概要
当該国の軍隊が統治を行う形の政権を軍事政権と呼び、軍の武力を背景に政治を行う国家という意味で軍事国家(ぐんじこっか)とも呼ぶ。
外国軍による占領行政を意味する「軍政」は軍事政権統治ではない。「自国の軍人が自国の文民に代わって全権を掌握し政を行なう」のが軍事政権である。
軍事政権は軍首脳が直接的に政権担当を行うことで、文民統制などの一般的な抑止装置が働かない状態にある。具体的には戒厳令を布告したり憲法を停止するなどして、行政権・立法権・司法権を一手に掌握する。
軍部が政権に多大な影響を与えている国家でも、立憲主義的法秩序が維持されている場合は軍事政権の枠組みには含まれない(イスラエルなど)。
またイデオロギーに基づく独裁的支配が憲法によって認められている場合も、軍事政権とは異なる形体として類別される。ただし当初イデオロギー色の薄い軍事政権が名目的に全体主義を標榜することもあり境界は曖昧である。
一般的に現役や予備役にある軍人が、憲法上の手続きを踏まずに大統領や首相などの政治の要職を占める(具体的には集団で銃を突きつけて脅迫し、全権を自分に譲渡させたのち退任させる)など、「**評議会」のような最高機関を設けて統治を行うといった形をとることが多い。
軍事政権は自らを非常時における過渡的政権として正当化を図ることが多い。実際に公約どおり短期間で民政移管がなされる場合もあるが、そういった国ではその後もたびたびクーデターが起って政局が不安定になることがある。また民政移管を約束しながら数十年にわたり政権に居座る場合や、自由選挙を行っても結果が自分達の気に入る者(軍部出身者や軍人の候補が当選する、軍部大臣現役武官制が認められる)でなければ「不正があった」などの理由をつけて民政移管を中止する例もある。
官僚組織の一種である軍隊は選挙や市場原理などによる自浄作用が働かず、国の利益より軍組織や軍首脳の利益を優先しがちになる欠点がある。
冷戦時代には頻発したが、21世紀では衰退している。
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