概要
ヒンドゥー教におけるカーストとは、四つのヴァルナ(大まかな階級)と
ジャーティ(細分化された職業)によって成っている。
四つのヴァルナはそれぞれバラモン(祭司、神官)、クシャトリア(貴族、武士)
これらは親のカーストによって決まり、基本的に生涯固定である。
カーストごとの仕事をせず、他の仕事をすることは、たとえそちらのほうが
上手くできたとしても禁じられている。仕事の不自由意外でも、
シュードラや、カーストに収まることができなかったアウトカーストの人々への
扱いはあまりにも過酷であり、イスラム教や仏教、キリスト教などへの改宗の理由にもなっている。
聖典リグ・ヴェーダにある神話によると原人プルシャの口からバラモン、両腕からラージャニヤ(クシャトリヤ)、両腿からヴァイシャ、両足からシュードラが生まれた。
カースト制度は最初からあったのではなく、時代を経て形成されていっており、
上記の神話を描いたプルシャ・スークタ(原人の頌)もリグ・ヴェーダの中では成立の新しい層に属する。
後代にまとめられた叙事詩マハーバーラタでも基本線はカースト支持だが、
聖仙の口からも様々な異論が唱えられているのが見られる。
が、時代がすすむにつれ、そうした異伝承の影響力は薄れ、カースト固定は進行していった。
社会政策、職業安定という効用も一応あったものの、それを補ってあまりある悲惨さ故、
カーストはヒンドゥー教社会の枠組みであると同時に、他宗教、無宗教の人々から
苛烈な批判を受けるウィークポイントでもある。
歴史学上での、西方からやってきたアーリア人が先住民を侵略制圧し、
階層化した、という説も心に痛いものである。そのため
インド・アーリア移住(侵略)説を否定する試みがヒンドゥー教徒からされたり、
各カーストを生まれの階級ではなく、各個人の資質によるもの、という解釈も
されており、英語のネット上でもよく見かける。
歴史上、ヒンドゥー教内にもカーストを相対化する動きが無かったわけではない。
現在でもカーストを問わないヒンドゥー団体が複数存在する。
外国人のジュリア・ロバーツがヒンドゥー教に改宗し、そのまま現在の
仕事を続けられているのも(改宗者は本来シュードラになる)、
上記の事柄が背景にあるものと思われる。