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帝国

ていこく

1.皇帝(エンペラー)を元首とする国。2.複数の民族等を支配下する大国。3.(特に批判的な文脈で)支配下に置いた「本国ではない領域(=属領、植民地)」からの収奪によって経済を賄う体制。
目次 [非表示]

概要編集

以下の意味が存在する。

  1. 皇帝( エンペラー )もしくはそれに準ずる称号を持った支配者を元首とする国
  2. 複数の民族等を支配下に置き、一定以上の広大な地域を領有する大国
  3. 本国外の支配地からの収奪によって経済を成立させる体制、主に批判的な文脈で使用され、詳細は帝国主義を参照

1.「王を越えるもの」にあたる称号を君主号とする国家編集

「帝国」の東洋的な定義であり、「皇帝」が「王を従える存在」としての意味合いを持つ称号であったため、のちに2.や3.の意味にも転用されるようになったもの。

ただしこの語が作られたのは江戸時代の日本で2で示すインペリウムの帝国の訳語として作られたという経緯があり、実際には皇帝( およびそれに準ずる称号 )を元首が名乗ること自体は極論すれば各国の自由であるため、2.や3.の要件を満たさない「帝国」も存在(大韓帝国、ベトナム帝国など)していた。


2.学術用語および慣例的意味編集

歴史学・政治学などで用いられる学術用語としての「帝国」であり、古代ローマ人の用いたインペリウム(帝国、多人種・多宗教を内包しつつ、王国とは違い民族を超えて大きな領域を統治する国家)のことを指す。語の起源としては1.よりも古い。

この意味で使用する場合は政体・国号を問わないため、当然1.の要件を満たさない帝国も存在しており(オランダ海上帝国などが該当し、大英帝国もヴィクトリア女王がインド皇帝として即位する以前および第二次世界大戦のインドの独立以降はこちらの意味の帝国である )、現代では特にアメリカがこの意味で「帝国」と他称される場合がある。


現状編集

現在では皇帝(あるいはそれに準じる存在、天皇やイスラム圏のスルタン、カリフ、シャーなど、遊牧民の用いるハーン、インドのマハラジャなど)を推戴している国家は日本のみであるが、自称・他称ともに「帝国」とは普通は呼ばれない、また「帝国」を公に国号としている国は1974年まで存在したエチオピア帝国、1979年まで存在したパフラヴィー朝イラン帝国の他は、1976年から1979年にかけての中央アフリカ帝国が最後であり、その後は存在しなくなっている。


国家以外の用法編集

さらに国家に限らず他分野にまたがる企業グループなどを指して比喩的に帝国と呼ぶこともある( 例:マイクロソフトGoogle、ロックフェラーなど )。


創作での扱い編集

創作上では王国共和国が「正義の国」として扱われるのに対して、帝国は帝国主義からの連想ゆえか「悪の国」として扱われることが多かったものの、近年は逆に「共和国」や「連邦」が悪玉とされ、帝国が正義の国とされる事例も増えている。

フィクション中ではたいてい「帝国」は一国しか登場しないため、単に「帝国」とだけ呼ばれることが多い。


また、帝国に「議会」や「元老院」といったものが出てくるが、これらは大きな帝国を維持するために必要なものである。

いくら皇帝といえどたった1人で帝国すべての領土を統治することなどまず不可能であり、親類や帝国幹部に領土を与えて間接的に統治し、地方行政官を赴任させ、さらに上位や下位に高官の組織の設置等で集権を図らなければならない。


実在の帝国編集

古代編集

  • ヒッタイト
    • 「多民族・多人種・多宗教を内包しつつも大きな領域を統治する国家」の一例。無論皇帝が存在した訳ではなく、ヒッタイト王国ともされる。
  • アケメネス朝
    • 古代ギリシアと対峙したペルシア帝国、アケメネス朝の王は「王の中の王」として周辺諸王の上に君臨した。
  • 古代アテナイ帝国
    • 大元であるアテナイ都市国家であり、かつ帝国と呼ばれる時期は民主制である。しかしながらデロス同盟を通じて海洋帝国を築き上げローマ人からインペリウム( 帝国 )と呼ばれている。
  • マケドニア王国
    • アレクサンドロス3世の築き上げた世界帝国。ギリシア世界に加え旧アケメネス領の多くを領有した。アレクサンドロスはアケメネス朝の後継者といった立場にあったがその死後帝国は崩壊した。
  • ローマ帝国
    • インペリウム」の語の発祥。支配権を意味したが周辺地域を従えるうちにその支配権の及ぶ範囲をも呼称するようになった。またローマ人は多民族を支配する強大ないくつかの国家をこの語で呼んでいる(皇帝がいたから「帝国」であったと思われがちであるが、共和政時代から「多民族・多人種・多宗教を内包しつつも大きな領域を統治する国家」であり、「ローマ帝国」は共和政期と帝政期を包括した呼び名とされる)。

中世編集

近代編集

  • 大日本帝国
    • 戦前の日本の国号は、日本国や大日本国、日本帝国と称することもあり、昭和10年に「大日本帝国」に統一されるまでは一定しなかった。
  • 大韓帝国
    • 清の属国から独立した1897年から、日本に併合された1910年までの朝鮮王朝が名乗っていた国号。東アジアでは「王国」は中華帝国に従属する国であると認識されていたため、「帝国」を名乗ることは清帝国と対等な独立国であることを意味していた。
  • 大清帝国
  • 中華帝国
    • 中華民国の政治家袁世凱が皇帝を名乗って樹立し、1915年末から1916年初めまで存在した国家。現在の中華人民共和国に対する批判的俗称として、あるいは秦以降の帝政時代の中国諸王朝に対して用いられることもある。
  • 満州国
    • 1932年-1945年。1934年の帝政移行後は大満州帝国とも呼ばれた。
  • ムガル帝国
  • インド帝国
    • 1858年-1947年。セポイの乱を受けイギリスは名だけの存在と化していたムガル帝国を解体、イギリス王を皇帝とするイギリス領インド帝国を成立させた。
  • ドイツ帝国
    • かのビスマルクや大モルトケの活躍により成立。正式な名称は「ドイツ国」だが、第三帝国とは違い実際に帝政が敷かれた。
  • フランス帝国

ナポレオンの第一帝政とナポレオン3世の第二帝政に分けられる。

    • 第二帝政は現在フランス最後の君主制である。
  • ロシア帝国
  • オーストリア帝国
  • 第三帝国
    • ナチスドイツ、元首は皇帝ではなく総統である。「第1」は神聖ローマ帝国、「第2」は1871年から1918年まで存在したホーエンツォレルン朝ドイツ帝国を指す。
    • 原語での名称は「das Dritte Reich」。das=the、dritt=thirdであり「3番目のReich」を意味する。神聖ローマ「帝国」、ドイツ「帝国」の後継者を自任してこういった異名を名乗っているので第三帝国という訳そのものは適切と言えるが、Reichという言葉自体の意味は「規模の大きい国」「王またはそれ以上の存在が統治する国家」であり帝国以外も含むため注意。
    • ちなみに「侯国」や「公国」といった、有力諸侯が治めるがさほど大きくない国に対してはFürstentum、Herzogtumのように○○tumという呼称が用いられる。
  • 大英帝国
    • 海外植民地等を含めたイギリスの支配区域の総称、公式にも用いられた。
  • ハイチ帝国(1804年-1806年、1849年-1859年)
  • メキシコ帝国
  • ブラジル帝国
    • ポルトガル王家、1822年-1889年

現代編集

  • 日本国
    • 現代でも天皇はEmperorなどと訳すのである意味で皇帝が君臨する帝国であるが、国号としては1947年の日本国憲法制定以降自称しておらず、現代日本を「日帝」と呼ぶのは、概ねその帝国主義性の残存を批判する場合である。
  • エチオピア帝国
    • アフリカ最古の国であり、ほとんどが列強に植民地化されたアフリカの中で植民地化を免れた稀有な国であったが、1970年代のクーデターで皇帝が退位し、共和制に移行した。
  • 中央アフリカ帝国
    • 中央アフリカの国。1976年から1979年までのわずか3年という非常に短命に終わった国であり、現時点では「帝国」を国号に冠した最後の国でもある。
  • 米帝
    • 「アメリカ帝国(主義)」、覇権国家としてのアメリカ合衆国に対する批判的俗称。
  • イラン帝国

架空の帝国編集

この項目に関しては架空国家も参照されたし。


関連タグ編集

国家 君主 元首 エンパイア

皇帝 天皇 カリフ

王国 共和国 連邦 帝国主義 植民地

双頭の鷲 王冠 マント オーブ

悪の帝国

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