概要
やませとは、初夏～夏にかけて北日本の太平洋側に吹く冷たく湿った風のこと。漢字では「山背」と書く。
南方の太平洋上から吹き抜ける熱く湿った風が親潮で冷やされることで、6〜8月の北海道や東北地方北部の太平洋側には冷たく湿った風が吹き付ける。沿岸には霧や雲が発生し、それによって日照時間が少なくなる。
出穂期の稲の生長を妨げ、冷害の原因となる。最もやませの被害を受けやすいのは岩手県・宮城県の北上川流域から仙台平野にかけてだが、冷夏になると関東地方（茨城県など）や日本海側（青森県の津軽地方や秋田県など）もやませの影響を受ける。1993年にはやませに加え長雨により北日本の稲作が壊滅的な冷害を受け（この年は西日本の多くの地域でも不作となった）、平成の米騒動につながった。
北海道のうち、夏の間強いやませが吹き抜ける日高管内や胆振管内、十勝管内では、稲作があまり行われず、冷害の影響を受けない馬産や畑作が中心となっている。また稲作地帯である函館平野などでもやませの影響を織り込んで栽培計画を立てるため、東北地方に比べるとやませの被害は受けにくい。それでもやませの吹く期間が伸びると収量が落ち、冷害対策は古くから東北地方・北海道の稲作農業の最大の課題であった。
