概要
『シェンムー(英:Shenmue)』は、セガがドリームキャストで発売したアドベンチャーゲームシリーズ。制作総監督は鈴木裕。
全11章で構成される予定の大作長編アドベンチャーであり、ドリームキャストを背負って立つ看板タイトルとしての期待をかけられ、ふんだんな予算と派手な広告宣伝を投入して開発・営業が進められた。
1999年、第一作『シェンムー 一章 横須賀』が満を持して発売。その制作費は70億円にも及び、一時期ギネスブックに「世界一制作費のかかったビデオゲーム」として記録されていた(現在は更新されている)。
ゲームそのものの評価は後述の通り高かったものの、肝心の売り上げは約60万本と、莫大な制作費に見合ったものとは言えず、商業的には失敗に終わった。
2001年には、ストーリー第2章を飛ばして3~6章を収めた第二作『シェンムーⅡ』(こちらも制作費は20億円強)が発売されるが、既にセガがゲーム機事業からの撤退を宣言した後のドリームキャスト末期の作品であり、これも15万本ほどの売り上げに留まった。
その後、『シェンムーオンライン』『シェンムーⅢ』等が企画されるが、遂に発売には至らず、ストーリーは未完のままとなっている。鈴木裕のセガ退社後の2010年、モバゲーからソーシャルゲームとして『シェンムー 街』が配信されたが、これも約1年でサービスを終了した。
2015年6月16日、生みの親である鈴木裕により新作『シェンムーⅢ』の製作が発表され、全世界で10年以上待ち侘びていたファンを歓喜の渦へと巻き込む。クラウドファンディングサイト『Kickstarter』にて資金集めが行われ、その日の内に目標額を達成した。
発売予定は2017年12月、対応機種はパソコンとプレイステーション4。
『Kickstarter』プロジェクトページ→ 日本語版/英語版
この際の、100万ドルが集まるまでの1時間42分は『最も短時間で100万ドルを集めたビデオゲーム』として、ギネス認定された。
2015年7月18日午前に締め切られ、最終的に633万3295ドル(1ドル=124円換算で約7億8500万円)が集まった。『Kickstarter』のビデオゲームの調達額としては過去最高額。
システム
基本パートは街中を探索してNPCに話しかけたり、オブジェクトを調べたりして情報収集を進める3Dアドベンチャーゲーム。『一章』では1980年代の横須賀、『Ⅱ』では同じく香港の街がきわめてリアルかつ緻密に再現されている。街中を行き交うNPCたちが時間経過によって挙動を変えることで生活感を演出し、フルボイスが実装されたセリフの数々はストーリー展開に合わせて変化する。
ストーリーが進むと、突如として一定時間内に決まったボタンの入力を求められるミニゲームや、バーチャファイター風の格闘ゲームに挑む場面もあり、様々な謎を解き明かしてゲームを進めていく。
街中のオブジェクトに関する小ネタも豊富であり、例えばゲームセンターの筐体を調べると、『スペースハリアー』『ハングオン』などの往年のセガの名作タイトルが実際に遊べたりする。また実在の企業とのタイアップも行っており、街中にコカ・コーラの自動販売機が並んでおり、実際に買って飲むことができたりする。
今でこそGTAシリーズなど、こうしたリアルな街中で自由な行動が楽しめるゲームは珍しくないが、当時としては非常に画期的であり、オープンワールド系の始祖のひとつとして後に続く多くの作品に影響を与えた。
ストーリー
主人公芭月涼の父親である芭月巌が、かつて中国で手に入れた2枚の銅鏡「龍鏡」「鳳凰鏡」が物語の鍵となる。
シェンムー 一章 横須賀
1986年、横須賀。芭月涼が自宅の柔術道場に帰ると、門人らがなぎ倒され、道場の奥で道場主の父・芭月巌と、謎の中国人・藍帝がにらみ合っていた。父親を助けに入ろうとする涼だが、逆に男に人質に取られ、父は殺され「龍鏡」が奪われてしまう。
悲劇に見舞われた芭月家には一足遅く、香港から「鏡が狙われている。陳大人を頼れ。」との手紙が届く。復讐を誓った涼は、奪われずに残った「鳳凰鏡」を手に、横須賀の街を舞台に陳大人の消息を追い始める。
シェンムーⅡ
苦心の末に、香港にいるという桃李少老師を訪ねることになり、渡航する涼。様々な困難を経て父の敵である藍帝に近づいていくが、旅の途中で立ち寄った村で玲莎花(シェンファ)という少女と出会う。その姿は、横須賀時代から涼の夢に度々現れていた不思議な少女そのものだった……。
評価
- 莫大な制作費を回収できず、ストーリーも未完のままと商業的には完全な失敗に終わった本作であるが、前述のような緻密に表現された街で繰り広げられる冒険の世界観は評価が高く、根強いファンも多い。文化庁メディア芸術祭デジタルアート部門優秀賞などを受賞した。海外でもその世界観の評価は高く、スティーブン・スピルバーグが本作を評価したことでも知られる。
- 長らく続編が待ち望まれ、クラウドファンディングという手段の確立も相まって、『Ⅲ』の製作資金は募集期間の初日で目標額(200万ドル)をクリア。予定される2017年の発売に向けて開発が進んでいる。
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