概要
M1エイブラムスは、M60パットンの後継として1970年代に西ドイツと共同開発を進めていたMBT-70計画の頓挫により、新たにアメリカ合衆国単独で開発し、1980年に正式採用された戦後第3世代主力戦車である。主に、アメリカ陸軍及びアメリカ海兵隊が採用した。
特徴として、現代戦車の主流であるディーゼルエンジンではなく、ハネウェルAGT1500ガスタービンエンジンを採用している点が挙げられる。
また、当時としては最先端機器を用いた高度な射撃統制装置(FCS)を採用した事で、高い命中率を誇る。
主砲は西側第2世代主力戦車の標準装備と言える51口径105mmライフル砲M68A1を採用した。
M1エイブラムスは従来のアメリカ戦車と同様に発展余裕に富んだ設計で、制式化後も度重なる改良が施された事も特筆すべき点である。
現在では44口径120mm滑腔砲M256を搭載したM1A1や、C4Iシステムを搭載し第3.5世代主力戦車に分類されるM1A2が運用されている。
欠点としては、ガスタービンエンジンを採用したために燃費が悪い点が上げられる。
特に始動時とアイドリング時も大量の燃料を食うことから停車時の発電用に小さなエンジンを別に搭載している。
また、ガスタービンの高温排気が真後ろに噴出するため市街戦などで歩兵が戦車の後ろに隠れていることができない。
約12年あまりの間に8,322両が生産されたが、改良版のM1A2も1992年に生産停止され、アメリカ合衆国は主力戦車を長らく生産しておらず、性能向上は既存個体の改造によってなされている。
性能向上時にはM1を一度解体し、再度組み立てなおしている。
生産終了後も度重なる改良により、現在でも世界最高水準の戦車であると世界的に評価されている。
動力源であるガスタービンエンジンは欠点も多いが高出力で信頼性が高く、加速性能・登坂能力も高く、燃料の許容範囲が広い、動作温度範囲が広い、冷却水が不要など多くの長所もある。
湾岸戦争
T-72(モンキーモデル)の125mm砲の成形炸薬弾や徹甲弾(鋼鉄弾芯)を正面からはじく、熱映像装置(サーマルサイト)により悪天候時や砂丘など遮蔽物に隠れた目標の撃破に成功、撃破されても乗員の被害は少なく車体自体も損害軽微、等とその優秀性をこの戦争で実証することとなった。
また、GPSを用いたランドナビゲーションを用いたことで砂漠と言う天然の防壁を越えた侵攻を可能とする事を証明した。
サーマルサイトでは敵味方の識別ができず同士討ちが多かったため、後に敵味方識別装置(IFF)が搭載されることとなった。
イラク戦争
一般的な建築物内の敵スナイパー等を排除する際に主砲のHEAT弾を用いての排除は機関砲と違い貫通弾による余計な被害を生じさせることは無い、強固な装甲は歩兵の盾となるとして、非対称戦争においても戦車が有効であることを証明している。
しかし目標建築物至近で発砲して建築物を崩すのはやりすぎだと思います。
一方、IED(即席爆発物装置)で撃破される事態が発生している。
IEDに榴砲弾を束ねたものを使うのはともかく、1000ポンド航空爆弾を使うのは非常識すぎるのだが。
民兵が撃ったRPG-7をもろに食らって被弾したが、なぜか損傷軽微で反撃という事例があったりもしたという。