概要
歯車を使わずに、エンジンの駆動力をベルトと臼形プーリーなどを使って無段階に変速できる変速機(摩擦式CVT)のこと。
起源はかなり古く、スクーターなどでよく用いられるゴムベルト式CVTは20世紀初頭から普及していたが、現在の自動車で主に用いられるスチールベルト式CVTは1970年代にオランダのDAF社で発明された。またスバルとアウディはチェーン式CVTを用いている。またベルトを使わないトロイダルCVTも存在し、日産がジヤトコ、NSKと共同開発したトロイダルCVTの一種「エクストロイドCVT」を一時期、同社製の一部FR車に搭載していた。
現在(2000年代末以降)の日本車ではトランスミッションの主流で、過去にATだった車種がモデルチェンジやマイナーチェンジでCVTとされたことも多い。
初期のスバルや日産のCVT(ECVT)は電磁式の自動クラッチで発進時のクリープ現象が存在しないという特徴があったが、1990年代後半以降はトルクコンバーターと組み合わせてクリープ現象を得る方式が主流となり、下記のシフトポジションの表記を除いてATとの違いが意識されることはほぼない。
長所と欠点
エンジンの回転数を比較的一定にしながら変速できるため、理論上はMT・ATのような有段式変速機より燃費が良い(有段式変速機はギヤごとの最適車速と実際の車速のズレはスロットルで吸収するため出力曲線に段ができ燃費の悪化を招く)のだが、動作には高い油圧が必要となるためオイルポンプの動作分が損失となり、高速で長時間走行する場合の燃費は有段式変速機に劣る場合もある。
技術的に高トルクを伝達することが難しく、1990年代までは搭載車種は小型車に限られたが、最近では高級車(エルグランドなど)やライトバンにも採用されている。しかしトルク容量が小さいことから大量の荷物を搭載するトラックやバスのような大型車には適さないため、あまり採用されていない(しかし、10式戦車、高機動車など近年の陸上自衛隊の車両はAT仕様が納入されている)。
欧米では日本ほどストップアンドゴーがなく変速回数が少ないことからCVTにしてもそれほど燃費削減につながらず、あまり使われていない(欧州ではMTとDCT、北米ではATが主流)。
欠点は前述のようなトルク容量の低さ、エンジンブレーキが弱い傾向があること、変速幅に限界があること(副変速機の搭載で対処しているが、近年のATの多段化による変速幅向上には追いついていない)、整備に特殊な技術が必要なこと(CVTが故障した際、分解修理ができる整備工場は少ない。通常はCVTごとアセンブリ交換することとなる)、そして無断変速であるゆえに変速スピードが遅いこと(ギアを切り替えるのではなくプーリーの幅を変えることで変速するためどうしても変速に時間が掛かる)。またエンジンの回転数と加速が一致しないため人により違和感を感じられる場合がある。
広義のCVTはエンジンを発電機として使い電気モーターで駆動するシリーズ・ハイブリッド方式やトヨタ・プリウスのようなスプリット式ハイブリッドも含むが、これらは正確には動力伝達機構や動力源そのものが無断変速特性を持っているため、変速機がない(不要である)というのが正しいと思われる(これらは少なくともいわゆるトランスミッションとは明らかに異なる装置である)。
その他の詳細に関してはWikipediaを参照のこと。
表記について
シフトポジションのDより下の表記がATとは異なる。ATのD、(3)、2、L(1)に対してCVTの表記はD、(S)、B(L)である。MTモードを備える車種はATと共通の場合もある。
これはATの2やLはあくまでギヤ段を2速や1速に固定するレンジなのに対してCVTはギヤという概念が無いため、Bレンジにしてもある程度変速する(変速比が低速寄りになるだけ)という機構的な違いから表記が変えられているのである。なおCVTの「B」はブレーキのBであり、もっぱらエンジンブレーキとして使うことを前提としている。「S」(スポーツ)はローギヤ中心の動作となる。ATで言うところのO/D OFFに相当する。
機能的にはATのエンジンブレーキとほぼ同じで、よほど詳しくない人には違いがわからないことが多いであろう。