MUGEN
むげん
MUGENとは
Elecbyteが製作した、2D格闘ゲームエンジンである。
正式名称は『M.U.G.E.N』であるが、略記でMUGENとされることが多い。
古くはMS-DOS時代に開発がスタートし、MS-DOS用のアプリケーションとして開発されていたが、後にWindowsがリリースされ、そちらが主流なOSとなるとWin対応版のMUGEN本体(WINMUGEN)がリリースされた。
しかし、その後しばらく開発停止になっていた事もあり、非正規のユーザーによる改造バージョンが複数出回り、これらの非正規改造版もひっくるめて「WinMUGEN」と総称されるようになった。この時期にニコニコ動画やインターネットコミュニティを起点にしたブームが起こり、爆発的に普及した事もあり、この改造版WinMUGENが実質的なスタンダードとなっていた。
それから数年後、公式サイトの復活、正式版となる「MUGEN1.0」がリリース。
続く新バージョンとしてMUGEN1.1も開発されていたが、2014年頃を最後に音沙汰が無くなり、公式サイトも現在は消滅。2016年に公式twitterにて、「開発が終了したわけではない。現在、インディー格闘ゲームの開発に協力している」という発現が唐突に1回あったが、MUGENにしてもそちらのゲームにしても一切の動きがなくなっている。
そのため、事実上MUGEN1.1のベータ版が現状の最終バージョンとなっている。
こうした背景があるため、様々な非正規改造版や、市販ゲーム機上で走らせる事を目標にしたクローン版など様々な亜種が作られていたものの、現在は少数を残してほとんどの制作・公開が終了している。
2020年代にも更新が続いてるソフトウェアとしてはMUGEN1.0以降の機能に対応している他、オンライン対戦機能を備える「I.K.E.M.E.N GO」や、2Dベルトスクロールアクションが製作可能でAndroidでも動作する「GameDreamFactory」などがある。
機能・特徴
ユーザーサイドでカスタマイズ可能な部分を限界まで広げる設計により自由度の高さを確保し、ユーザーの好みでキャラクターの制作からシステム面、セレクト画面やライフバー、ラウンドコールやBGMなど、ほぼ目に見える部分はすべてカスタマイズ可能となっている。
描画機能は現在のゲームエンジン等と比べると若干機能が乏しい面があるものの、おおよそ2D格闘ゲームっぽい物を作るのに必要な機能は提供されており、充分な知識があれば基本的な物を作るのに支障はない。
本来は高解像度のスプライトに関してはサポートされていなかったが、設定を書き換える事により擬似的に高解像度サポートが可能である事が発覚して以後は設定項目名から取ってD4という独自の用語が使われている。
WinMUGENでは長らくこのD4による疑似的な高解像度サポートのみだったが、MUGEN1.0以降では正式に本体側が高解像度スプライトの使用に対応し、HD対応のキャラクターを制作する事も可能になった。
早々からキャラクター制作に関するドキュメントや仕様などがオープンにされていたため、キャラクターの製作が他の格ゲーコントラクションツールに抜きん出て非常に盛んなのも特徴。
ユーザーによって様々なキャラクターが作られ、
・有名格闘ゲームのキャラクター
・格闘ゲーム以外のゲームのキャラクター
・アニメ/漫画などのキャラクター
・実在の芸能人をキャラクター化したもの
・格闘ゲームなのに(比喩ではなく)シューティングをするキャラクター
など、とにかくキャラクター製作に関してはなんでもありの独自文化を持つ。
キャラクター一覧
オリジナルキャラクター
MUGENオリジナルキャラクターを参照。
版権キャラクター
SNK、カプコンなどの有名メーカー他多種多様な格ゲー並びに格ゲー以外のゲーム、アニメ、漫画作品のキャラクターがMUGENで使用できるようになっている。
作品数は膨大であり、本項に記載していくときりがなく、作品名の羅列のみになってしまうので詳細はニコニコMUGENwikiを参照のこと。
ただし、こうした遊び方は後述するように当初Elecbyteが想定した遊び方ではなく、特に既存のゲームのキャラクターのMUGENへの流用は後述する法的な問題を含んでいる。
法的問題性
既存のゲームから抽出されたグラフィックや音声などを元にキャラクターを作成・公開することは著作権によって保護されたコンテンツの侵害となる。
現状で権利保有者が具体的な訴訟等の手段を取っていないというだけで、法的な面から見ればこれらに関しては完全に黒である。
また、グラフィックをキャラクター製作者が製作した場合においても、エフェクト素材や音声素材は既存のものの流用という場合があるため、こちらに関しても同上である。
また、有名人などを元にしたキャラクターも厳密な意味では肖像権(パブリシティ権)の侵害、もしくはその画像の権利者に対する侵害になる可能性がある。
特に発売されたばかりの格闘ゲームのキャラ又はゲームそのものをMUGENで再現し公開する行為が、そのゲームの売上に悪影響を及ぼす事を懸念し、タイムリリースのような概念を主張するグループもあった(実際には「完全に再現されている」わけではなく、あくまで見た目が「それっぽい」程度の物になるため、完全に元ゲームのお株を奪うような事にはならないが、可能性として)。
現在では格闘ゲームの主軸が2Dスプライトから3Dモデルを利用したものへと移りつつある事もあり、市販ゲームが発売された直後にMUGEN用データとしてリッピングされて使用されるという事は少なくなったが、一時は発売前に流出した製品版のデータを抽出→公開してしまう人もおり、更にそれを使ってMUGEN用キャラクターとして公開する・・・という事案も発生しており、界隈の内外で問題視されていた。
このような状況に対するElecbyteの公式見解は「MUGENそのものと製作物の利用に関しては個人の良識に任せる」となっており、認知するところではない、という格好になっている。
こうした問題はゲーム制作ツール全般に古くから付いて回っていた問題で、『2D格闘ツクール』系列を筆頭にツクール系ソフトでの商業作品からリッピングされたデータの使用が問題になる事自体はしばしばあった。
しかし、MUGENの場合はキャラデータを単体で配布するスタイルが主であった事や、それぞれのキャラデータから再び画像や音声を取り出す事が容易なため、一度誰かが配布すると後はそこから芋づる式に次々他のキャラのデータとして使われてしまう事などもあり、根の深い問題であった。
こうした問題に対し権利者側が行動を起こした例は少なく、多くは黙認あるいは認知、関知しないという姿勢を取っているが、中にはMUGENを名指しで禁止にしたり、逆に非営利目的であれば容認することを表明した例もある。
それとは別のハプニングとして、とある公式書籍の図録にて本来公式ゲームの画像を使うべき記事に何故かMUGENの画像(よりにもよって他の版権キャラクターが対戦相手になっている。)が使われるという不祥事が起きたこともあった。
ただ一方で、こうして作られた無数のキャラクターたちがサンプルとなり、結果として人を集める呼び水として機能していたという部分も少なからず存在する。
とにかくユーザーの数が多くなった結果、クリエイターの母数が増え、商業作品のキャラクター顔負けハイクオリティなキャラを製作する人や、そうしたキャラクター向けにネット声優のキャストとしての起用、エフェクト等、関連素材をフリーで公開したりするなど、クリエイティブ面でも他の格ゲーコントラクションツールに比べて高い支持を受けているというのも事実である。
もちろんそうした手順により製作された完全オリジナルキャラクターなら法的な問題は無い。
あくまで当初Elecbyteが想定したのはカンフーマン等をサンプルとして、このように遊ぶことであり、決して商業作品のキャラを移植しまくって遊ぶというものではないため、こうした事案の取り扱いについては注意が必要である。
ニコニコ動画におけるMUGEN
格ゲーという体をとっているが、ネット対戦のハードルが高い(事実上可能なのは身内対戦のみ)という事情もあり、通常の格ゲーのようなプレイヤーによる対戦動画の数は少なく、AI(CPU)同士による対戦動画(特にトーナメント)が主流である(こうしたAIにプレイヤーが操作して挑むという動画はそこそこ存在する)。
また、数は少ないながらも対人戦を精力的に行う動画投稿者によりシリーズ化されている対戦動画シリーズも存在する。
2007年後期頃からはこうしたAI対戦動画をトーナメント形式にした動画が投稿され始め、ニコニコ動画内において人気を博すとともに類似の形式で進行する動画が増加した。
また、THE KING OF FIGHTERSシリーズやMARVEL VS. CAPCOM等の様に公式からクロスオーバー作品が数多くリリースされており、元々同人/二次創作などにおける他社・他ゲームとのクロスオーバーに容認であった格ゲー同人界の文化から派生して、二次創作SSとMUGENを組み合わせた「ストーリー動画」と呼ばれるジャンルも興隆するに至った。
その他、MUGEN用のキャラクターやAIの製作過程の動画も数多く投稿されており、こちらはやってみた(作ってみた)シリーズに近い傾向といえる。
クロスオーバー作品のようなようなお祭り的な要素はもちろん、通常の格ゲーではオプションでも設定できないような特殊なルールの対戦(常時ゲージMAX状態での対戦、通称ゲジマユ等)、普通の格ゲーではありえないような無茶な性能をしたキャラクターによる対戦などもコンテンツとして高い人気を持っている。
そうした媒体の特殊性故に、原作や二次創作で主流ではない、あるいは本来全く接点の無いはずのキャラクターによる絡みやカップリングネタなどが存在しており、これを愛好するファンも多い。
また、動画内での見せ場からアダ名で呼ばれるようになるキャラクターなども存在する(ただし当然MUGEN動画内の、それも特定動画ファン内だけでの内輪の話であり、外部へ持ち出すと不要なトラブルを招くこととなることもある)。
既存キャラクターの各種モーションや技に合わせて出す音声を変える、
技を改変するといった事も可能な為、元々キャラボイスが無いキャラに誰かの声をあてる、又はまったく別の声優の声に変更する、全く技が変わっている…といった改造がなされることもあり、女性キャラに男モノの声をあてたのにそれがなぜかしっくり来たりと、謎の融合反応を示した事例も少なからず存在する。
こうした既存キャラの改造によって生まれたキャラクターが独自のキャラ付けをなされ、別のキャラとして認知されているという特殊な状況も存在する。
もちろん、これらはニコニコMUGEN界隈でしか通じないネタであり、著作権的な意味も含めてMUGENネタを原作格ゲー動画で振らない事は最低限のマナーとされる。
特に元となったゲームの動画に誰かがMUGEN関係のコメントを残し、それに過剰反応したコメントが連鎖し動画のコメントが大荒れ…というような事態も起こるため、MUGEN動画以外でMUGEN関係のコメントをつけることはご法度である。
YouTubeにおけるMUGEN
ニコニコ動画と同じくAI(CPU)同士による対戦動画が主流であるが、YouTubeの場合、単発での対戦動画がニコニコ動画と比べて多くなっている。
それ故に動画のタイトルや説明欄に必然的にキャラクター名が付きやすくなるので、ウェブ上で「MUGEN {キャラクター名}」と検索したりするとそのキャラのYouTubeでの単発動画がヒットしやすくなっている。
余談だが2013年まではYouTubeでは60FPSに対応していなかった為、その年までは60FPSのMUGEN動画を投稿する事は不可能だったが、2014年にYouTubeが60FPSに対応したのでその年からYoutube上で60FPSのMUGEN動画を視聴可能となった。
然し60FPSに対応していない時期は30FPSのMUGEN動画を投稿する動画投稿者が多く、さらに60FPSに対応した後でも30FPSのMUGEN動画を投稿する動画投稿者の方が多かった故にYouTube上では30FPSのMUGEN動画が多くなっている。
海外が作った動画サイトである関係上、海外発祥の動画が多く、海外ファンと製作者が最も多い場所である。
pixivにおけるMUGENタグ
ニコニコ動画で連載されてるMUGENを使用したストーリーや大会関係の絵・漫画やMUGENオリジナルキャラクターのイラスト・グラフィック素材などのアップロード作品が多い。
また、それ以外にもコラージュ作品、素材(サンプル)の公開などもなされている。
MUGENタグを付ける際のマナー
MUGENと原作のゲームは似ているようで全くの別物である。
あくまでMUGENはアンダーグラウンドなコミュニティであり、MUGENそのものを快く思わない人が居る事を忘れてはならない。
いらぬトラブルを避ける為にもMUGENタグを使う際は、原作の作品名やキャラクター名タグを極力控える等の配慮を。
MUGEN全体でのマナー
様々な作品のキャラが戦う作品である事とアングラコンテンツである所為か、ファン内では特定のキャラ及び製作者を批判する等の行為が多く、批判者に対し反対の意見を言ってしまう事で動画内での炎上が発生してしまっている。どの界隈でも批判行為と言うのは付いて回るものなので、たとえどれ程気に食わなくても炎上しないようにスルーするのが賢明である。批判する側も正当な理由を持って批判する、或いは批判せず無視する等の対処を取らなければ炎上が発生してしまい、最悪の場合は大会動画の中止や製作者の引退、掲示板の閉鎖等の事態を招いてしまうので十分に注意しましょう。
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