概要
三店方式とは超健全・合法的なパチンコ屋の営業システムである。パチンコ屋、問屋、買取所(質屋)の3つで構成されていることからこの呼び名がついている。よく買取所を客と間違えて混同している人がいるが、この間違いはこの3つのトライアングルの買取所とパチンコ屋の間に客が入っていることから起こる。
日本において賭博は競馬や競艇などの公営ギャンブル、宝くじなどの公営くじ以外は全て刑法185~187条で厳重に禁じられており、もし犯せば50万円以下の罰金が科せられる。
そこでパチンコが賭博に該当しないように考案されたのが三店方式である。三店方式は1961年に大阪で誕生して全国に普及していった。この方式ではまず、風営法にてパチンコ屋がゲームの結果に対して景品を渡すことを明確に認めていることが重要になってくる。
簡単な流れ
- 客が現金をパチンコ玉に交換し、パチンコで遊んでその玉数を増やす。
- 得たパチンコ玉をパチンコ屋が玉数に応じて「景品」に交換する。
- 客は「景品交換所」と呼ばれる買取所を訪れ、店で得た景品を売って現金に換金してもらう。
- 景品を得た買取所は問屋に客から渡された景品を売り、問屋がその景品をパチンコ屋に卸売りする。
- パチンコ屋はまた景品を手に入れ…はじめに戻る
原理としては射的で得た景品が不要になったからリサイクルショップに売るというのと同じ。売るも売らないも景品の所有者の自由なのだから。また、問屋はいくつもの買取所、パチンコ屋と契約をしており特定の買取所、パチンコ屋とのみ景品の授受を行っているわけではない。
要するに合法であり賭博ではない、だから法的には全く問題はない。パチンコ屋の隣に都合よく質屋が位置しているのも全くの偶然、たまたまなのである。
しかし上記の仕組みについて「ほぼ賭博と変わない」という意見もある。
実際その通りで、この方式でも深刻な問題であるギャンブル依存症は防げていないという実情もあり、「かなり黒寄りの灰色に近いのでは?」という指摘も長期にわたってさまざまな機関から受け続けている。
しかし、三店方式もパチンコ屋から暴力団組織の資金源を締め出すという目的のためにも複雑化してきたという歴史がある(≒警察組織の介入がある)ので事態がややこしくなっており、現在まで存続するに至っている。
三店方式のオリジナルとなった大阪では、景品交換所の業務を大阪身障者未亡人福祉事業協会(※現在は大阪障害者母子寡婦福祉事業協会に改名)に委託しており、未亡人(寡婦)や障害者への雇用機会を生み出す存在でもある。
景品の種類
上記の②の段階で景品に交換するとあるが、これには一般景品と特殊景品の二種類がある。
一般景品とは、風営法第19条の規定に基づき9600円(に消費税を加えた金額)以下の品で、実用性があるものである。例えばお菓子やカップ麺などの食品や、洗剤などの日用雑貨、おもちゃや高級でないブランド品などがある。一部では、各種パチンコメーカーの出しているキャラクターグッズなども取り扱われている。
特殊景品は一般流通しにくいもので、言ってしまえば「ほぼ買取にしか使えない物」である。物は地域によって違い、しおりやプラスチックケースに入った金(「価値のあるもの」を取引するという建前上、純金であることが大半である)のチップ、文鎮や火打石(ライター石、フリント)などがある。
特殊景品が誕生した経緯として、三店方式発明当初はタバコなどの実用性の高いものを換金用の品物として利用していたのだが、実用性が高いゆえに質屋に売る以外でも利用することができ、暴力団の資金源になったケースがあったからとされる(※現在でも一般景品扱いでタバコを交換することはできる)。実際、特殊景品を「パチンコ店の近くでたまたま経営している」質屋以外に持って行っても大した価値にはならず、一般景品が消耗品であったり高級品を避けていたりするのも同様の理由である。
余談
Splatoon2の「三店方式」
Nintendo Switch用ゲーム、『Splatoon2』ではサーモンランというゲームモードが登場するのだが、これは襲いかかってくるシャケ(スプラトゥーン)を倒し、特殊なエネルギー源となる「イクラ」を集めるというバイトである。
…のだが、このサーモンラン、様々な社会問題が隠喩として存在している。
路地裏にある怪しい建物で斡旋される、きつい・危険・汚い3拍子揃った労働環境、襲い掛かってくる獰猛な鮭たち…かなりのブラックバイトである。実際に、紹介文も「うさんくさい求人」そのもの(公式サイトには「仲間と働ける、明るく楽しい職場です」という文言がある)であったりする。
バイトである以上、当然報酬も存在する。しかし報酬を受け取る場所が、店に隣接していることも含めてどう見てもパチンコ屋の景品交換所にしか見えない。
さらに報酬はバイトで獲得したモード専用のポイント数に応じて、中身がわからないカプセルと交換することで受けとることができるというもの。また、一定数のポイントに到達すればそのときのシーズンに応じた装備を貰うことができるのだが、装備が被った場合はそれを売却してお金にすることができる。
…交換所の佇まいといいその交換形式といい、三店方式をモチーフにしていることは言うまでもないだろう。