美と愛の女神アフロディーテに愛された、ギリシャ神話を代表する美少年の一人。
母ミュラーの女神に匹敵する美しさを受け継いでいる。
欧米では「美少年」の代名詞として用いられ、映画に登場する美少年役などを「アドニス役」と呼んだりもする。
物語
出生
アドニスはシリアの王(キュプロスの富豪とも)キニュラースとその王女のミュラーとの息子。
ミュラーがその父に恋し、一計を案じて契ったことで生まれた。
ミュラーは激怒した父の追手から逃れるため、神の慈悲で没薬の木に変じてしまった。
この木から生まれ落ちたのがアドニスである。
アフロディーテとの恋
美しい青年に育ったアドニスに、女神アフロディーテが恋をした。
誤ってエロスの矢で己を傷つけ、その直後にアドニスを見てしまったためと伝わる。
アドニスを山野を駆け回って狩りをし、それにいつかアフロディーテも同行するようになった。
女神はアドニスが無茶な狩りで命を落とすことを恐れ、猛獣は避けるように戒めていた。
しかしアフロディーテが所要で離れている隙にアドニスは巨大なイノシシに襲われ、
これを槍で屠るもののイノシシの牙を浴びて致命傷を負ってしまう。
駆けつけた女神は虫の息のアドニスを抱き、神酒ネクタルをかける。
自分がアドニスと彼を失った悲しみを決して忘れないように、
人々も二人の愛を忘れないよう、流れた血から花を生み出す、そう女神は宣言した。
これがアネモネの花であるという。
それゆえアネモネは、優しい風に花を咲かせ、再び風を受けると散る、
はかなく美しい花なのだそうだ。
アフロディーテとペルセポネの取り合い
異説では、アフロディーテは生まれたアドニスをペルセポネに一時預けた。
しかし美しく育つこの少年に情が移り、ペルセポネはアフロディーテに返すのを惜しんだという。
そこでゼウスの仲裁で二人の女神が数か月づつ交互にこの青年を手元に置くこととした。
さらに異説では、アフロディーテがアドニスをずっと手放さなかったため、
ペルセポネがアフロディーテの愛人アレスに二人のことを告げ、
嫉妬したアレスが猪に変じてアドニスを殺したのだともいう。