ではロングシートに改められている。常時在籍3編成中2~3編成が線内折り返し運用として運用されているが、検査時には一般車両で代走することもある。
京とれいん編成
6354Fを観光用に改造、2011年にデビューした。当初は嵐山線へ直通する快速特急に用いられていたがのちに行先を河原町に変更、京都本線の「快速特急A」(現在は消滅)として2時間に1往復、梅田駅~京都河原町駅間を3往復するダイヤで運行していた。特急の2分続行であるため速度はさほど出せないが、淡路駅~桂駅間ノンストップなど、かつての本線特急を思わせる走りを楽しむことができた。
2022年12月11日の最終運行日をもって定期運行を終え、2023年に除籍された。