曖昧さ回避⇒コーラル
「コーラルが絡むと死人が増える。過去から未来まで変わらない事実だ」
概要
辺境の開発惑星ルビコン3で発見・採掘される資源であり、本作品のキーマテリアル。
強力なエネルギー資源で有り、情報導体としての側面も持つ。
食料としても使用されており、「ミールワーム」というこれを食す虫(先述の食料の正体)を育てる餌にも成る。
その他、コーラルそれ自体が中毒性のある嗜好品としても使用されるらしく、作中の登場人物には中毒者もいる。
とりわけエネルギー資源としては、コーラルを動力とする兵器が大災害を経て完全放置で半世紀経ってもなお安定稼動している程で有り、かなりのポテンシャルを持った存在で有る事が示唆されている。
この様な多方面への応用が利く万能性から、人類文明の飛躍的な発展に寄与すると期待されたコーラルで有ったが、そうは問屋が卸さなかった。
アイビスの火
ACVI本編のストーリーの半世紀前に、コーラルが猛烈な炎と嵐を引き起こし、ルビコン3はおろか周辺の星系すら巻き込んで焼き尽くした「アイビスの火」という事件が発生した。
コーラルの特性とそれを取り巻く人間達の騒動によってその大災害は引き起こされ、以来問題と成ったルビコンとコーラルは惑星封鎖機構によって厳重に封鎖されていた。
さて、その発火現象によって万能物質コーラルは焼失したと思われていたが、最近に成ってその反応が微量ながら復活した事で、現在はルビコンに進駐した星外企業達がルビコンの何所かに眠っているであろうコーラルの採掘を巡り、惑星封鎖機構やルビコンの現地民によって構成されるルビコン解放戦線等と鎬を削る状況が続いている。
コーラルと強化人間手術
コーラルの特性の一つとして、「Cパルス」というものを用いる事で人間の知覚を増幅する事が出来るという。
おそらくはコーラルの情報導体としての機能を活用したものと考えられる。
このコーラル技術を用いて生み出されたのが強化人間達で有り、作中では第4世代強化人間(C4)である主人公のC4-621やレッドガンのG5イグアス、第1世代強化人間(C1)であるスッラ等が相当する。
この強化手術によってパイロット適性を向上させる事が出来るが、肝心の強化手術の内容は「開頭手術による脳深部コーラル管理デバイスの埋め込み」と「脳内へのコーラル注入」という非人道的なものである。
特に初期の世代は手術の段階で死人が出るのも当たり前だった模様。
また、運が悪いと脳内コーラルが焼き付いて感情希釈や記憶障害等の精神面に深い障害を負う事に成る。
これらコーラルを用いた強化手術は、後述する「アイビスの火」でコーラルが焼失して以降は非合法な闇医者のみが取り扱う過去の遺物となり、第7世代以降はコーラル代替技術を用いたものが一般的となった。
本格的にコーラル代替技術が確立したと思われる第8世代においては第4世代を含む旧世代強化人間を完全に無価値なものにした、とまで言われるものと成った。
また、最新の手術においては旧世代強化人間の弊害である脳内コーラルの焼き付きを中和する事が出来るようだ。
今作の登場人物である「エア」は、C4-621がコーラルの逆流事故(予兆なく、或いはなんらかの衝撃でコーラルの枯れ井戸からコーラルが大規模噴出が誘発される事故)に巻き込まれた後、621のみに聞こえる幻聴の様な形で語りかけてくるようになるが、コーラル汚染やコーラルそのものとの関係は不明。
電子機器やネットワークを介して依頼を持ってきたり、情報を収集・売買したりと確かに現実に干渉して行動している事から、主人公の脳内にしかいない存在ではない様だが…?
関連タグ
粒子の形を取る、兵器転用が可能、汚染を引き起こす等の点も共通している。
重大なネタバレ
ACVIのネタバレ注意、未プレイでの閲覧非推奨
「"コーラルよ、ルビコンと共にあれ"…この警句には続きがある…」
「"コーラルよ、ルビコンと共にあれ"、"コーラルよ、ルビコンの内にあれ"、"その賽は投げるべからず"…!」
「コーラルをルビコンの外に出してはならんのだ…!」
「コーラルは自己増殖する生体物質であり
その増殖速度は個体群密度の影響を受ける
例えば真空状態
これは密度を最大化する理想的環境の一つと言える
重要なのは密度効果による『相変異』の兆候を見逃さないことだ
それは人類に制御できない破綻となる」
「まずい
コーラル潮位が異常な速度で上昇している
この共振は相変異の…
計算しろ 猶予は?
47時間2分16秒
まだ間に合う
アイビスを出せ!」
コーラルとは一種の生体物質、言うなればエネルギー生命体であり、微弱ながら意思が存在する。
ルビコン調査技研などの報告から、コーラルには
・鳥や魚の群知能めいたものを持ち、一箇所に集まろうとする
・集まると自然的に増殖する
・共振によってコーラル潮位が上昇する
・個体群密度を最大化できる真空などであれば、指数関数的に増殖できる条件が整う
・密度効果によって相変異を起こし、制御不可の「破綻」が発生する
……といった驚異的な性質をもつことが判明している。
作中終盤においては大量の集積コーラルが大気圏外にまで持ち出されかけており、これを放置し増殖させ続ければ、やがて宇宙に蔓延する汚染となるだろう事が予測される為、ハンドラー・ウォルターは大気圏外へ広がる前にルビコン3のコーラルを焼き払わなければならないという結論に至った。
半世紀前に引き起こされた「アイビスの火」も、「潮位が急激に上がり相変異を起こしつつあったコーラルを危険視したナガイ教授が、アイビスシリーズを使って火をつけ、焼き払った」が真相であると考えられる。
「残り12分
やるべきことは全てやった
アイビスの火を見届けるのは私ひとりで良い」
「技研もルビコンも壊滅は避けられない
問題はそのあとだ
変異波形発生の兆候も見られる
観測を続けなければ」
コーラルと変異波形
また、コーラルは情報導体としての特性を持つ為か、有る程度のコーラルの集まりの中にある種の「自我」が生まれることがある。
それが『Cパルス変異波形』であり、エアこそがそのCパルス変異波形のひとつである。
本人曰く「実体を持たぬルビコニアン」とのこと。
Cパルス変異波形は現象としてはコーラルの中に生じた「波形」にすぎない為、その「声」は通常の人間には聞こえる事などない。
しかし、旧型の(コーラルを使用する)強化人間手術を受けた強化人間の中でもごく一部は、脳波とコーラルを同調させる形でCパルス変異波形と「交信」することが可能となる。
劇中でC4-621がウォッチポイント・デルタ襲撃の最中に突然エアと意思疎通が出来る様に成ったのも、ウォッチポイントの制御装置を破壊した時に生じたコーラル逆流現象に巻き込まれたからであると考えられる。
また、コーラルが情報導体としての性質に極めて優れているおかげか、Cパルス変異波形はネットワークに干渉し、データの取得や売買・ハッキングが行える他、コーラルによって駆動するAC等の兵器で有れば起動、操縦する事が出来る。
しかも充分なコーラル濃度を保った空間で有ればコーラル動力の機体でなくとも操作できる様に成る事が描写されている(とはいえそんなレベルの濃度を保つのであれば全宇宙にコーラルをばら撒くくらいの事をしなければほぼ起きえないが)
とはいえ実際にコクピットに乗っている訳では無い為、何らかの干渉を受けると機体との同期が解除されてしまう事も有るようだ。
エアはその成り立ちが成り立ちな為、ルビコンに漂うコーラルの事を同胞と認識しており、コーラルを動力として使用するC兵器に対して複雑な感情を抱いている他、アイビスの火の再来には強く反対している。
しかしながら、その精神の成り立ちは人間のそれとは全く違うにもかかわらず、エアは極めて人間らしい(それもかなり無垢な印象を受ける)情動を見せる。
それら疑問点とウォッチポイント襲撃での最初の会話から、致死量のコーラルを浴びた人間の意識がコーラルに散逸する形で取り込まれ、それが再構成されたものがCパルス変異波形なのでは?という考察も存在する。
コーラルと破綻
コーラルが指数関数的増殖を始めるには上述の通りやや複合的な条件が必要であり、それが自然発生的な現象であるかどうかは作中でも絶妙に明言されていない。
字面通り考えれば、コーラルの自己増殖によってやがて相変異に到達し、それが真空下であれば指数関数的増殖に至るという流れを想定でき、これを破綻と呼んでも差し支えない。
しかしながら実際には上記の通りに事が進んだ事は無く、例えばアイビスにおいてさえも、あの破綻が自然発生的なものでは無く、何かの意思によって推し進められた可能性を残している。
というのも、破綻の最終段階としてナガイ教授が記述を残した「共振」という現象なのだが、これがクセもので、この現象は作中で登場する際はいずれもコーラル単独ではなく外部からの介入によるものとして描かれている為である。
共振が作中で明確に登場した事例は二回ある。
一度目は集積コーラルに対してアイビスシリーズcel240が、二度目はバスキュラープラントに対して621+エアがそれぞれ行った。特に後者はコーラルリリースを引き起こし、上記に言及される指数関数的増殖を現実のものとした。
オールマインドはリリースの条件として「交信可能な人間と変異波形両者の組み合わせ」が必要だと明らかにしており、その理由は彼らをリリースのトリガーとする為だという。
そして某ルートにおける最終ミッションの開戦前、オールマインドは「企業が吸い上げた(バスキュラープラントの)コーラルが共振を始めています」と発言する。
したがって、これは 621とエアをトリガーとして、バスキュラープラントのコーラル達が彼らに対して共振を始めているという意味であろう。
実際この時、プラント付近が独特の色彩に発光しており、他ルートの状態とは明確に区別されている。これが共振している状態なのかもしれない。
またナガイ教授はアイビス前の共振に対して「これは相変異の…」という前置きをしており、相変異に繋がる訳ではない(もしくは一種の相変異だとしても、破綻に繋がるわけではない)共振も存在する事が窺える。
ところで作中においてアイビスシリーズcel240は第二形態に移行する際、共振によって周囲のコーラルからエネルギー供給を受けていると明言されており(エア談)、これが上記に該当するのかは不明だが、アイビスが技研製である以上、共振という現象もまた技研らの制御下に置かれていたと見るのが自然といえる。
いずれにせよ、共振とはコーラル単独で行われるのでは無く外部からの介入によってなされている為、かつてアイビスの火で無理やり止めるハメと成った最初の「共振による相変異」もまた、リリースを目指す何者かの意思によって引き起こされたものなのかもしれないという仮説が成立するのだ。
※ならば、その時トリガーとなったのは誰で有ったろうか。リリース計画を立ち上げたであろう第一助手その人か、あるいは主人公以外で変異波形と唯一交信していたあの人だったのではないかとする考察もある。
さて、上記を総括すると、いわゆる共振によるコーラル潮位の急上昇は自然発生的なものでは無く、最終的にはそれを引き起こそうとする意思が必要になる。
アイビスシリーズ等の措置を見るに、ナガイ教授は破綻を警戒して万全を期していたのであろうが、何者かの介入によって予期せぬ破綻が起こされかけてしまい、結果的に火を放ってそれを食い止めたという運びだったといえる。
ところでナガイ教授は、文書データ:ナガイ教授の口述筆記(1)にて「密度効果による相変異の兆候」というワードを用いる。
この相変異は、一見すれば「真空下で密度が最大化したことによる指数関数的増殖」に掛かっているものに見える。
しかしその場合は、確かに驚異的ではあるものの本来の性質が変化してるとまでは言えず、原義の相変異に比べるとやや違和感が残る。
なので別の仮説として、この相変異とは変異波形の誕生を指しているのではないか、とする考察もある。
たとえばナガイ教授は文書データ:ナガイ教授の口述筆記(5)にて、変異波形に対して「兆候が見られる」という言い方をしており、先の口述筆記(1)の記述とリンクする。
実際、変異波形は既存のコーラルとはその性質を全く異にしており、変異という言葉が指すには申し分ない存在である。
サンプルがあまりにも少ないので推して量るしかないが、たとえば変異波形の誕生に一定以上の密度を持った集積されたコーラルが必要な可能性は、変異波形エアの成り立ちからも十分あり得る。
そして何より、変異波形こそリリース並びに破綻に急接近するトリガーとなりうる存在である以上、ナガイ教授が破綻を防ぐ為の最重要監視項目として変異波形を挙げるのもまた理にかなっている。
ナガイの発言を整理すると、コーラルが集積する事による危険性として彼が危惧していたのは、指数関数的増殖の特性ではなく、変異波形というイレギュラーの誕生によって想定される共振現象であり、それこそが「制御できない」事であった為ではないだろうか。
その一つの証拠として、ナガイ教授から思想を継承したウォルターは変異波形エアを確認した際に彼女を「火種」と呼んでいた事も挙げられる。
とはいえ、指数関数的増殖特性を解き放ってやろうとするリリースなるものは、元々技研の人間が考案したものであり、変異波形たるエアもセリアもその事を知らない様であった。
オールマインドの発言からも推察できる様にそれらは変異波形単独で行われるものでは無く、真の火種はリリースに突き進む人間の意思であり、かつてのアイビスも、今回のリリースも、そうしたイレギュラー達がすべての引き金を引いたともいえる。
(そういえばウォッチポイントも急激なコーラル上昇を経験しているが、あれもまた変異波形エアと、交信可能な強化人間c4-621の接近を引き金とした「共振」によって引き起こされたのではないか、という意見もある。
ならばあの出来事は、その後描かれることに成るリリースの伏線であり、あるいはアイビスの真相に関するヒントなのかもしれない)
コーラルとルビコン
コーラルは、古くはエンゲブレト坑道の存在、あるいは『文書データ:ドルマヤンの随想録(1)』における「この痩せた大地は しかし内より恵みをもたらし…」といった記述、ないし一般的にも地下支脈とそこから湧出する『井戸』という言葉で示される通り、基本的には採掘を要する地下資源である。
さらに『映像記録:枯れゆく井戸』等を筆頭に、作中時点でルビコンの地表におけるコーラル湧出量は減少の一途を辿っていることが窺える。
ウォルターはBAWS第二工廠の井戸を「放っておけば枯れてゆく」と発言しており、コーラル自体はいかなる条件下においても無制限に増殖するわけではない事が示唆されている。
コーラルがいつ頃から存在していたかは不明だが、理論上は驚異的な増殖能を秘めていながらも、実際には地表にすらほとんど顔を出せてこなかった事が確認できる。
これに関する明確な理由は本編で語られないが、コーラル増殖の諸条件と照らし合わせてみれば、大気や地質といった物理的な障壁が安定化の要因だったと言えるだろう。
またルビコンにはミールワームといったコーラルを消費する在来生物種が生息する為、ルビコンにおけるコーラルは、本来生態系の一部に過ぎず、増殖と減少の均衡が保たれていた可能性が高いとする意見もある。
ところでコーラル資源が以前より採れなくなったものの、例外的に増殖し続けるエリアが存在する。
ルビコン技研都市跡に眠る「集積コーラル」と呼ばれる場所にて、コーラル潮位が上昇する等の順調な増殖が観測されていたのだ。
この地はかつて、技研が作り上げた巨大コーラル吸上装置『バスキュラープラント』が稼働していた歴史を持ち、ウォルターが目指す「大量のコーラルが眠る場所」でもあった。
技研とコーラルの関係については、ルビコニアンが『映像記録:ルビコニアンの糾弾』において、
アイビスの火より以前
コーラルは尽きることはなかったのだという
それを技研の罪人たちが焼き払った
倒錯した衒学者どもがルビコンの恵みを弄び 挙句手に負えず焼き払ったのだ
との見解を示している。
コーラルの増殖がもたらす災害の痕跡は技研の周辺以外で確認出来ない事、またアイビスの火においても作中での出来事においても、指数関数的増殖はいずれも技研が作り上げた『バスキュラープラント』を中心に発生している事から、技研によるこの特殊な「集積」がコーラルの特性に爆発的なきっかけを与えてしまい、結果的に制御不能に陥らせてしまったのではないか?という可能性も推察できる。
その場合、罪人という言葉は二重の意味を持つだろう。
かつての技研で、コーラル研究が次第に狂気に取り憑かれ暴走していた様子が、当時を知るウォルターやカーラの言葉、文書データ等からも垣間覗く事が出来る。
ルビコニアンの言葉に倣うなら、安定的でいられたはずのコーラルの運用は技研の手、あるいは人間の欲望によって取り返しのつかない暴走を招いてしまい、今日に至るまでの負債を遺してしまったと言えるのかもしれない。