概要
朝鮮半島南部の韓国同様、朝鮮半島全域を領土と主張しているが、軍事境界線(北緯38度)で韓国と分断されている。
首都は平壌市。朝鮮半島唯一の合法政府を名乗っているため、当初首都は名目的にソウル市に定めており、平壌は臨時首都という扱いだったが、1972年以降正式に首都とした。人口は約2,600万人弱。韓国の1/2。朝鮮半島全体の約55%を領土としている。
公用語は朝鮮語。南で韓国語と呼ばれている言語と同じだが若干違うらしい。
呼称
正式名称は朝鮮民主主義人民共和国。英語名:Democratic Peoples Republic of Korea(略称:DPRK)。
国名に民主主義や共和国と入っているが、金一族が独裁者の地位を世襲し、朝鮮労働党が一党独裁している。
韓国を朝鮮半島唯一の合法政府と認識=北朝鮮を国家承認していない日本では一般的に「北朝鮮」と称される。
昔はメディアでは、北朝鮮への配慮もあったのか、最初の1回は「朝鮮民主主義人民共和国」と彼らがいうところの正式名称で呼び、以降は通称「北朝鮮」と呼ぶ、という方式を取っているところが多かった。
しかし2000年代に入り、北朝鮮が拉致を認めるなどして国際的に非難が本格化するのに前後して、メディアも単に「北朝鮮」としか呼ばなくなり、現在ではほぼどのメディアも「北朝鮮」とだけしか呼ばない様になっている。
金正日政権時代には貧困・飢餓問題がよく日本のテレビ番組でも伝えられたが、金正恩政権に交代して以降は残忍な指導者で知られる金正恩を刺激しないためかこの手の問題はテレビ番組でも比較的触れないようにされ、北朝鮮本国における街頭インタビューなどでも都市部の比較的富裕な層を映している。
英語圏でも一般的にNorth Koreaと記述される。しかし、彼ら自身はこの「北朝鮮」という呼び名を嫌っており、「共和国(공화국・コンファグク)」と呼んでいる。
歴史
朝鮮半島を治めていた日本は第二次世界大戦で敗れて統治権を失ったが、その後に米国とソ連が南北で分割統治したことで旧ソ連地域が北朝鮮として独立した。
米国統治地域が独立してできた韓国に対して侵略を行って朝鮮戦争を起こし、半島武力統一を目論んだが米国を始めとする西側諸国が韓国に援軍を派遣したために失敗。逆に一時は反撃に出た韓国に吸収されかけるも、北朝鮮を緩衝国として残したい中国やソ連の介入で、消滅を免れる。東西両陣営が互いに対峙することで戦線は膠着し、開戦前同様に朝鮮半島をほぼ北緯38度線で区切って休戦となり、南北が分断したまま現在に至る。
思想
ソ連のスターリン批判によって激化していく中ソ対立から自国の自主性を保つ為に双方に頼り切らない独自路線を歩みだし、マルクス・レーニン主義を朝鮮半島に創造的に適用したとする主体思想を国家の基本思想に定めた。
主体思想は主体的な革命観を立てるため、党と首領の指導が必要として首領の指導への忠実性を人民に要求しており、極端な首領(金日成→金正日→金正恩)個人崇拝と一党独裁支配が行われている。その徹底した支配は「この世のディストピア」と国内外でいわれる程。
同盟国である中国(1949年10月に建国)よりも1年早い1948年9月に建国しており、旧ソ連を始めとする北朝鮮より古い社会主義国家は軒並み崩壊したため、現存する最も古い社会主義国である。
ただし、2010年9月28日に開催された「朝鮮労働党第3回党代表者会」で「社会主義×マルクスレーニン主義の維持と引き換えに共産主義社会の実現を放棄」する事が決定した。
韓国を傀儡と呼び日本はあってはならない国と言わしめている
情勢
国内では徹底的な情報統制、言論統制が敷かれており、新聞やテレビ、ラジオなどのメディア媒体は政府が管理している。秘密警察の監視により、少しでも政府を批判する者や批判的な者など、反政府活動を行う可能性があると見なされた者は、いかなる人間であれ、容赦なく収容所送り及び「粛清」される(金正恩の義理の叔父張成沢、実兄金正男)。
近年は携帯電話やパソコンの普及度は都市部を中心に高まっており、平壌では7割の人々が携帯電話を使っている。2015年以降はスマートフォンを使う人もよく見かけられるという。インターネットカフェからはFacebook、Instagram、Google+などのSNSへの接続も可能。ただし一般の人々が自分の家からインターネット接続することは不可能で、スマホは国営企業や教育機関の専用サービスを使うための端末になっている。
このため外国文化の流入も著しく制限され、アメリカや韓国の娯楽をこっそり楽しんだ者には最悪極刑が課せられる。しかし、USBを用いたり、国境では電波を傍受して外国の娯楽を楽しむということが常態化しているため当局も唯一の放送チャンネルの内容をスタイリッシュにしたり、生放送を行うなどして対策をするようになっている。
外国人が入国する際にはラジオや双眼鏡、朝鮮を批判する書籍や雑誌、GPS付き機器の持ち込みができないなど、かなり制限事項が多い。(携帯電話やズームつきデジタルカメラの持ち込みは問題ないが、入国時に中を調べられることがある。ただ、iPhone 等は昨今の情勢により持ち込み禁止と言われる)
政治制度
表面上は民主主義・議会主義の形をとり、選挙によって選出された代議員によって構成される最高人民会議(国会)が同国の最高主権機関となり、最高人民会議が行政府の責任者を任命する形式の議院内閣制国家である。
だが、各選挙区から出馬する候補が絶対一人になるように調整されており、賛成か反対の二者択一しか選択肢がないばかりか、もとから選挙権を持つ民衆に配られる投票券にはすでに賛成と刻印されており、反対の場合は投票所の記入台で賛成に斜線を引いて投票しなくてはならない。
しかし、記入台は投票の待機列とは離れた場所に設置されるため、記入台に近寄ると「反対票を入れる」と明らかに分かってしまい、政治犯候補として当局に目をつけられてしまう。選挙に不参加でもやはり秘密警察の類に目をつけられるため、北朝鮮国民は選挙に参加して賛成票を入れないと生命の危機の恐れがある。
また、憲法で朝鮮労働党の指導が国家機関の決定に優越すると定められているので、最高人民会議に決定権がないに等しく、ほぼお飾りの状態である。そのため民主主義はほぼ有名無実化しているといってよい。
朝鮮労働党以外にも野党がいくつか存在するが、それらはすべて衛星政党であり朝鮮労働党の指導を受け入れている為、形骸化した野党である。
こういった独裁体制だが、憲法上では世襲を「資本主義が行う封建的なもの」として認めていない。総書記の子息が次の指導者になる事が多いのは、あくまで指導者の次に国のために働いた『1号党員』だからである。
しかし、『1号党員』という制度もそもそも総書記が自分の子息にだけ仕事を与えれば簡単になれる立場であり、最近では国営の朝鮮中央通信なども公然と「白頭山の血統」などと表現している。
現在では金一族が支配する国として「金王朝」「金氏朝鮮」と揶揄されることもある。
加えて近年では金正恩が最高人民会議の代議員にならずして国務委員長に任命されたので、議院内閣制は名実ともに崩壊したといえる。
外交
日本においては閉鎖的・孤立主義というイメージがあるが、162ヶ国と国交を樹立している。その中にはインドネシアやベトナム、モンゴルなど日本と関係性の極めて深い国も多く、それらの国と北朝鮮の交流がニュースになることも多い。同じく社会主義を掲げるキューバとも、比較的良好な関係を保っている。
例を上げると、夫だったスカルノ大統領の縁でデヴィ夫人が北朝鮮を訪問したり、モンゴルに帰国した朝青龍氏による北朝鮮との交流、モンゴル国家安全保障評議会のエンフトゥブシン事務総長が拉致問題の仲介に言及したことなどが知られる。
外交史
東西冷戦時代に旧ソ連や中国を筆頭に東側が北朝鮮を、西側が韓国を承認してきた。しかし、1991年に両国が国連に加盟してからほとんどが南北等距離の姿勢を取っている。
ちなみに北朝鮮のみを承認しているのはシリアのみ。
さらに、アフリカ諸国は第二次世界大戦後に独立を果たした発展途上国、所謂『第三世界』との外交を長らく重視してきたという経緯がある。その多くは独立直後には社会主義または共産主義を採用していたという点でも方針が一致しており、その点でも親和性があった。このため現在でもアフリカ諸国との関係はさほど悪くないというケースも多いとされる。
しかし、ラングーン事件や大韓航空機爆破事件、拉致問題、サイバー攻撃、通貨偽造、麻薬製造など多くの国際犯罪に関与し、核実験やミサイル発射を繰り返し実施しているため国際社会からは経済制裁を受けているが、中国やロシアとは依然として親密な関係にあるため、そのルートを利用でき、背乗りなどによって制裁の網をかいくぐっていると見られる。
2024年6月19日にロシアと「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結したと発表、事実上の軍事同盟である。
国交のない国
北朝鮮を一度も承認していないのは韓国はもとよりアメリカ、日本、フランス、イスラエル、サウジアラビアなど25ヶ国。
かつて承認していた国
コスタリカ、サモアはラングーン事件をきっかけに、ヨルダンはアメリカに同調、ボツワナは人権問題、ポルトガルは核問題、ウクライナは北朝鮮がドネツク・ルガンスク共和国を承認を理由にそれぞれ断交。
日本との関係
日韓基本条約で韓国を朝鮮半島唯一の合法的な政府としていることから国家承認もしていないため日本と北朝鮮は国交がない。日程強占期をきっかけに日本も悪魔野郎と見なしている
そのため、在日朝鮮人の組織である朝鮮総連が事実上の大使館の役割を果たし、かつては万景峰号などを使用して民間レベルでの北朝鮮への送金なども行われていたが、2002年の日朝首脳会談を契機に北朝鮮に対する日本の世論が悪化し、現在は北朝鮮への送金は厳しく規制されている。
韓国や中国と異なり、それぞれの直接の統治領域間での領土問題は存在しない。ただし北朝鮮は朝鮮半島全体を自国領と主張しているため、竹島を「朝鮮民族の領土」だと主張して日本を批判することがある。
日本にある高麗や李朝時代の美術品・文化財をめぐる問題で2011年3月、北朝鮮の「朝鮮仏教徒連盟」が韓国の市民団体経由で返還要求をしており、他国に比較すると文化財所有権の問題が起きたケースは少ない(皆無ではないが)。
なお韓国で伊藤博文を殺害したことで英雄視されている安重根について、北朝鮮ではそれほど評価は高くない。まず彼の両班(貴族)出身という出自が社会主義理念に照らして嫌われる傾向がある。またその行動についても「救国の意志」は認めるものの、「解決策を持たず手段も目標も誤った人物」「金日成のような偉大な指導者に出会えず志を遂げられなかった人物」とされている。
一方、日本人商人土田譲亮を殺害し、昭和天皇暗殺未遂事件などを主謀したことで韓国で英雄視されている金九は、反共よりも統一志向に基づく活動をつづけたことに加えて、独立後早くに暗殺されたこともあって北朝鮮でも評価の高い人物になっており、北朝鮮でも肖像が切手に使用されるなどしている。金九は珍しい朝鮮半島横断的な「英雄」である。
日本人拉致問題
日本人拉致問題については当初は否定していたが、2002年に金正日総書記と小泉純一郎首相が会談し、「自国の諜報機関が暴走した」として拉致を認めて北朝鮮側が謝罪し、日朝国交関係正常化を目指す日朝平壌宣言がなされたが、2004年に北朝鮮が国際法を破ってミサイル実験を強行して以降、有名無実化している。
南北関係
北朝鮮と韓国の関係は基本的に良くない。戦争後にも北朝鮮は韓国の政権の事を南朝鮮傀儡集団と罵倒している。
韓国側は保守政権か革新政権かにもよるが、保守政権の場合は北朝鮮非難を行うことが多い。両国とも朝鮮半島における唯一の正統政府と主張し、相手を国家とは認めていないことが背景にある。朝鮮戦争の影響もあり、かつての東西ドイツのように互いの主権を認め合うことができない状況である。
なお、朝鮮戦争は休戦協定が結ばれているだけで国際法上ではいまだ戦争中であり、休戦後も両国の間できちんと合意がなされていない海上の軍事境界線(北方限界線)付近では武力衝突すること度々ある。そればかりか休戦協定が結ばれたのは国連軍との間だけで、韓国との間には休戦協定すらない。
とは言うものの建国以来平和統一を掲げ、金日成が1980年に提案した一国二制度の「高麗民主連邦共和国」を提案し続けてきた。しかし(北朝鮮の実効支配地域に現在名目上の地方行政組織を置き、統一後実体化させるつもりの)韓国の反応は芳しくなく、2023年末には韓国の呼称をそれまでの「南朝鮮」から正式名称の「大韓民国」に改め同じ国の反体制組織ではなく別の国と見なすようになった。翌2024年には金正恩が南北を同族とは見なさない、武力で南を占領し編入すると発言、対南機関の閉鎖、統一記念塔の撤去、南北を繋ぐ鉄道の撤去や道路への地雷設置などこれまでにないレベルで断絶が進行している。
意外に資源豊か
実はウラン、タングステン、ニオブ、モリブデン、金等のレアメタルが眠っており、それ以外にもマグネサイトが世界で最も多く埋蔵されていると考えられている。加えて領海内に石油も大量にあるのではないかと言われている。
もし、これらを採掘できれば北朝鮮の経済事情は激変する可能性は十分にある。事実、日本統治時代から「南の農業、北の工業(南農北工)」と呼ばれるほど朝鮮半島北部は鉱工業に力が入れられ、経済面では韓国より優位に立っていた時期もあるが、1970年代から韓国の経済発展に押され、現在では南北住民で20倍以上の経済格差がある。
もっとも、当の国家がその後軍事に傾注し過ぎた結果、肝心の採掘に関する知識や技術、資材も機材も人材も(要するに何もかも)足りなくなってしまっている。また、朝鮮戦争時代に旧日本軍が建てた鉱山や製鉄所などはほぼ全て破壊され、その後ソ連の支援で復興したがソ連崩壊のため現在では維持もままならなくなっている。
当分の間は文字通りの「宝の持ち腐れ」となるだろう。
国家の政情を鑑みるに、この問題も中国やロシアに協力を依頼しそうなものだが、今のところ小規模な協力止まりで大規模な採掘の話題はほとんど無い。
これらの理由には「中露に協力を依頼したら、悉く掘り尽くされた挙句、利権を盾に全部持って行かれるから北朝鮮側が警戒して依頼していない」という話もあれば、「朝鮮戦争の再戦などの動乱が起こった際、どさくさに紛れて中露側が占領して独占しようと狙っている」という説もある。
関連項目
力道山・・・当地出身のレスラー
アントニオ猪木・・・平和のために尽力
国家
シリア:別名「中東の北朝鮮」ハーフィズ・アル=アサド政権時代からの伝統的友好国
ミャンマー:別名「親日の北朝鮮」(ただし1983年の「ラングーン事件」で2007年まで断交。ミャンマー建国の民族的英雄であるアウンサンの廟を、韓国要人の暗殺場所とした為である)
シンガポール:別名「明るい北朝鮮」「成功した北朝鮮」「東南アジアの北朝鮮」
トルクメニスタン:別名「中央アジアの北朝鮮」「平和な北朝鮮」「白亜の北朝鮮」
関連キャラクター
ササキ(ONEPIECE) ※名前の由来がこの国で遊ばれているトランプゲーム「44A」から。