人物
種族:トールマン(人間)
本名:ファリン・トーデン
年齢:23歳
CV:早見沙織
パーティーリーダーであるライオスの妹で、パーティメンバーでもあった。
茶髪で瞳は琥珀色だが視力が悪いため目を細めていることが多い。兄に似て体格が良く、身長はメンバーではライオスとマルシルの中間。
職業は魔術師で、防御魔法や治癒術、除霊術などプリースト系の魔法に優れる。死霊に対してさえ直接攻撃を良しとせず、慈愛を以て接するという信念を持っている。チルチャック曰く「霊の扱いがうまかった」。
その才能は天性のもので、魔法学校始まって以来の才女と呼ばれたマルシルをして「本当にすごかった」と言わしめる技量の持ち主。
ただし、天才肌にはありがちな感覚派で、魔法の組み立て方を理論立てて説明するのは苦手。
ライオスは彼女から回復魔法を習おうとしたことがあったが、その教え方は
「そしたらなんか良い感じのトコで ダッとやってドーン!!」
というものだったので、よくわからなかったとぼやかれている。
また最終話のおまけ漫画では(相手が手負いかつ不意打ちだった、ファリン自身が1年の間に強くなった、或いは後述の魔物化の影響などの可能性もあるが)、迷宮でも下層側に出現するコカトリスをメイスを振り回し倒した場面もある。
来歴
幼い頃から兄のライオスと野を駆け遊んでいた。そのおかげか魔物やダンジョンへの抵抗感が薄く、魔物を一方的に排除する事を良しとしていない。自然の法則や精霊の性質、扱い方を、理屈ではなく肌で感じ取っている。
村にいた頃から霊術の才能に優れていたがそれ故にファリンは周囲から疎外され、そうした村人の排他的で狭量な態度と妹を庇いもしない両親に反発を覚えたライオスは、軍学校に行くという名目で村を出ていってしまう。もっとも、ファリン自身は精神が丈夫なこともあってあまり気にしていなかったようだが、この経験はライオスの人間観に影を落とすことになった。
兄が村を出てから1年後、兄の勧め通り魔法学校に入学。故郷の田舎とは異なる生活になかなか馴染めず、友人もなく、いつも泥だらけの劣等生と見做されていた。
実は、泥だらけなのは学校近くの天然のダンジョンでサボっていたためであった。やがて”ダンジョンの生態系”を実地で学び取ったファリンは、授業で誰もが認める才女マルシルを上回る成果を発揮。これがマルシルとの親睦を深めるきっかけとなった。
その後、軍を脱走したライオスが顔見せに来た際に学校を抜け出し、卒業をかなぐり捨ててライオスと一緒に旅に出てしまう。そして本作の舞台となるダンジョンのある「島」へ向かう。そこで金剥ぎ(ダンジョンの建物に塗布された金箔を剥ぐ職業)の一団に参加(3年前)し、冒険者としての経験を積んだのち、ライオスとともに新しいパーティを立ち上げた。
その確かな実力と浮き世離れした二人の人柄から、冒険者達の間でも一目置かれる「トーデン兄妹」として名が知れるようになった。
作中での活躍(ネタバレ注意)
物語冒頭、パーティとレッドドラゴンとの戦いにおいて、全滅の危機に陥った皆を生還させるために自ら囮となる。地上への帰還魔法には成功するものの、自らはレッドドラゴンに喰われてしまった。
しかし、レッドドラゴンは長い休眠期の間は食べたものの消化が進まないといわれており、かつこのダンジョンは一種の呪いの支配下にあり、魂が体から離れにくくなっているため、遺体があれば蘇生可能という希望があった。完全に消化される前に彼女の遺体をドラゴンから取り出し、蘇生術を施すためにライオス一行はダンジョンへと戻っていく。
ライオスたちが苦労の末にレッドドラゴンを倒した時には、すでに彼女は骨だけとなっていたものの、ドラゴンの血肉を素材に使うことで辛うじて蘇生に成功、感動の再会を果たした。その直後、センシが誤って爆発事故を引き起こしかけたのを見て、詠唱もなしに強力な防御魔法を発動するなど、異常な魔力の高まりに自身でも驚く。
ドラゴンの肉を使った料理には大喜びで舌鼓を打ち、その他の魔物食の話にも目を輝かせて聞き入っていた。ケン助の正体を見せられた時も、その第一声は「かわいい」であり、「有肺類……!?」と興味津々の反応を見せた。エクソシストとしての霊感も健在で、廃屋にいた少女の霊にあいさつし、宿泊の許可をもらっている。
しかし、蘇生に使われたレッドドラゴンには狂乱の魔術師ことシスルによる支配の術が施されており、その影響から彼女自身が魔術師の支配下に置かれ、精神をレッドドラゴンのものに上書きされたうえ、魔物の巨躯の上に彼女の上半身がついた(キメラ)の姿にされてしまった。
それからはデルガルを探す目的で動くようになり、ダンジョン深部へやってきたライオス・カブルー・シュローの一団と戦闘。巨躯でありながら意外なほどの軽やかさで攻撃すると同時に魔術も操り、7人の死者と1人の重体者を出した。
その後はシスルに寄り添って行動していたが、キメラの巨躯に対して食物を摂取できるのはファリンの口だけであるため、思うように食事がとれず飢えているはずと推理したライオスにより、大量のカレーライスとビールにつられたところを仕留められる。
ライオスはファリンを呪縛から解き放つため、レッドドラゴン部分を人海戦術で食べ尽くそうと画策するのだが……。
関係性
- ライオス
実の兄。ドラゴンに敗北し地上で目覚め、ファリンがいないことを伝えられると「今すぐ助けに行く」と即決、協力を申し出たメンバーの装備を売って資金とし、一人でダンジョンに潜ることを提案した。
竜の逆鱗を突くためなら自らの脚を犠牲にできるし、蘇生のために禁忌である黒魔術が必要となった時も迷わず決断。蘇生した妹を狂乱の魔術師に連れ去られると満身創痍のまま動き出そうとするなど、妹への思いは強い。
キメラと化し、次々にパーティーを殺害する妹に対しては「代われるものなら俺が代わってやりたかった」と剣を抜こうとするが――
幼少期のファリンは兄を「兄ちゃん」と呼びくっついて一緒に行動していた(成長してからは「兄さん」)。どんな相手とも紳士的に接する彼が、唯一砕けた口調で喋り、指図する相手はファリンだけ。ファリンを村に置き去りにした形となったことを悔いており、マルシルと出会うまで一人で食事をとっていただろうファリンの姿を思い胸を痛めるなど、心優しい兄である。
「ファリンがいたら今頃こんなおいしい物は食べられなかったろうな」と発言してしまったのは、口下手な彼らしいご愛敬。
実力は高い、兄妹・仲間想いな性格、意図してではないが肝心なことを遅れて話す、魔物食に忌避感が無く動く鎧を食べたいと言い出す、魔物に対し興味を示し(『迷宮グルメガイド』も幼少期に兄に読ませてほしいとせがんでいた)、復活した際に残ってしまった赤竜成分を「すごくいい」と言い出すなど、総じて言えば下記にもあるが似たもの兄妹である。
- マルシル
魔術学校での精霊の繁殖実験において、ほぼ状態を維持して「上出来」と褒められたのに対し、ファリンは大繁殖させてしまい、マルシルにショックを与える。
実はファリンの成功の原因は「精霊がいっぱいいる場所」(=天然のダンジョン)を見つけて参考にしたことにあり、それはバッタを見つけるとはしゃいでとっ捕まえ、キイチゴを見つけると大喜びで即食べるという、旺盛な好奇心の産物であった。やはり兄妹なだけあって、魔物マニアに通じる性癖があるようである。
しかし物事の一面のみにとらわれず、生態系の循環を俯瞰的に見ることができるファリンの視線は、ダンジョンの魔力を利用することだけしか考えず、魔物とみれば他への被害を考えずに焼き払おうとしたマルシルに、ダンジョニウムの何たるかを悟らせた。
ライオス同様ファリンのことは強く意識していて、白骨死体の状態から蘇生するために“専門”の古代魔術(黒魔術)を使う。死んだドラゴンの肉を使うことを提案したのも彼女。
- シュロー
ある日の野営中、並みの女性なら気味悪がるであろう芋虫を、まるで宝石か何かのようにうっとりと愛でているファリンの横顔を見て「一発で恋に落ちた」。後にシュローは彼女の兄であるライオスに対し「あれほど魅力的な女性は他にいない」と評している。
ファリンへの想いを募らせた挙句、食事の約束もそこそこ(空気を読まない兄の邪魔もあって)にプロポーズしたが、話が急すぎたため考え中ということで保留され、返事を待っていた。
彼もまた、ダンジョンから生還するとファリンを助けるために「身内」のニンジャと共にダンジョンに潜っていた。
ファリンは夢魔(ナイトメア)に襲われたシュローの心の傷を守り、助けたことがある。
- レッドドラゴン
ファリンを喰った魔物にして物語のキーパーソン(ドラゴン?)。物語序盤はこのレッドドラゴンを倒してファリンの遺骸を回収し蘇生させることがライオス一行の最大目的であった。激闘の末に何とか倒しその血肉でファリンは蘇生されたものの、その魂がファリンと混ざり合ったことでファリンは狂乱の魔術師の支配下に収まってしまった。そして自分の意のままになるキメラを欲した魔術師によって残りのドラゴンの血肉と合体させられ、ファリンの体にドラゴンの体躯が融合した姿へと変貌した。ちなみにその姿を初めて見たライオスは「すごくかっこいい」と衝撃を受けている。このキメラは後に「ファリゴン(ファリン+ドラゴン)」と名付けられた。