概要
2つの頭を持つ鷲の紋章。主にヨーロッパの東ローマ帝国、神聖ローマ帝国、ロシア帝国とその関係国などで使用された。
ギリシャ語ではディケファロス・アエトス(Δικέφαλος αετός)、ロシア語ではドゥヴグラヴィイ・オリョール(Двуглавый орёл)、ドイツ語ではドッペルアドラー(Doppeladler)、英語ではダブルヘッデド・イーグル(Double-headed eagle)と呼ばれる。
歴史
モチーフ自体は古くから存在するが、現在使用されているものの多くはローマ帝国が国章としていた鷲に由来する。この鷲は単頭だったが、その後ローマ帝国が東西二つに分裂して以降、東ローマ帝国では「東西ローマ双方に対する支配権」を示す象徴として紋章の鷲を双頭とするようになった(ただしこの紋章が使われるようになった時代には、旧西ローマ帝国領域に対する東ローマの支配権は既に失われつつあった)。
東ローマ帝国が滅亡すると、その継承権を主張するセルビア・アルバニアやロシアが「ローマの後継者」の象徴として双頭の鷲を用いるようになった。後にロシアではこの紋章に「ヨーロッパ(西)とアジア(東)の支配」という意味が付け加えられている。
また、西ローマ帝国の後継を自認する神聖ローマ帝国とハプスブルク家もこの紋章を用いるようになり、こちらはドイツ帝国やオーストリア=ハンガリー帝国に受け継がれた。他、ハプスブルク家から王が立ったカルロス1世時代のスペインでも使用された。
WW1後のロシア革命・ドイツ革命、オーストリア=ハンガリー崩壊やWW2に伴う東欧の社会主義化によって、皇帝の象徴と見なされたこの紋章は使われなくなっていった。
現在
冷戦が終わると、ロシアや東欧では国章として復活している(ただしドイツやオーストリアでは、現在でも単頭の鷲しか使われない)。
東ローマ帝国と関係の深い正教会でも一部の教会で使用されている他、多くのサッカーチームのロゴに用いられている。
日本ではこの旗をモチーフにしたオーストリア=ハンガリーの行進曲「双頭の鷲の旗の下に(Unter dem Doppeladler)」が有名だろう。
関連タグ
黒鷲:ハプスブルク系の双頭の鷲は多くが黒で描かれる。
白鷲:セルビアでは白で描かれる。現在のロシアの国章も白い双頭鷲。