概要
〈小説新潮〉1950(昭和25)年10月号から1952(昭和27)年8月号まで連載。全20作。
タイトルからもわかるように「捕物帖」といいつつ明治時代が舞台の作品。
(第一話で「時はもう明治十八、九年という開化の時世」とされている。ただし大半の登場人物は江戸時代の生き残り)
雑誌連載時は「明治開化安吾捕物」が表題で、「帖」が足されたのは後に単行本化されてから。
推理小説を「謎解きゲーム」だと割り切っていた坂口安吾らしく、
1.虎之介が海舟の元を訪れ、事件の説明にかかる。
2.事件のあらまし。
(ここまでで読者は一旦本を伏せ、自分で犯人を推理する)
3.話を聞いた海舟が自らの推理を虎之介に語る(が、これは大抵外れる)
4.新十郎が事件を解決。
5.真相を聞いた海舟が負け惜しみを言う。
という構成になっている‥‥がシリーズが進むにつれこの形式はどんどん崩れていき、探偵役新十郎以外のレギュラーキャラクターが登場しない回もある(全話通して出てくるのは新十郎だけ)。
現在は全話青空文庫で閲覧できる(下記リンク先参照)。
レギュラー
結城新十郎
徳川幕府旗本の末孫で、洋行帰りのハイカラ男。「西洋博士」「日本美男子」「紳士探偵」の異名は津々浦々に鳴り響いている。警視庁からも誘いを受けた程の推理名人だが、キュウクツな務めを嫌がりフリーランスという立場で事件捜査に関与。
その捜査法は論理一辺倒の正攻法だが意外な人情家でもあり、「私は警官ではないのです」として自らつきとめた真犯人を(その立場に同情できる場合には)見逃すこともある。
古田鹿蔵
警視庁の老巡査。警視総監から指名された新十郎付きの巡査で、その出馬を必要とした時に彼のところへ駆けつけるのが役目。
史実の「維新三傑」の一人だが、現在は東京氷川の隠居。虎之介の剣術師匠のひとりで、その彼から毎回事件の話を聞いて得意げに自説推理を語る‥‥も、大抵間違う。
それでも新十郎のことは高く評価しており、自ら彼を呼び出し事件にかかわらせたこともある。
泉山虎之介
海舟と山岡鉄舟に教えを受けた剣術使い。新十郎の隣人で、彼が事件にかかわる際には必ずくっついていく。自分の推理は全く駄目で、いつも師匠の海舟に知恵を借りにいく(ところから最初の頃は話が始まる)。服装は着流し。
花廼屋(はなのや)因果
元薩摩藩士の現人気戯作者で、やはり新十郎の隣人。当節の通家で、リュウとした洋服にハット姿。これまた大の探偵狂で、古田巡査の靴音を覚えていてそれが聞こえると素早く身支度を整え、押しかけ助手として新十郎についていく(一番遅れをとるのが虎之介)。倒幕戦争で場数を踏んだため腕っ節が強く、新十郎が指摘した真犯人をまっ先に取り押さえることも多い。
お梨江(加納梨江)
第一話「舞踏会殺人事件」の被害者・政商加納五兵衛の愛娘。十八歳。学習院卒のお嬢様だがかなりの跳ねっ返り。新十郎とは最初からお互いに理無い感情を抱いたようで、第二話から三人目の押しかけ助手として捜査に参加‥‥かと思いきや三話目以降出番が激減し、時折思い出したかのように場に居合わせる程度のモブキャラと化す。
楠巡査
最終話「トンビ男」に登場。この頃になると上記で紹介したメンバーは全員姿を消し、この話では彼が狂言回しを担当。
映像化作品
テレビドラマ(1973年)
『新十郎捕物帖・快刀乱麻』(しんじゅうろうとりものちょう かいとうらんま)と題してテレビドラマ化され、朝日放送(ABC)制作によりTBS系にて1973年10月4日から1974年3月28日まで毎週木曜の21時から21時55分(JST)に全26回で放映された。
テレビドラマ(2020年)
『明治開化 新十郎探偵帖』(めいじかいか しんじゅうろうたんていちょう)と題してテレビドラマ化され、NHK BSプレミアム「BS時代劇」枠にて2020年12月11日から2021年2月5日まで全8回で放送された。主演は福士蒼汰。
テレビアニメ
『UN-GO』(アンゴ)と題し、本作を「原案」として舞台設定を近未来にするなどの大幅なアレンジを加えてテレビアニメ化され、フジテレビ系「ノイタミナ」枠にて2011年10月13日から12月22日まで全11話で放送された。