都市国家ローマ〈CIVITAS ROMA〉、ローマ帝国(Roman Empire)
シビリアス・ろーま
としこっかろーま、ろーまていこく。
はるか昔、トロイ戦争でトロイの将軍であったアエネアスとその部下が辺境の半島に逃げのび『町』を作ってから、その遠い後継者に当たるロムルスを王としてしてから後『都市国家ローマ』を名乗ったイタリア半島の都市国家。この都市国家は地中海世界を制覇した。
以来、王政・共和制・元首政・東西国家分裂・東方国家(東方ローマ)のいずれの時代も問わず、ローマという共和政国家の継続体であった。
『ローマ帝国』と書けば、文章上はまったく問題がないが、この組織の曖昧さは『共和帝国(Republic Empire)』と何かしら造語を作らなければいけないぐらい、微妙なものである。
『微妙にさせる理由』
1.ローマ人自体は東ローマ帝国の民として存続した。
2.ローマ人自体も『帝国(インペリウム)』という名称は、恐ろしいもので、言葉としての使用は抑えていた節がある。
3.ローマ人目線には『帝国政府』という観念がわからないと思われる、中世ヨーロッパの人とか後代の人間が『典型的なローマ的帝国』だと定義した。
4.『ローマ化』するということが『帝国主義』だともされた。
また、現在では俗に、第一人アウグストゥス以降の共和制ローマと『西ローマ帝国』のことを指す限定的な用い方もされる。その場合、B.C753年からA.D470ねんあたりまでという認識が多いが、ヨーロッパ諸国では800年にフランク王カール(シャルルマーニュ)がローマ教皇から『ローマ皇帝』として戴冠してから、フランス王国(西フランク王国)の『フランス王』と神聖ローマ帝国(東フランク王国)の『神聖ローマ皇帝』が帝位の延長線上とされている。東方ローマ帝国(ビザンツ帝国)ではギリシア語表記や文化的に異称なものにはなっては行くが『ローマ人の皇帝』という称号がぶれる事はなかった。
正式な国号・国旗という観念が一般的でなかった時代においては「ローマ全体」をさす言葉は統一されなかった。英語表示では「Empire of Romea」「Roman Empire」などですむが、公用語表記だと「imperium Romanum」「imperium」「Romanum Imperium」「imperii Romani」「Romanorum」その他多数あるとされる。
共和国の全体(編集)
『都市ローマ(SPQR、イタリア半島)』〈元老院(セナートスとローマ市民〉
※(212年の『カラカラ法令』以降は『プロウィンキア』も含む)
- 都市ローマ(現:イタリア半島、通称『ローマ本国』BC753年ロムルスによる『町(後ローマ市)』建設が祖、後にローマ市の統治範囲がイタリア半島全土にまで広がる。『首都ローマ市』が存在する。)
- コルシカ島(『ローマ市』の勢力内)
- サルディーニャ島(『ローマ市』の勢力内)
- シチリア島(BC212年.ローマ軍団により制圧)
- マルタ島(BC228年.ローマ軍団により制圧)
ほか
『属州(プロウィンキア)』〈『都市ローマ』からの統治領土。通称:帝国領〉
追記
・『属州』はプロウィンキアと表記する。
・属州の行政統治は『プロ執政監(通称:属州総督、原則2人)』が主体。
・属州のプロ執政監はローマ市の執政官を経験したものが常だった。
・副プロ執政監も2人、任期も原則一年。
『ゲルマニア』(現:ヨーロッパ、ケルト民族主体。ゲルマニアの意味は『辺境人(田舎者)』)
- 属州ガリア(現:フランス・ドイツ・オーストリア地域、民族はフランク人・ゲルマン人他、フランス人・ドイツ人の祖先、BC53年.ユリウス・カエサル軍団が完全制圧。300年かかった。)
- 属州タラコネンシス(現:スペイン全土、BC3年.世紀.ローマ軍団により制圧)
- 属州ダキア(現:ルーマニア、106年.元首トラヤヌス軍団により制圧)
- 属州ブリタニア(現:英国、BC1世紀中にローマ軍により制圧)
他
『アカイア(ギリシア)』(都市国家マケドニア領)
※ローマ社会からするとこちら側が『都会』である。
他
『アシア』(トルコあたり、Asiaの語源)
- 属州トラキア(旧トラキア王国、BC1年.ローマ軍団により制圧、殖民都市ビュザンティオン(後の新帝都コンスタンティノポリス)もこの地区にある。)
- 属州カッパドキア(AD17年.ローマ軍団により制圧)
- 属州アルメニア(現:アルメニア共和国。AD1世紀.ローマ軍団により制圧。名目上はアルメニア王国として独立。)
他
『メソポタミア』(シリア(アーリア)・イラク・イランあたり)
- 属州シリア(BC64年.ローマ軍団により制圧)
- 属州メソポタミア(AD116 - 117年の一年間のみ。元首トラヤヌス軍団が制圧)
他
『シナイ』(旧ユダ王国)
- 属州パレスチナ(AD70年.元首ウェスパシヤヌス、ティトゥス軍団により制圧)
他
『エジプト』(旧エジプトプトレマイオス王国)
- 属州アエギュプトゥス(BC30年.執政官オクタウィアヌス(アウグストゥス)軍団(当時)により制圧)
他
『リビア』*(『リビア』はアフリカのギリシア・ローマ時代の古名)
- 属州アフリカ(BC2世紀.ローマ軍団により制圧・Africaの語源)
- 属州カルタゴ(BC146年.執政監スキピオ(大)軍団により制圧)
他
追記
・『レス・プブリカ』は『レパブリック(共和国)』の意味である。
・当時のローマ人に『イタリア』といっても通じない。
・ほとんどの『ローマ帝国』の作品は「SPQR」の中の話ばかりだ。
ローマ社会の階層(編集)
東方正教教会ローマ社会(東ローマ帝国時代)
- パンクラートル(全能者、イエス・キリストのみの称号(キリスト教正統教会(正教会)用語))
- セバストクラトール(セバストス(旧アウグストゥス)『ローマ人の元首』、帝王、神の地上の代理人。1人)
- デスポーテース(公王、原則1人)
- ガンブロス(国家当主)
- ツェザーリ((旧名カエサル)ツァーリ.意味:専制統治者、帝王。『原則1人』、後代ロシア皇帝。)
後期元首政
- テトラルキア(四分統治者、元首、原則4人)
- デュアルキア(双頭統治者、元首、2人)
- ドミヌス(統治者、『帝王』、原則1人、通称ドン(首領))
- アウグストゥス(上位統治者、2人)
- カエサル(副統治者、2人)
軍人元首
- インペラートル(大将軍〈大元帥〉)
- ソル・インウィクトゥス・アウグストゥス・ピウス(元首号、意味は『不敗の太陽神による偉大な平和の元首』29人が使用)
- マルクス・アウレリウス(元首号、五賢帝の元首マルクス・アウレリウス・アントニヌスに因む、10人使用した。)
- トラヤヌス(元首号、五賢帝の『元首トラヤヌス・オプティミウス』に因む、元首プロブスと、東方ローマ時代(ビザンツ)の元首アレクサンドロスが使用。)
元首政治
- プリンケプス(第一人者〈元首〉)
- インペラートル(司令官(大元帥)、原則1人~複数)
- コンスル(執政官、〈3人目の執政官〉)
- トリブルスプレビス〈護民監の代理〉)
- ポンテフィカルマクシムス(ローマ神話祭典監、後代では『教皇』号)
- カエサル(英雄〈後代だと次期ローマ皇帝などを指す、後継者など〉)
- ドミヌス(独裁王者、原則1人)
- アウグストゥス(偉大、原則1人)
政治層(首都ローマ市内、『ローマの七丘』地域に住む)
- レクス(ローマ王、『ローマ市首長』、1人、BC509年以降は空席。後に神聖ローマ帝国で皇太子の称号として使われた。)
- クリア(神代時代のローマ皇族、建国当時の『ローマ市民』〈伝説〉。神代以降は『パトリキー』と差がなくなる。神代時代のローマの家族は30家族だったので。『クリア会』は30家族の代表者の数で30となる。)
※『クリア』という言葉は『議会』などを指すので、場合によって滅茶苦茶異なる。今日ではクリアは教皇庁と訳される。
- パテル・パトリアエ(国父、頭領。名誉職、もともとは建国者ロムルスと開祖アイネエスの君主以外ための称号)
- ディクタトール(独裁監1人、任期は半年。共和制期10数人、元首政治以降は廃止。)
- コンスル(執政監、『市長』〈2人〉、BC509年 〜 (名目上AD541年)任期一年)
- プラエトル(副執政監、『副市長』〈2人〉任期一年)
上流(高級)(首都ローマ市内)
- パテル(『建国当時のローマ市民』の家族の家長。100人だったらしい。〈伝説〉)
- ノビリス(執政監家系。および共和政時代に台頭した上流階級。王政時代の上流階層パトリキを抑えてローマ社会最高のエリート)
- パトリキ(王政時代の貴族、共和政期では上流階層。後中世ヨーロッパ世界などでの『貴族』号となる。)
- セナートス(議員層、元老院を主に構成する。)
- エクティス(軍馬を保有する名士・資産家、後に中世ヨーロッパの騎士家の原型となった)
- デクリオ(地方議員、元老院と同じ階層。軍団の正体単位にも『デクリオ』はあるが、同じにしたい人も多いが、それとは別。)
中流(首都ローマ・都市ローマ(イタリア))
- トリブルスプレビス(護民官。12人、執政監や元老院の決議の武力を使ってでも拒否が可能、独自の『プレブス民会』を主催するが、当てにならない。)
- プリンケプス(第一人者、有名人。〈名誉称号〉)
- プレブス(一般市民、ローマ市の『ローマ市民』。自由の保障、食糧配給、多数徴税あり、兵役、民会参加権、公職参加権あり。)
- クリエンテス(公僕民、。パトリキやローマ市民に従僕する。)
- レブナンス(解放奴隷、市民と同じ権限がある。主に公僕民となる。)
下流(主に『エンパイア領』『都市ローマ(イタリア)・ローマ市』にも大多数存在する。)
- プロレタリア 貧乏労働層、意味「財産ではなく国家に対し子孫で奉仕するもの」(ラテン語)。後、共産主義世界での支配層。(マルクス側史観からすると、『プロレタリア』という層が1922年の『プロレタリア政府ソ連』を建てるまで、約2000年かかったのか・・。)
- スレイブ(スラブ)(奴隷層、東欧の『スラブ民族(ロシアなど)』と同じニュアンスを持つが、当時はローマ人が『蛮族』と定義した人々や、ローマ軍に敗北の捕囚民などにいった。)
追記
・エジプト文明や、律令制のような制度とはちがい、階層の流動は存在した。
民会(最高決議機関)〈コミティア、(編集)〉
王政時代
- クリア会(政府会、王政時代から継続した民会、かつては、これが『神代時代からのローマの民会』である。『ローマ王』などを選出したが、神代ローマ市民(皇族)と市民との政務分担(共和制)により、政治機能は形骸化したが、イベントなどでは運営された。ギリシャ都市の民会と違い、『代表者』のみがクリアで活躍したので民会特有の荒々しさは皆無であった。らしい。)
- ケントゥリア民会(兵員会、ローマ軍団(ローマ市民で構成)の各百人隊の中で、議案(人民裁判・刑罰・公職者の選任・軍団長の決定・戦争の決定。)を採決する。主催は執政監で各百人隊長が管理。(まだ軍団長はいない)。社会主義議会な全会一致的な要素があり、結局、一番決定力がある民会となった。)
- トリブス民会(区民会、トリブス区画での選挙や議案(人民裁判・公職者の選挙・刑罰・公職者の選任・戦争の決定。)などを採決する。主催は執政監・副執政監。)
- プレブス民会(市民会、護民監が独自に行い、執政監・元老院・軍隊を無視して立法まで行えるが、ほとんど実行されないので、トリブス民会と区別がなくなった。主催は護民監だったが。執政監などが行うようになった。)
追記
・ギリシアの民会は年平均40回以上は行われた。(ローマの民会は年1回)
・ローマ人は権力者(執政監)に事件の解決を丸投げする傾向が強かった。
・そもそも民会は『市民が自発的に集まるのが原則である』
・権力者側が召集したら『国会』になってしまう、なのでローマの民会は『国会』とも言われる。
・血みどろになってでも『市民権力』を重視するギリシャ諸都市国家では、民会のたびに、負傷者が出るのは普通のことであった。(別に良くはないが)
・ギリシャ民会の執政監などの権力は『市民軍を構成する市民の暴力』により、徹底的に破壊され蹂躙されまくった、後、再構築を繰り返すというのを繰り返す。
・法律も破壊されまくるのが常。
・正当な権力や『王』を名乗る存在も、市民の暴力により結局、惨殺されたり、放棄した。
・結局、高貴なものも『実力主義』でなければならなかった。
・ギリシアでは国政の決定は強すぎる市民たちが決めたので、決めたことを執政監などが奴隷のように働き、実現させるしかなかった。出なければぶっ殺された。
・たまに凄腕の人物が独裁者のように振る舞い、ポリスを発展・安定させることもあった。
・こういった人間たちの阿鼻叫喚の文化を『民主政(民主主義)』という。古代ギリシア人ではこの殺伐感が当たり前であった。 がギリシア人が荒れていたわけではない。
・理想や真理を求めるギリシャの有名(ソクラテス・プラトンなど)な哲学者からは『民主主義』は『もっとも無知で、野蛮な事』と唾棄されていた。
・『政治に理想を求める』というのは哲学者の仕事である。そもそも秩序や理性を民主制で求めるのが間違っている。
・永遠に権力者と民衆の地獄のような争いを通しての自由や正統さを実現するので、しょうがない・・。
・現代の民主主義を肯定しているのは『秩序ありき』なので、そこらへんはかなり違う。
政庁(執行機関)〈クリア、(編集)〉
王政時代のローマ王政府。(クリア・ホスティリアス。ホスティリアス院)
- レクス(『ローマ王』、1人、BC509年以降は空席)
- クリア(ローマ皇族〈クリア〉の民会や王の公職監の組織)
『公職監(マジストラトス)』
- ディクタトール(独裁監、定員1人、共和制期十数人、執政監オクタビヤヌスが廃止した。一度発動すると、以下の公職監の役職監の職権がなくなる。)
- ケンソル(総理監、定員2人、5年に一回。首都ローマの政治行政計画全般を整備、元老院議員の選出、戸籍調査会を主催する。)
- トリブルスプレビス(護民監、定員11人。ローマ市民の代表として、元老院や公職に非難を送る。改善さえれない場合は)
- コンスル(執政監、『市長』、定員2人、BC509年 ~ (名目上AD541年)任期一年。ローマの政治・行政・祭事・軍事の調整。)
- プラエトル(副執政監、『副市長』、定員2人、任期一年。)
- アエディリス(内務監、ローマ市の行事・公共事業の管理を担当。)
『地方都市(ムニキピウム)』
『各市政庁(クリア)』
『市長』
- 監督(エピスコポス、2人、3人、元老議員や上流階級や名士など。)
『地方議員』
- デクリオ(各都市二存在し定員100人、メンバー選考は各町で違う。『デクリオ』が施行した法律は自動的に元老院の法律と同じ効力を持つ。軍隊のデクリオ隊とは違う。)
『市民』
- ラテン市民(準ローマ市民、自由の保障、徴税なし、食糧配給あり、公共の行事に参加できる、民会参加権なし。)
- 地方都市ローマ市民(自由の保障、徴税なし、食糧配給なし、兵役なし、民会参加権なし。)
※制度は統一されていない。
※カラカラ帝の『アントニウス勅令』後、区別が無くなる。
『プロウィンキア領』
『殖民都市(コロニア)』
『市長』
- 監督(エピスコポス、2人、3人、元老議員や上流階級や名士など。)
『地方議員』
- デクリオ(各都市二存在し定員100人、メンバー選考は各町で違う。『デクリオ』が施行した法律は自動的に元老院の法律と同じ効力を持つ。軍隊のデクリオ隊とは違う。)
『市民』
- ラテン市民(準ローマ市民、自由の保障、徴税なし、食糧配給あり、公共の行事に参加できる、民会参加権なし。)
- 地方都市ローマ市民(自由の保障、徴税なし、食糧配給なし、兵役なし、民会参加権なし。)
追記
・もともとローマ軍団の駐屯地の軍事都市である。
・軍事の担当者と行政の担当者は一応、別れてた。
※制度は統一されていない。
『生産区(ラティフンディウム)』、語源だと『大牧場』
『所有』
- 元老議員やノビリス・パトリキ。
『監督係(エピスコポス)』
- 元老議員や上流階級の信任を得た、ごますり奴隷など。
『強制生産民(奴隷)』
- プロレタリア(不良ローマ軍人や、犯罪人、経済的に貧窮したローマ市民たち。)
- スレイブ(ローマの計画戦争で侵略された地元民の人間たち)
- バルバロイ(属州外の地元民を拘束しローマ軍が奴隷にした人間たち)
元老院(セナートス)
- 元老議員(セナートス、共和制期10~1200人、元首政期300人、東方ローマ元老院2000人、公職経験者が終身の議員身分なる。)
追記
・評論家・小説家の解説でいやと言うほど聞くが、「ローマの英知の集合」とされる。
・「議員の身分は終身なので、金に汚くならない」とか書いた人がいるが、殖民区(ラティフンラティウム)などで奴隷生産者をこき使って金をもうけているのは常識だった。
・300人も頑固で融通が利かない爺どもの集まりを相手にすれば、執政官も疲れるだろう。
関連タグ
国家・地名など
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