象徴的なミサイル巡洋艦
アメリカ
歴史的に、アメリカ海軍のミサイル巡洋艦(Guided missile Cruiser:艦種識別記号CG)は、ミサイル駆逐艦よりも大型の艦体に長射程の艦対空ミサイルを搭載した防空艦であったが、ミサイル駆逐艦の大型化やミサイルの小型化・長射程化に伴い両者の境界は不明瞭になっている。
現役
退役
原子力ミサイル巡洋艦「ロングビーチ」
原子力ミサイル巡洋艦「ベインブリッジ」
原子力ミサイル巡洋艦「トラクスタン」
ロシア
ロシアにおけるミサイル巡洋艦(Ракетный крейсер)は、アメリカにおけるそれとは全く異なる発展を遂げた。
ソ連時代のミサイル巡洋艦は長射程の艦対艦ミサイルを主兵装とする対艦攻撃艦で、ロシア語ではミサイルとロケットを区別しないため翻訳も「ロケット巡洋艦」とされることがある。ソ連のミサイル巡洋艦は敵艦隊の航空母艦等大型艦艇を撃破することに設計と運用の主眼を置いた艦艇であるが、艦が大型であるため、艦隊防空のための広域防空ミサイルシステムも搭載する余地があり、防空艦としても重要な位置を占めることとなった。
一般に、ソ連では原子力潜水艦とミサイル巡洋艦が空母のような大型主要目標を攻撃する任務を担っており、これを大型・小型ミサイル艇と大型・小型ミサイル艦、それに艦対艦ミサイルを装備した一部の大型対潜艦や駆逐艦が補助する形をとっていた。中・小型の艦艇の搭載する中・短射程ミサイルが実質的に空母の護衛艦艇や揚陸艦艇部隊を攻撃するためのものであったのに対し、ミサイル巡洋艦や原子力潜水艦の搭載した長射程ミサイルはまさに空母を撃破する能力を有していた。一方、ソ連ではミサイル巡洋艦のような大型艦に広域防空ミサイルシステムを搭載し、艦隊防空の要とした。これを駆逐艦・大型対潜艦・警備艦クラスの中型艦艇の搭載する中射程ミサイルが補い、さらに各艦に短射程ミサイルや近接防御システムを装備することで強固な防空体制が築かれていた。
本来は、ソ連のミサイル巡洋艦はアメリカでのような意味においては防空の目的のために建造されたのではなかった。こうした事情を把握していない西側諸国では、防空ミサイルシステムを搭載するソ連の大型対潜艦なども西側流のミサイル巡洋艦に分類し、それらの艦艇とソ連の対艦攻撃艦であるミサイル巡洋艦とを混同してしまった。
現役
退役
余談
ロシア海軍が運用しているミサイル巡洋艦にキーロフ級があるが、これは世界のあらゆる巡洋艦の中でも最大であり、英国戦艦ドレッドノートすら上回る基準排水量を誇る。このことから、ジェーン海軍年鑑では巡洋戦艦として分類された。