セト(エジプト神話)
えじぶとしんわのせと
キャラバンの守護神とされながら、嵐と悪意、戦争を司る神でもある。
空の女神ヌトと、大地の男神ゲブとの間に生まれた四兄弟の一人。
また、冥府神オシリスは彼の兄に当たる。
最大の特徴はその頭部で、一見するとジャッカルのように見えるが、実はツチブタであるらしい。
一般的に四角い両耳、先の分かれた尾、そして曲がって大きく突き出した鼻を持ち、犬、ツチブタ、ジャッカルのほか、シマウマ、ロバ、ワニ、そしてカバなどとも結びつけられている。このキメラ顔負けの融合ぶりから、想像上の動物をわざわざ作ってセトに充てた、とする説も存在する(海外ではしばしばこの合成獣を「セトの獣」と呼称する)。
また、一説には外エジプト(エジプトの外部)から来た神とされ、メソポタミアのバアル神と同一視する向きもある。
神話では兄オシリスを謀殺し、その息子であるホルスと熾烈な王位争奪戦を演じ、その果てに敗北して世界の果てへと追いやられた。
モチーフがよくわからない事になっているためか、女神転生シリーズやドラゴンクエストシリーズではドラゴン型の悪魔やモンスターとして登場する事も。そういえば彼が名前の由来になっている人物もやたらとドラゴンや恐竜に縁があったりする。バハムートといい、ドラゴンとは全く関係なかった神話上の登場人物が現代においてドラゴン扱いされる事は結構多いようだ。
本来は、闇と混沌を司る邪神アポピスを打ち倒す勇猛果敢な戦闘神であり、ラーの飛行船から常にアポピスの襲撃を警戒するという、非常に重要な役割を負っている。
その信仰の人気ぶりは下エジプトでも有数となり、下エジプトにおける王座の守護者として一時はホルスをも凌駕するほどとなった。
しかし、時代が下ってオシリスの地位が再確認されるようになると、彼の息子であるホルスの重要性が説かれるようになり、上下エジプト間での熾烈な覇権争いを伴って対立候補として擁立されるようになった。
そして最終的にはオシリスを謀殺した悪しき神とされるようになり、片足と睾丸をもがれるという仕打ちを受けることになる(実際エジプト神話ではイシスが息子に首をはねられても何事もなかったかのように復活、ということもあるのでそれほど大したことではないかもしれない)。
これらの動向は、上下エジプト間の覇権争いの具現であり、セト神はその煽りをもろに食らってしまったという、不遇な立ち位置にいる。