工芸品

工芸品　軸　

あらすじ 「主様……吸うて下さい……」 吹雪の国の【雪女】は、定期的に人間の子孫に贈り物をしていた。その子孫は【雪女】と人間の【娘】の子の裔だ。 数百年前、【雪女】は獣や人の命を食らい、食らった命で糸を紡ぐ魔性の存在だった。里人は身寄りのない【娘】を人身御供として捧げた。が、【娘】の刺繍を気に入った【雪女】は、精気を捧げ織りあがった布に刺繍するなら里人を襲わないと約束する。こうして奇妙な暮らしが始まった。その暮らしは意外にも穏やかで楽しい。楽しい日々と精気を吸うついでの触れ合いを重ね、やがて二人は相思相愛となった。 後に【娘】は懐妊するが、それは永遠の別れをもたらした。遺児を育て上げた【雪女】は吹雪の国に帰り、子孫と接することはなかった。 数百年後、ようやく子孫の存在を確認し、一人が結婚すると知った。これも縁かと、結婚祝いに自分で織った雪白色の反物を贈る。しかし、子孫はそれを送り返してきた。雪女は理由に納得したが、話を聞いた雪人一族は納得しなかった。かくして、一族総出で贈り物合戦が始まってしまう。着物、反物、簪、帯留め、箪笥、重箱……。本物の氷や雪花で拵えた上等品だが人の子は受け取らず、辛辣ともいえる的確な批評をするのだった。 雪女はその辛辣さにかつて愛した【娘】を重ね、困りつつもやり取りを楽しむのだった。 おしまい なんとか今年中に間に合いました。来年も一次創作二次創作共によろしくお願い申し上げます。

とある王国にまつわる連作です。 ファンタジーワンドロライのお題で書いた作品を加筆修正しました。また『トルコの至宝展』で展示されていた宝物がモデルの話がいくつかありますので、観覧された方はぜひ探して見て下さい。