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209系

にひゃくきゅうけい

209系は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の直流通勤形電車。
目次 [非表示]

概要

国鉄)から大量に引き継ぎ、老朽化が進んだ103系の置き換え、および、一部は輸送力増強用などとして、1993年4月より京浜東北線根岸線南武線に本格投入された。これまでの鉄道車両の製造・整備の方法を全面的に改めた新しい設計思想(バリューエンジニアリングの手法)が採用され、JR東日本では本系列以降の車両を「新系列車両」として区分している。


車両デザインは栄久庵憲司率いるGKインダストリアルデザインが手掛けた。1993年度通商産業省(現・経済産業省)選定グッドデザイン商品(当時)金賞・ブルネル賞奨励賞受賞。


各車両の性能の詳細はWikipediaに詳しいので、そちらも参照されたい。


2023年10月現在、500番台が京葉線武蔵野線、1000番台が中央線快速、2000・2100番台が総武本線(千葉~銚子間を八日市場経由)・成田線(同じく佐原経由)・鹿島線内房線(千葉〜千倉)・外房線東金線、2200番台がB.B.BASEで使用されている。


本系列はその後のE127系E217系E501系701系の設計のベースとなり、さらに通勤形電車と近郊形電車を融合させた「一般形電車」であるE231系や、E233系E331系E531系へと発展している。

また、他のJR各社や私鉄の車両開発にも大きな影響を与えており、良くも悪くも鉄道車両史に残る車両である。


開発の経緯

1987年国鉄分割民営化後も、JR東日本では通勤形電車として国鉄時代に設計された205系を引き続き製造していた。

しかし、国鉄時代大量配備された103系の老朽化による置き換え時期が近付きつつあり、また経済事情の変化や民営化に伴うコストダウンの必要性から、新しい設計思想に基づく新世代車両の開発が行われた。その結果、1992年平成4年)に新世代車両の試作車として「901系」10両編成3本(30両、A, B, C編成)が登場し、京浜東北線・根岸線で試用された。


新系列車両の開発に当たっては、『重量半分・価格半分・寿命半分』が達成目標として掲げられた。

「重量半分」:編成単位での総重量の削減と動力車比率の引き下げによる省エネルギー化およびメンテナンス性向上によるランニングコストの削減

「価格半分」:一部に製造会社の自由度を認めることと大量生産による調達コストの削減

「寿命半分」:後述。


「寿命半分」について

本来は、新造から20 - 30年経過した際の車両の陳腐化や、技術進歩の恩恵を受けられなくなることなどを避けるため、税法上の鉄道車両の減価償却期間の13年間を大規模な分解補修を行わずに使用し、その段階で機器を更新し継続使用しても、廃車にした場合どちらでも経営上の影響を受けることがないようにするということだった。


ただし十分な説明がないまま外部に言葉だけがいきわたったことや、座席のクッション材が明らかに少ないこと、さらに座席が貧相な6ドア車のイメージが強いこと、当時バケットシート不要論が鉄オタに支持されていたこと、新工法の未成熟により車体がボコボコだったこと、JR西や九州に転クロ高級車が導入される中で東ではこれだったことなどにより、鉄道ファンから走ルンです(走る + フジカラーのレンズ付フイルム「写ルンです」)、「走るプレハブ平成のモハ63系などといったありがたくない二つ名を頂戴することになる。


連日の酷使により、寿命に近づいた2000年代から、初期投入車の集まる上ラッシュの酷い京浜東北線で車両故障を頻繁に起こすようになる。また、外観は車体にがよってみすぼらしくなっていた。強度上の問題はないとされているが、この種の車体の劣化は川崎重工製は東急車輛(現・総合車両製作所)製に比べて著しかったと言われ、実際川重車は過半が京浜東北線で引退してそのまま廃車された車体が多く、それに対して東急製は他線区に転出していった車両も多い。南武線などは川重車を東急車で置き換えていた。


そして2005年、とうとう決定的なトラブルを起こす。京浜東北線蒲田大森間で車両故障により2時間の立ち往生が発生した。

この時、ブレーキシステムが在来車と異なる209系単純には機関車で牽引が出来ず、同一の編成で救援に向かったが、折からののため一時起動不可能に陥ってしまった。

この間、完全空調が前提で固定式窓と受動型換気装置を持たない209系の車内は、高い湿度と人間自身の体温により不快指数が急激に上昇。一部の乗客は最後尾の車掌室から降車、うち16名が救急搬送された。

京浜東北線、コスト重視の車両、固定式の窓という条件は、戦後すぐに発生した桜木町事故とかさなるものであった。このトラブルの後、固定側面窓の開閉化が、他型式や早期廃車予定車にまで緊急的に行われることになった。


0番台ではさすがにやり過ぎの感もあったのか、209系500番台以降、続くE231系からは機器の寿命が見直され、大きな修繕のサイクルを15年まで伸ばすこととなった(なお製造コストはさらに下がった模様)。

そして、京浜東北線には「故障に強い車両」として主要機器の冗長化が施されたE233系が投入され、0番台の老朽廃車が開始されることとなる。


その後

運転開始から13年が経過し、減価償却が終了した209系0番台は当初のコンセプト通り廃車になるはずだったのだが……


房総地区で使用されていた113系電車の老朽置き換え及び、中央東線の115系電車置き換えのため、同様に房総地区で使用されていた211系電車の捻出用に、大量の当型式を改造転用することになったのである。


そのため実際に廃車になったのは、前述の通り主に車体の老朽化でみすぼらしくなっていた川崎重工製と、転用計画前に廃車になった一部の初期車、使い道がなく余剰化した付随車がメインで、3次車以降の多くの車両が機器更新を受け、減価償却の13年を超えて使用されることになった。


だが、通勤型電車であるのに対し、置き換え先は近郊型電車である。その為、割とがっつり魔改造を執行したためか、この時、改造待ちの大量の209系を留置するために、JR東日本各地の車両センターを総動員して対応した。(青森車両センターに至ってはわざわざ209系のためだけに使わなくなった留置線を復活させたりしている。なお、改造期間は2ヶ月~2ヶ月半)


こうして機器更新を終えた0番台は2000・2100・2200番台、事業用車等に改造されて再就職し、324両が千葉支社に、3編成が南武線に投入された。


結局のところ901系・209系の開発コンセプトは、前述の通り「寿命半分」の項で将来的な選択に含み(逃げ道)こそ残していたが、実際には減価償却のサイクルで廃車と代替新造ができるように、その期間において徹底的にコストの削減をすることが開発の目的であったのだろう。早い話がJR東日本の通勤電車全てを、13年ごとに新車に入れ替え続けることである。鉄オタはともかく普通の客からは新車導入は喜ばれる。たとえこっそり座席を減らしていても。

しかし時はバブル崩壊を迎え、東急ですら新車の導入を渋る時代にそのようなことは困難になっていた。


209系、その存在とコンセプトは701系253系E4系2階自由席、キハ120形初期型(トイレなし)などと並び、初期JRコストカット伝説の一部として残ることとなった。


また、JR東日本が開発を進め続けている電気式ドアエンジンの実験にも使われた形式であり、901系で初導入されたスクリュー軸式・E231系で導入されたリニアモーター式のそれぞれの改良型を、のちに乗客の比較的少ない南武線において現車試験するために搭載されたこともある。その意味では、電気式ドアエンジン開発の境目となる形式でもある。

設計

209系 京浜東北線 内部

車体は205系よりも大量生産に特化した構造である。

まず、大型内装パネルや大型一枚窓の採用、室内天井のユニット化、座席や荷棚を壁に直接ねじ留めするなど、内装のあらゆる部分を簡素化。カーテンの省略や座席の硬化は当時波紋を呼んだ。

次に、必ず守らねばならない設計を除き、製造メーカーごとに異なる工法を許容している。各メーカー毎に得意とする工法で製造してもらい、納期の短縮とコストダウンを図っている。(窓や雨樋など細かい違いは枚挙にいとまがないためここでは省略する)

大まかな違いとして、オールステンレスの構体は川崎重工業製と東急車輛製造製とで構造が大きく異なる。川崎重工は、プレス成形によって製作したコの字型の部材を、薄い側板に裏側から貼り付け、側板に強度を持たせる事で骨組みを極力省略した「2シート貼り合わせ工法」を新開発。強度を確保するため、妻板にはビードが入っている。

一方の東急車輛は、従来の骨組み工法を踏襲しつつも、側板と屋根板の接合部を屋外に露出させ、溶接作業の効率化を図っている。雨どいとして出っ張っている部分がそれで、現在でも首都圏の多くの車両でみられる特徴。妻板にビードはない。

このうち川崎重工業製の車両は外板が1.2mmと薄い為か、廃車直前には車体に多くの歪みが発生しており、整備の観点からも後の転用改造から除外されているため殆どが廃車となっている。なお2シート工法そのものは後に側板厚を増すなどの改良がなされ、E217系を始め多くの車両に用いられている。


901系での試験結果をうけ、GTO素子を使用したVVVFインバータを本格的に採用。

特筆すべきは、モーターの定格出力がたった95kWしかないことである。しかも電動車比率が205系の6M4Tから4M6Tに落とされており、編成全体での定格出力は205系を下回っている。これは、加速時に限ってたくさんの電流を流すことで、定格の1.5倍程度の出力(約150kW)で運用する、過負荷での使用を前提としているため。VVVFの採用によってきめ細やかな制御が可能になり、従来車と同等以上の性能を実現した一例である。この新型モーター「MT68」は、その後も改良が加えられ、現在でもこの系譜に属するモーターは採用され続けている。

なお、後期に落成した編成は、E231系と同じMT73形を搭載している。基本設計はMT68と同じであるが許容回転数が引き上げられている。

台車はより簡素な軸はり式軸箱支持方式を採用。補強が必要な出入口の下を避けるため、空気バネ位置を通常よりも車体中心側に寄らせており、台車間距離が短くなっている。そのため、車体がふらつきやすく、直線走行時の安定性が少し犠牲になっている。なお、500番台やE217系、E231系以降は通常の位置に戻された。


また、これらの合理化と並行して車両全体の軽量化も推し進められ、205系から1両当たり2~5トンの軽量化を実現している。結果、特に加速時の消費電力が非常に少なくなり、回生ブレーキも含めた総合的な消費電力は103系から50%以上カット。さらに2世代後のE233系よりも約10%少ない。軽量化による効果は絶大なものである。

(但し、置き換え対象となった103系と同世代の私鉄車両の多くは界磁チョッパ制御により回生ブレーキを常用しているため、概ね205系と大差ない消費電力量である。それらとの比較だと30%程度の削減にとどまる)


番台区分

試作車

1992年3月に登場し、浦和電車区に10両編成3本(30両)が配置された。当初は901系と称したが、1994年1月から3月にかけて量産化改造を行った上で本系列の900・910・920番台とされた。

詳細は901系の記事を参照。


0番台

京浜東北線・根岸線

209系スカイブルーお誕生日おめでとうございます

車体の帯の色:スカイブルー

在籍車両数:浦和電車区…10両編成78本(780両)(2007年10月1日時点)

2010年1月に京浜東北線・根岸線での運用を終了。これに伴い中間付随車のサハ209(0番台)と6扉車のサハ208は廃形式となった。

4両編成42本+6両編成29本分の342両の改造が終了。2000・2100・2200番台となった。


南武線

旅立ちの日209系イラスト(南武ver)

車体の帯の色:黄色、オレンジ色、ぶどう色

在籍車両数:中原電車区…6両編成1本(6両)(2014年2月1日時点)


1993年に登場した量産車である。

京浜東北線根岸線用は同年2月15日より1編成が限定運用で営業運転を開始し、3月1日より5本が本格的な営業運転を開始した。

一方、南武線用は同年4月1日より営業運転を開始した。

前面は踏切事故対策として骨組を追加して強度を向上させたほか、スカートを大形化、運転室スペースを拡大、運転台背面に非常救出口を設置した。

京浜東北線・根岸線ではE233系への置き換えが進み、2010年(平成22年)1月17日から8日間、1編成にヘッドマークを付けて運転された。

南武線用には当初空気式エンジンドアを装備したナハ1編成が投入され、のちに2本目のナハ32編成が投入された。しかし、空気式ドアエンジンの部品確保が互換性の障壁になっていると判断されため2200番台に置き換えられ2009年9月に廃車となった。

ナハ32編成は、その後も運用され続け、2011年1月に行先表示器がLED化された。

京浜東北線から0番台が撤退したのちもただ1編成の0番台として運用されていたが2015年2月にE233系8000番台に置き換えられて運用離脱、長野車両センターで廃車解体された。これで純粋な0番台は形式消滅。


500番台

209系500番台 京葉線人は毎日都会を目指す

詳細は209系500番台の記事を参照。


950番台

E231系の試作車として登場。後にE231系900番台に形式が変更された。10両編成1本。


1000番台

地下直。地下鉄改め中央線

1999年にJR常磐緩行線東京メトロ千代田線の列車増発が行われることになり10両編成2本が製造された。地下鉄直通仕様とするため、先頭車の長さの変更・貫通扉装備などの設計変更が行われているほか、電動車の比率も変更された(0番台は10両中4両が電動車であったのに対し、1000番台は10両中6両が電動車)。ラストランにて、線路内に子供がいたトラブルが起きてしまったが、無事ラストランを終えることができた。ラストランに当選したら弁当や缶バッジ、定規、クリアファイルなどが貰えた。


松戸車両センターに所属し、小田急電鉄線へ乗り入れしない運用に入っていたが、中央線快速のE233系0番台がトイレ設置工事をすることになったため、予備車確保の目的で2018年に豊田車両センターへ転属。車体の帯の色はエメラルドグリーンからオレンジへ改められた。


のちにE231系800番台という本形式とそっくりな車両が登場したが、台車間距離はこちらの方が短く、構体設計が異なる。


2000・2100番台

引退へのカウントダウン総武本線③

房総地域各線で運用されていた113系の置換および211系の他線区転用を目的として0番台を改造した車両。番台を分けているのは4両編成を組む際に不足した先頭車を補うために仕方なく組み込んだ空気式ドアエンジン車と区別するため。

車体の帯の色は211系と同様の黄色と青色。

主な改造内容は電気連結器の設置、強化スカートへの交換、ドアの3/4閉機能、先頭車のセミクロスシート化、中間車へのトイレ設置など多岐に渡る。

なお中間車へのトイレ設置は、2000番台と同様の理由で最小限残した川崎製先頭車への補強を避けるためらしい。

2021年のダイヤ改正で余剰となった6両編成3本と一部の6両編成を4両編成化するために捻出された中間車が12両廃車となった。また、6両編成2本から中間車2両を抜いた10両が伊豆急行へ譲渡された。


2200番台

B.B.BASE

0番台を改造した南武線専用車両。ドアエンジンの方式を電気式に統一するために登場。

主制御器を更新の上、中原電車区向けに6両編成3本が配置された。

南武線向けE233系に置き換えられ2017年に南武線での運行を終了。最後まで残った1編成については「2200番台」のまま房総地区のサイクリング専用列車「B.B.BASE」へ再改造された。


3000番台

209系3000番台209系3000番台

1996年八高線南部(八王子駅~高麗川駅間)電化に備えて新造された地方線向け仕様。その為、半自動ドア機能とドアスイッチを備える。

車体の帯の色はオレンジ色とウグイス色。

川越車両センターに4両編成4本が在籍していたが、209系3500番台やE231系3000番台への置き換えにより、2018年にハエ62編成が訓練車に改造されたのを皮切りに2020年までに全ての編成が運用から撤退した。


3100番台

JR東日本 209系3100番台JR八高川越線209系3100番代

2005年八高線川越線の103系3000番台置換えのため投入された、本形式最後の新製車。東京臨海高速鉄道70-000形(基本設計は本系列と同じ)の編成組み替えに伴う余剰車の譲渡を受けたもので、第三セクター私鉄の車両がJRグループに移籍した初の事例となった。なお譲渡されたのは先頭車4両と中間電動車ユニット一組で、不足する中間電動車ユニット一組は209系最終増備車として新造された。


改造箇所は前面を3000番台に合わせた意匠変更(ただし形状は変えなかったため他の209系よりやや丸く、70-000形の灯火類はそのまま使われた)、半自動ドア機能・方向幕のLED化など。川越車両センターに4両編成2本が在籍。

2022年1月に引退。


3500番台

209系500番台の記事を参照のこと。


特殊用途車

技術試験車「MUE-Train」

209系(mue train)

0番台のウラ2編成を改造。MUE-Trainの記事を参照のこと。

支社訓練センター用訓練車

2008年、0番台のモハユニット3組に運転台等を取り付け、大宮・八王子・横浜の各支社に残っていた103系105系改造の訓練車を置き換えた。

その後、2018年から2019年にかけて、3000番台ハエ62編成を追加改造したのを皮切りに機器更新と転配を行い、新たに長野にも投入された。

その他

0番台ウラ7編成の先頭車各1両が、脱線復旧訓練用と、駅を模した実験施設に使用されている。


他社への譲渡

伊豆急行

2100番台の2編成10両(マリC609編成6両とマリC601編成4両)が2021年7月と11月に伊豆急行へ譲渡された。改造や整備をした上で2022年4月に伊豆急行3000系として運行開始。2両は部品取り。

伊豆急行3000系(無塗装)


関連イラスト

スカイブルーの雄姿Goodbye.JR東日本 八高・川越線 209系


関連タグ

電車 京浜東北線 JR東日本

70-000形 E231系 E501系 E217系

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