概要
大きく分けて、以下の3つの意味に大別される。
上記を見ればわかるように、基本的に肯定的な意味合いで用いられることはない言葉である。
1について
帝国主義やそれに伴う植民地支配のイメージからか、強大な軍隊を率いて周辺諸国へ侵略行動を仕掛け、征服した地域に圧政を敷くという展開が多い。アダルトゲーム等では、これに加えて人身売買や奴隷産業等にも手を染めていたりするケースや、魔族等の魔界の勢力と結託しているか、若しくは同義の存在とされるケースもある。
大抵の場合、主人公はこの悪の帝国を倒す側に立つ場合が多いが、ハーレムもの等の場合、逆に主人公が帝国のトップたる皇帝になるケースも少なくない。
また、最近ではこうしたこれまでの傾向を逆手に取り、「悪の帝国かと思いきや、実はそうではなかった」「むしろ帝国の周辺国の方がはるかに悪どい勢力だった」というミスリードも見られるようになった。
2について
東西冷戦下の1983年3月8日に、当時のアメリカ合衆国大統領ロナルド・レーガンが、全米福音派連盟での演説において、対立国であるソビエト連邦を揶揄して用いたフレーズである。
要するに、東西冷戦は、善たる西側(資本主義)陣営と、悪である東側(社会主義)陣営の戦いであると断じたものであり、後日ソ連側は「アメリカこそ全世界の支配を企む帝国主義の超大国であり、我が国は人類の名においてそのアメリカと戦っている」と反論、さらに国営のタス通信は「レーガン政権は狂気的な反共産主義に基づく、対立と敵意の観点からしか物事を見ていない」と批判した。
レーガンはこの発言を撤回することはなかったが、後にゴルバチョフ書記長と会談した際、記者から「今でもソ連を悪の帝国だと考えているのか?」と質問された際には、「もうそんなことは思っていない。その言葉を使うとすれば別の時、別の時代だ」と話している。
3について
プロスポーツにおいて、豊富な資金力に物を言わせて有力選手を次々に獲得する金満チームのことを揶揄した言葉。主に野球において使われ、それ以外のスポーツで使われることは稀(例えば、サッカーの名門であるレアル・マドリードもそう呼ばれてもおかしくないのだが、もっぱら“銀河系軍団”と肯定的な意味合いも含めた呼び方をされることが多い)。
なんJ界隈では「邪悪球団」と言われることもある他、似たようなニュアンスの言葉に「大正義」がある。
このフレーズが生まれたのは、2003年、キューバから亡命してきたホセ・コントレラス選手を獲得寸前に、総額3200万ドルでニューヨーク・ヤンキースに奪われた形となったボストン・レッドソックスのCEO:ラリー・ルキーノ氏が「ヤンキースは悪の帝国だ!」と非難したことがきっかけである。
この当時のヤンキースはオーナーのジョージ・スタインブレナー氏の下、豊富な資金を元手にスター選手を片っ端からかき集めており、多くのMLB関係者から批判を浴びていた。球団間の戦力の均衡化を図るための制度である「贅沢税」も、元を辿ればヤンキースのこうしたスター選手の総取りへの対策として生み出された側面が大きかったと言われている(しかし、ヤンキースはスタインブレナー氏の存命中は贅沢税を払ってでもスター選手を集め続けたため、大した効果を上げられたとは言い難い)。
なお、スタインブレナー氏の死去後、球団の経営は彼の息子が引き継いだものの、父親とは対照的にコスト削減を重視していることもあり、かつてのようななりふり構わぬ選手の買い占めは行われなくなった。
- 野球ファンから「悪の帝国」として扱われやすい球団
- ニューヨーク・ヤンキース(MLB アメリカンリーグ東地区)
- ロサンゼルス・ドジャース(MLB ナショナルリーグ西地区)
- 読売ジャイアンツ(NPB セントラル・リーグ)
- 福岡ソフトバンクホークス(NPB パシフィック・リーグ)
なお、当然ではあるが、どれだけ金をかけてチームを補強したとしても、シーズン中に必ずしも良い成績を残せるとは限らない。それこそ、生え抜き選手が主体のチームが金満チームを打ち倒して優勝したという事例も数多いのだ。
それこそが勝負の世界たるスポーツの醍醐味であり、同時にある種の残酷さでもあると言えるだろう。