概要
ムーミンとは、トーベ・ヤンソン原作の『ムーミン』シリーズもしくは、その作品の主人公(ムーミントロール)を指す名前である。
フィンランドを代表する作品・キャラクターとして世界的に広く知られている。日本ではテレビアニメとなって広く知られ、フィンランド・ポーランドでもアニメ化されている。
日常ファンタジーながらどこか常識からかけ離れた、不気味で理不尽な世界観、風刺も含まれた内容は子供文学でありながら大人にも人気である。
原作者による作品は、小説のほか漫画(ムーミン・コミックス)もある。なお、ムーミン・コミックスはイギリスの新聞に連載されたもので、トーベ・ヤンソンが描いた回と弟のラルス・ヤンソンが描いた回がある。小説版とはまたムードが異なり、ギャグも多めな風刺漫画となっている。
なお、作者のヤンソンがスウェーデン系フィンランド人であるため、フィンランド語ではなく、スウェーデン語で書かれている(かつてスウェーデンがフィンランドを支配していた経緯があるため、フィンランドにおけるスウェーデン系は少数民族ではあるがその社会的地位は高い)。
舞台
ムーミン谷という世間から離れた小さな谷。海とおさびし山という高い山に挟まれている。
人口はそこまで多くないが、一応交番や町などもある。
いろんな不思議な種族が住んでいて、種族ごとに家を持ち共存している。ただし人間はいない。
日本のメディアがムーミンを紹介するとき「スローライフが楽しめる平和でのどかな田舎を舞台にしたメルヘン」みたいなイメージで語ることが多いが、作中で描かれる物語においては大洪水や干ばつ、雹などはよくおこり、さらには彗星にぶつかりそうになったりと異常気象が多い。
他にも、触ったら凍え死んでしまう女のお化けモランや見たものを凍らせる氷姫、
触ったら感電してしまうニョロニョロや悪魔が平気でいたりと、普通なら安心して住めそうにはないところである。
むしろ、そんな危険と隣り合わせの中でも毎日をマイペースに楽しく生活している、というのがムーミン谷の住人たちの魅力である。
キャラクター
多くの日本人はこの作品にキャラクター達に「名前」があると認識しがちだが、実はこの作品世界では個人を種族名もしくはあだ名で呼んでおり、個人の名前という概念がないのではないかとも言われている。
そんなわけで、しばしば同種族の別人が同じ名で呼ばれる(たとえば「ヘムレンさん」と呼ばれる人物がしばしば登場するが、それぞれ「ヘムル」という種族に属する別人である)。ミムラ族のミイの母親と姉は「ミムラ夫人」「ミムラ姉さん」という呼び方で区別されているが、この事情を知らない人は混乱が大きい。
ムーミン
本作の主人公。電話帳ほどの大きさの妖精。
ムーミン族の少年なのでただ「ムーミン」とみんなから呼ばれている。
父親に似て好奇心旺盛だが、母親に似て冷静なところもある。
彼女がいながら少々惚れっぽい。そのくせ独占欲はあるなど人間らしい性格。
スノークのおじょうさん(ノンノン、フローレン)
スノーク族の兄妹の妹の方。ムーミンの彼女。ムーミンとは種族が違い髪の毛がある。
兄に似たのか、少しわがままでナルシストだが正直で優しい。
その兄のスノークはこれまたスノーク族の人なのでただ「スノーク」とみんなから呼ばれている。
ムーミンパパ
ムーミンの父親。シルクハットとパイプが特徴。もともと孤児院で育ちそこから脱走し、フレドリクソンらとともに海のオーケストラ号で冒険をした。
小説家となった今でも好奇心旺盛で、時折ムーミンよりはしゃぐこともある。
ムーミンの父親なのでみんなからムーミンパパと呼ばれているが、若い頃は彼がただの「ムーミン」と呼ばれていた。
ムーミンママ
ムーミンの母親。ストライプのエプロンと大事なハンドバッグが特徴。寛容で落ち着いた性格で滅多なことでは驚かない。しかし、パパと羽目を外すことも。料理が大得意。体重はパパより重いらしい。
ミイ
ミムラ族。タマネギのような髪型をした小さな女の子。イタズラ好きで茶目っ気のある反面どこか現実的で大人びた発言をする。
スナフキンとは甥叔母、もしくは異父姉の関係にある。
ミィは「ちっちゃい」を意味する言葉。日本語に訳すると「チビ」そのまんまのニュアンスである。ミムラ族の兄妹で一番小さいからみんなからそう呼ばれている。
スナフキン
ムーミンの親友。家を持たない旅人で、自由と孤独を愛する。
ムーミン達が冬眠している間は南の方へ一人旅に出る。
人に指図されることや作曲の邪魔をされるのが大嫌い。
ムーミンパパと共に旅をしたヨクサルの息子。
スナフキンは日本語に訳すと「嗅ぎ煙草の人」みたいな意味。某CMのハムの人みたいなもんである。
人間に見えるけど原作挿絵では4本指だったり尻尾がチラ見してるので、彼も妖精的な存在だ。
スニフ
金貨や宝石などには目がない守銭奴。
金儲けのためならほとんどなんでもするが、野良ネコなどの自分より弱い生き物にはとても優しい。
ムーミンパパと共に旅をしたロッドユールの息子。
スニフは英語の「嗅ぐ(sniff)」。だけど別に常にクンクン何か嗅いでいるようなキャラじゃないので、このあだ名の由来は不明。原作読者にとっても謎の一つになっている。
映像化
アニメのムーミンは日本で作られた旧1969年、新1972年、平成1990年の「楽しいムーミン一家」、1979年にポーランドで作られたパペットアニメ、2014年に母国フィンランドで作られた映画「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」と約5種類ある。
キャラクターデザインを大塚康生が担当したり宮崎駿などの有名スタッフが関わった'69年や'72年の作品について原作者のトーベ・ヤンソンはあまりにも”日本的”に変わった世界観やキャラ作りに難色を示し、1990年の「楽しい~」にはヤンソンの姉弟が制作に直接関わった原作の世界観に近いものとなった。本家は「楽しい~」のみをムーミンのアニメとして認め、日本側は前作2つを黒歴史とした。
ただし、ストーリーや作画自体はハイクオリティで人気もあったため平成になってからビデオが発売された。
2014年の劇場版は漫画版のエピソードを映像化したもので、手書きアニメーションで原作漫画の雰囲気をよく再現した画風となっている。