概要
江戸時代の奇談集『三州奇談』に記載されている顔が1丈(約3m)もある大女の妖怪。
記述によれば加賀国大聖寺(現在の石川県加賀市)で、津原徳斉という名の人物が、会合で夜遅くまで飲み明かし家路に就いていた時、耳聞山の松林の所までやってくると、不意に提げていた提灯の灯が消えた。
元来た道へと戻ろうとも思った徳斉だったが、家までもう少しの所まで来ていたのでそのまま家へと向かっていると、道のずっと先を素足の女が掲げた提灯の明かりが薄ぼんやりと揺れている事に気付いた。しかもその明かりは如何やら自分の家と同じ方角へと向かっているではないか。
これ幸いとその明かりについていくと、女は自分の家近くの大きな榎の所で立ち止り、徳斉の方へと振り向いた。
徳斉は何とはなしに傍を通るとある違和感を覚えた。自分の目の高さよりも上の方に提灯の明かりが見えたからだ。不思議に思った徳斉は何気なく上を仰ぎ見ると、なんと先ほどの女が突如として巨大化しており、体は榎に隠れて見えないが長さだけでも1丈(約3m)もある女の顔がこちらを見てにやにやと笑っているではないか。
突然の女の変化にさしもの徳斉も肝を冷やして慌てて家へと飛んで帰り、家のものを叩き起こして先ほどの場所へと戻ってみたが、女の姿は跡形もなく消え失せていたという。