以下、原作ネタバレ注意
マルシル え?
ライオス なんだあれ、すごくかっこいい…。
概要
物語冒頭でファリンが炎竜(レッドドラゴン)に食われ、救出のためなんとか竜を倒したライオス一行。
だがファリンは消化され骨だけの状態になっていたため、マルシルが研究している古代魔術により竜の血肉から肉体を形成し魂を呼び戻すことで蘇生に成功した。
だが当のレッドドラゴンは、「狂乱の魔術師」ことシスルの使い魔として、本来ヒトの魂のみを縛り保持する"迷宮の呪い"の適用内にあった特殊な個体であった。
結果その血肉を使って蘇生した彼女の肉体には、レッドドラゴンの魂までもが残留しており、故に施していた支配の術まで引き継いでしまっていた。
これによってファリンもろとも魔術師の支配下に置かれ、一行が滞在していた迷宮内の民家を脱走。精神をレッドドラゴンのものに上書きされたうえ、元のレッドドラゴンの死骸と融合し、魔物の巨躯と彼女の肉体が生えたキメラの姿にされてしまった。
外見はレッドドラゴンの首からファリンの上半身が生えたケンタウロスのような体型。元は無かった要素として竜の背に翼が生え、竜の前半身と人の上半身は白い羽毛に覆われている。
肉体も元のサイズから幾分小さくなってはいるもののその膂力は健在で、ファリンの脳が組み込まれたことにより知能も高く、油断を誘うために言葉を発する上、彼女の魔術も使いこなす。
ファリン自身の自我はなく意識の主導権はレッドドラゴンにあり、主であるシスルの命令に従い迷宮に入り込んだ冒険者を襲う。一方、シスルに食事を分けようとしたり、カレーライスに誘引される、食器を使って飯を食おうとするなど、彼女の記憶が行動に影響を与えていると思われる描写も多い。
とはいえ無理な合成改造ゆえの欠陥も多く、火を吐く能力は失い、翼も飛行能力が低下し主に落下に制動をかける用途に使われる(→10巻:モンスターよもやま話10)。
加えて竜の巨体に対し食物の摂取を行うのはファリンの口であることと、生の動物の捕食はできず、食事も満足な量が食べられず常に飢えている、加えて迷宮上層階などの魔力の薄い場所では生きられない、などの弱点もある。
本編での動向
誕生(?)後は「デルガルを探す」というシスルの目的のもと動くようになり、地下第5階層でハーピーの群れを伴ってライオス、カブルー、シュローの3パーティーを襲撃。(→第37話)
巨躯でありながら意外なほどの軽やかさで攻撃すると同時に魔術も操り、6人の死者と1人の重体者を出すもリンシャの魔術とカブルーの急所を狙った連撃により手傷を負い退却。
レッドドラゴンがファリゴンとして復活する際に消費した血肉、ライオスたちが食事として食べた分の肉はそのままだったことから、「他の生物に食べられ消化された肉体は蘇生できない」という結論に至り、彼女をファリンとして蘇生できるよう竜の部分を食いつくす計画が立てられる。
地下1階での襲撃に失敗したシスル救出のため再登場。(→第53話)
しかし魔力の薄い地上付近の階層ではまともに動くことも困難で、手足を振り回しシスルを庇うことで精一杯といった有り様で、シスルの復帰とともに彼を抱え地下へと消えた。
そしてシスルと共に迷宮最深部にある彼の邸宅へ向かい(→第66話)、屋外での待機を命じられるが、近くには先回りして家探しを終え、特大カレーライスとビールをこれ見よがしにテーブルへ用意したライオスたちが潜伏していた。花をかき集めて蜜を吸っていたファリゴンだが、ライオスたちの作戦にて腹ペコの所に食いやすく食欲をそそるご馳走を目にしたファリゴンは、誘惑に負けてそれらを見事完食し、満腹と酔いで寝入ってしまう。その隙を突いたライオスによって口と鼻を塞がれ窒息死(重要な臓器は全て竜部分にあり刺突などでは致命傷を与えるのは難しいと判断されたため)。遺体は氷漬けで冷凍保存された(→第79話)。
その後狂乱の魔術師、そして迷宮の主に力を与えていた翼獅子が倒された後、氷付け遺体は地上で回収され、冒険者、地上のメリニ村の人々、オークなどのダンジョンの住人らが総出で竜肉を食す宴を開催。(→第93話~)
ミートパイ、ブラッドソーセージ、テールスープ、グラタン、ステーキ丼などなど様々な料理が振る舞われた。
噂を聞きつけてやって来た島外の人も交えた七日七晩にわたる飲食の末、最後の肉である鍋いっぱいのクリーム煮をライオスが食したことで竜の肉は完食される。
調理によりドラゴン部の肉の総量が減り、それに応じてドラゴンの魂も減少。前脚のみでファリンを上回るほど巨大だったドラゴンの魂は小さな幼竜にまで縮小した。
ひっくり返ってもがく幼竜を見かねたファリンはこれを拾い現世に帰還。これによるものか彼女の体にはドラゴンの一部が残りはしたものの、結果、今度こそ人間として蘇生された。(→最終話)
余談
- 名前は「ファリン+ドラゴン」。劇中の人物からは呼ばれていないが料理のレシピのコマでこの名前が出ている。また、これに先行した単行本第10巻収録の『モンスターよもやま話(10)』では「キメラファリン」と表記されている。
- 『モンスターよもやま話(10)』ではこの個体はオスである可能性が示唆されており、同回にはライオスの空想の中でドラゴンの頭+女性の下半身という構成のメスVerのキメラが想像されている。
- 蘇生術のリスクとして「一つの肉体に複数人の魂が入った状態で蘇生すると人格の混乱が起こる」という例が劇中で説明されており、そのままファリンに同様の事態が起こっている。
- 劇中1度目の蘇生直後に、レッドドラゴンが傷つけられた部位と同じ場所である左目と喉を押さえている。
- 本来蘇生術は難易度の高い魔法だが、迷宮全体に施された霊魂を迷宮内に留め続ける呪いを利用することで蘇生を容易なものにしている。呪いの対象は人間(コボルトなどの亜人も含む)の魂のみで魔物は含まれないが、ファリンを食べたレッドドラゴンの個体は狂乱の魔術師直属の使い魔だったため例外的に魂が留まっていた。
- 裏を返すと、「迷宮の中で喰われた生物は蘇生出来ない」という不死の呪いのルールに照らせば、ファリンも本来なら蘇生出来ずそのまま死ぬハズだったとも言える。
- 喰い尽くされる形で特別なレッドドラゴンの血肉と一体化していたからこそ、ファリンはイレギュラーな手法で復活出来たのであり、「自分を喰った相手のおかげで蘇ることが出来た」という何とも奇妙な話になってしまった。
- また、劇中では蘇生の際に豚や山羊など他の生物の血肉を人間のものに変換する事で失われた肉体を補うという方法が回復・蘇生術の一環として言及されている。
- ファリンの場合は「骨だけになった対象」を「魔物の血肉」を用いて蘇生、というよりも一から作り直した事が通常の蘇生術との違いである。
- 肉質は元のレッドドラゴンと異なり若鶏のように柔らかく美味。
- 骨は出汁を取り切った後に皮膚など他の食用に適さない部位とともに細かく砕き海や森に撒かれ、魚や微生物に食べさせ植物に栄養を吸収させた。