名前
名前は「隠す」を意味する動詞「imin」から来ており「隠されたる者」を意味する。
古代エジプトの言語における発音にはわかってない部分も多く、現代における表記もアメン、アムン、アモンと様々である。
ギリシャ語、ラテン語での発音アモン、アンモンからはアンモナイトという命名が生まれた。
ヘブライ語のアーメンは「本当に」「然り」という意味であり無関係。聖書に出てくるセム系民族アンモン人とも無関係。
ソロモン72柱のアモンはアメン神が元になったとする説がある。
アメンと他文化圏の神との習合のバリエーションとして「セラピス・アムン・アガトダイモーン」があるが、こちらは人の頭ではあるが、下半身は悪魔アモンと同じく蛇である。
アモン神と悪魔アモンは、名前に類似性があり、(アモンの場合、習合神アメン・ラーが)鳥の頭を持つが、その種類は両者で違っており、違ってもいいなら鳥頭の悪魔は他にもいる。
偶然と考える事も十分可能だが、古代エジプト文明が滅んだ事による情報の断絶を考慮に入れるなら、伝言ゲームの結果と考える事も可能なのかもしれない。
概要
神名とこの神に捧げられた賛歌の内容、男根を勃起させた豊穣神ミンの姿で造形される事から、元は目に見えないものとしての大気、自然や万物を動かし育む力を司る神と見られる。
ナイル川の東岸にあるテーベで信仰されていたローカルな神であったが、この地の王族によりヒクソスと呼ばれる異民族が撃退されると、この戦勝をもたらした神として称揚された。
この王族による「エジプト第18王朝」はやがて全エジプトを統一し、ヌビアやシリア方面にも進出した。
アメンは敵国に対する勝利や領土拡大を支える国家神の性質を持った。
さらに、ラー、アトゥムのような他の著名神と習合することで、古代エジプトの神話世界において有力な神となった。
こうした特徴からアメンの神官団は国家の中枢に食い込み、権勢を誇った。
世界初の一神教、と呼ばれる事もあるイクナートンのアテン信仰の宗教改革の動機の一つとして、強大になりすぎたアメン神官団を疎んだから、という説もある。
信仰
テーベにおいては地母神ムトを妻とし、彼女との間に息子である月神コンスをもうけたとされた。
第18王朝以降は最高神とも呼べる極めて高い地位に上り詰めたが、その信仰においては他の神と共に祀られた。テーベのカルナック神殿には、アメンのほかムトと軍神モンチュが主祭神として祀られている。
アメンへの信仰はオリエント、地中海世界をアブラハムの宗教が席巻するまで続いた。ギリシャ人からはゼウスと、ローマ人からはユピテルと同一視された。
アレクサンドロス大王はこうして生まれた「ゼウス・アモン」の息子(神の子)を自称した。
姿
青い肌の男性の姿、クヌムのような羊頭人身の姿、羊そのものの姿、また前述のミンの姿で造形される。
習合神であるゼウス・アモンやユピテル・アモンは普通の男性に羊の角が生えた姿である。