概要
キャラクターの初出は、ダンゲロスオーヴァーキルの杉能コノハ。
一族と言っても、キャラクター間に血の繋がりや、交流といった描写は無く、共通特徴として「寄生体を媒介に能力を発動する」という点のみがあげられる。
何故、彼女らを指して、Sの眷属と呼ばれているのかは定かではない。
彼女らを説明する重要な概念として、シスマおよびパラシトスが上げられ、それによると、Sの眷属とは、特定の寄生型の魔人能力のキャリアを指しているのではないかと考察される。
シスマ
魔人の持つ人外的な能力の「核」となる力(中二力)が、独立した個として生命(いのち)を持った存在。魔物、悪霊、妖精等と混同されるが、厳密には、それらの超自然的な存在とは区別される。
自らその力を行使するだけでなく、憑依したり、契約を結ぶことで、魔人能力を与えたり歪ませたりする。
パラシトス
ここではない世界、宇宙、次元から、突如として現れる異形の存在。
パラシトスという言葉の語源については諸説あるが、有力なものとして、「パラサイト(寄生生物)」と「使徒」を組み合わせた造語であるという。
その強大な力は『転校生』に匹敵し、魔人の研究者の間では、認識の衝突に勝利したシスマから生じるのではないかと考えられている。
パラシトスは、少女の体に受胎(少年なら受肉)することで、自らの権能をこの世界、宇宙、次元にもたらすとされる。
特に脅威なパラシトスは、神話や伝説上の神、生物、道具になぞらえられる。
マスコット
魔人たちのお供となっているあざとい姿の生きもの。
パラシトスなどは、人間の少女などを欺くためか、マスコットのような姿を取ることが多々ある。
契約を結ぶことで、人間などに超常的な力を分け与えるという点から考えると、本質的にはシスマ、パラシトスと同一の存在とも考えられる。
サルクス
特定のシスマ型魔人能力者たちのこと。
彼らは、
1)パラシトスとの接触を契機に魔人へと覚醒し、(サルクスの第1条件)
2)パラシトスの排除時にのみ能力を行使でき、(サルクスの第2条件)
3)抗体もしくは抗卵と呼ばれる特定のシスマを共有しあう関係(サルクスの第3条件)
にある者たちの集団を指す。
抗卵
標的とするパラシトスを決定する前段階。
未活性状態であり、この状態においては受胎者に魔人能力は発現しない。
抗体
パラシトスの侵食から「世界」を守るために、ヌルがこの世界に干渉して生み出したシスマの総称。
第0抗体"Null"(ヌル)
パラシトス。無限に増殖する特殊能力を与える。
「第0抗体」とされてはいるが、本来はパラシトスであり「抗体」ではない。
自身の基本能力を分けることで、以降の8種の抗体群を生み出した。
第1抗体"Evin-Zoul"(エヴィンゾウル)
進化・適応し続ける能力を与える。
第2抗体"In-Breageul"(インブレジウル)
索敵および精神操作能力を与える。
第3抗体"Plantul-Flers"(プラントル・フラーズ)
回復・再生および身体・精神強化能力を与える。
その能力はさらに3つに分割されて、3人の受胎者に分け与えられる。
その3人の受胎者らによってサルクスが結成され、後に3条件が設定された。
第4抗体"Burl-Hell"(バウルヘル)
物理現象に干渉する能力を与える。
第5抗体"Earthant-Groul"(アーサントグラウル)
モノの性質を強化する能力を与える。
第6抗体"Thunde-Rabiul"(サンズラビウル)
空間を自在に移動する能力を与える。
第7抗体"Olze-Soutoise"(オルズソータス)
環境を無視する能力を与える。
第8抗体"Miscary-Fail"(ミスキャリィフェイル)
死に干渉する能力を与える。
"Ugliness"(アグリネス)
第0抗体ヌルのなれの果て。
知性はなく無限増殖能力のみが残っている。
子抗体
抗体の核の一部または大部分が分離し、かつ独立して活動可能となったもの。
"Bugs"(バグズ)
第2抗体の核の一部が分離したもの。小さな虫のような形状をしている。
全長0.01~0.1㎜と非常に小さく非力だが、無数に存在しており、索敵や精神操作など、幅広い用途がある。
"Crown"(クラウン)
第3抗体の核の一部が分離したもの。花弁のような形状をしている。
周囲のエネルギーを吸収・変換し、それをフラーズに供給する役割を担う。吸収・変換したエネルギーは自在に放出でき、攻撃に転用することもできる。
"Quadruple"(クオドロプル)
第4抗体の核の大部分が本体から分離して変質したもの。クオドロプルが破壊されると第4抗体は死亡する。透明な結晶状の物体であり、内部で4つの眼球が蠢いている。大気圏よりも外側に存在する。
天文学的な計算を一瞬で行い、惑星軌道上からでも、標的に対して精密に加速粒子を放つことが可能。そのような高い攻撃能力を持つ一方で、自身は非常に脆弱であり、完全な真空状態でなければ存在できない。
"Sparks"(スパークス)
クオドロプルから分かれた第4抗体の核の残りの部分が変質したもの。大きな目のような形をしている。一体の抗体から4体生まれる。光速で移動し、また光を収束して放つことが可能。
2次元上の存在であり、360度、常に同じ面を向けている。あらゆる波動を任意の方向に捻じ曲げる能力を持ち、クオドロプルと一体となって、クオドロプルが放った加速粒子の軌道を修正する。
しかし、主な役割は非常に脆弱なクオドロプルの生存ための環境構築であり、スパークスが4体そろってようやく完全な真空状態を作り出せる。
一覧
ヴィリギエル
分類:シスマ(悪霊型)
宮部允の能力「ロンリー・グローリー」から生じたシスマ。悪霊のように肉体を持たない。
生みの親である宮部允を殺害すると同時に、その魂を喰らうことで、その姿や記憶・知識を取り込み、宮部允に成り代わった。
取り憑くことで、対象に魔人能力を与えたり、元々もっていた魔人能力を歪める。
- 杉能コノハ
病魔
分類:シスマ(魔物型)
空憂愛の能力「Disease Dragger」から生じるシスマ。
「Disease Dragger」とは、対象Aが抱える「悩み(主に病や怪我等)」を引きずり出し、対象Bへとその悩みを移しかえる能力である。しかし、移しかえずに放り出すと、引きずりだした「悩み」が、生命をもちシスマが生じる。空憂愛はこれを「病魔」と呼ぶ。
取り憑くことで、対象の魔人能力に、元となった「悩み」に応じた制約を与える。
- 空憂愛
マダマテ
分類:パラシトス(混沌)
可愛らしい子犬の姿に擬態したパラシトス。周囲の空間を電子データのように書き換えることができるが、この世界では不安定な能力であるため、書き換えてしばらく経つと、書き換えられたものは姿形が歪み、スライム状の何かに変わる。
性格は自閉的であり、世界に対する干渉には興味を持たず、特定のものに対して強い執着を示す。
皇すららという少女に受胎し、彼女の周囲の人間を次々に「皇すらら」へと書き換えていった。
- 皇すらら
ネルヴァ
分類:パラシトス(窮奇)
翼の生えた少女のような姿をした蟲人のパラシトス。人間の少女の姿に擬態する。
その匂いによって理性を撹乱し、性的接触を介して、自らの眷属を殖やしていく。
無数の個体が集まった群体である。それぞれの個体は「ワーム」と呼ばれる。
また遺伝子を書き換えられたものが、別のものと性接触を持った場合も、同様にその体液を通じて書き換えが行われる。
ネルヴァの眷属は、知性体に擬態できるだけの規模の群体となった際、擬態と同時に人間と同じように「白紙」の状態に戻る。そして、経験を重ねることで、現地の知性体と精神的にも同化を図る。
- ヌトラ
アーコサイト
分類:パラシトス
結晶体状の組織と長い触腕をもつパラシトス。ニューロ・コイタルと呼ばれる発光現象を引き起こして、人体に卵を産みつける。
べフィルン
分類:パラシトス(檮杌)
有機物・無機物の区別なく対象と同化・融合し、支配する能力を持つ。
思惟する猫と呼ばれる臓腑触腕による。
アビメルム
分類:パラシトス(饕餮)
夢を介して現れるパラシトス。
何層もの次元に渡って存在するものと考えられている。
特にアビメルムの受胎者はアパストルと呼ばれ、アビメルムが安定して魂を得るために、文字通り寄生される。
アビメルムによって蝕まれた魂は、怒りや憎しみなどの負の感情のみを生み出すようになり、負の感情は受胎者の心の奥底に蓄積される。その蓄積されていく負の感情は抑圧され、受胎者の精神が崩壊するまで蓄えられる。その限界まで押し込められた負の感情によって、受胎者の精神が崩壊したとき、それまでアパストルと呼ばれていた受胎者はバシリウスと呼ばれるようになり、魔人として覚醒する。このとき、生じた魔人能力は直ちに、術者と分離してシスマとなる。シスマは次なるアビメルムとなるべく1つ下位の次元へと転移を図る。そこに転移したシスマが、新たなアパストルを選び出すというのを繰り返す事で、何層もの次元に渡って、アビメルムが存在する事となる。
以上はアビメルムがこの次元に現れた際の観測データを元にした考察であり、確かな事は何も分かっていない。
このような得体の知れない存在故か、信奉者も多く、彼らによると、
「アビメルムは虚無と根源、その二つの姿を内包する両義的な存在である」
とされ、アビメルムの見せる「悪夢」は、全ての次元に影響を与えると、彼らは考えている。またその夢を見ることができるのは、アビメルムに選ばれた者に限られると言う。
小さなブラックドラゴン“ながら”
分類:パラシトス(迦楼羅鳥)
矢達家に降雨の力を与えていたパラシトス。
古く強大な蛇の王であり、矢達愛雨の魂を糧に復活を企てたが、雨竜院の秘術によって逆に力を奪われてしまった。
人間に変身した時は、黒い肌で黒い服に身を包む悪魔めいた姿となる。
<TIPS #シスマとパラシトス>
魔人能力の中には分裂型と呼ばれるような病理的傾向を持つものが存在する。
魔人と魔人能力の関係は、“魔人”が使う側、主であり、“魔人能力”は使われる側、従の関係である。だが極稀に、“魔人能力”そのものが人格や意志、実体などを獲得し、まるで一個の生命体のように振舞うことがある。
時に彼らは、術者の思考を読みとり、また術者の支配から離れて主体的に行動する。一方、術者は彼らの思考を読みとる事はできない。
分裂型の初期段階である「プレ分裂型」の間は、術者と能力は一蓮托生の関係であり、能力は依然として術者の支配下に置かれるため、その関係性は維持される。
だが、術者と能力との分離が進み、「分裂型」の段階を踏むと、能力は術者の支配から逃れ、逆に術者を支配しようとする。この時から、術者は行使''する''側から行使''される''側へと移行していく事となる。魔人能力そのものが、意志を持ち、術者を無視して行動する様は、もはや、個人の特性や能力と言ったものの範疇を超えており、「悪魔」もしくは「魔物」などと表現される。
分裂型において、術者の死は「能力」の消滅を意味せず、むしろ術者の死によって、「能力」は術者から解放される。
解放された「能力」は、単独で行動する場合もあるが、新たな術者を求めて、転移することもある。転移を行う分裂型を特に、分裂―転移型と呼ぶ事もある。
分裂―転移型は、誤った標的へと転移した場合、被転移者のアポトシス因子に働きかけ、被転移者を衰弱死させるか自殺へと誘導するとされる。
これが分裂型の概要である。宗教組織の分裂過程との類似性を、術者と能力の分裂との間に見出し、分裂によって生じる新個体を「シスマ」と呼ぶ場合もある。
前述の通り、分裂型には必ず分裂元となる術者が存在するはずである。
しかし、分裂元の存在しない、自然発生的にどこからともなく現れる「分裂―転移型」というのも報告されている。それらは総じて「受胎型」、「パラシトス」などと呼ばれる。
パラシトスは「主」とも呼ばれ、彼らを信奉するものたちの存在も多い。
非魔人の少女を介して何の前触れもなく、そして静かに少しずつこの世界を浸食していくとされる。
分裂型による転移、またはパラシトスの寄生の対象となった受胎者は、表面上、疑似的に魔人として覚醒する。しかし実のところ、真に魔人として覚醒したとは言えず、媒介的に能力を発動しているに過ぎない。ゆえに媒介となるパラシトスなどが取り除かれれば、彼女らは魔人能力を失う。