概要
エンジンと走行装置を有する機体上に油圧シリンダーで作動する腕(ブーム、アーム)の先端にバケットを取り付けて、土砂などを掘削または整地する自走式掘削機のこと。エンジンにはディーゼルを使用するものが多く、操縦席と腕の付いた上部フレームは油圧モーターで旋回する。
油圧シリンダー作動は大型化に限界があり、作業半径が20mを超えるような大規模な掘削機械には、ウインチとワイアーで作動する昔ながらのケーブル式ショベルやバケットホイールエクスカベーターが使用されている。
腕にフックを取り付ければクレーンとしても使用可能。ただし、その際は移動式クレーンの免許も必要となる。
下部走行フレームにドーザーブレードを装備し、ブルドーザーとして使用できるものもある。
足回りは無限軌道を装備したものが多いが、タイヤを装備したホイール式ショベルもある。
無限軌道は小型機ではゴム製の事が多いが、大型の車両では金属製が多い。そのため、舗装路を通過するなどする際はゴム製の保護履帯を取り付けないと舗装が削られてしまう。
近年はエンジンで発電機とオイルポンプを回し、電気モーターで上部フレームの旋回など慣性力のかかる動作を行い、回生ブレーキで電気を回収するものもある。
名称
「油圧ショベル」は、1990年代に入ってから、社団法人日本建設機械工業会により制定された統一名称である。
「パワーショベル」は小松製作所の商標、「ユンボ」はSICAM社(フランス)の商標で、固有の商品名である。「ショベルカー」はこういった商標名を回避するために使われた言葉で、業界用語には存在しない。
ショベルの作用面が手前を向き、操縦者側に引き寄せるように作業するものを「ドラッグショベル」、地表より下の掘削に適するドラッグショベルを「バックホー」と呼ぶこともある。
アタッチメント
腕の先端は別のパーツに交換できるアタッチメント方式が多い。
バケット
溝掘り作業に使用。穴掘りや解体ガラ分別、岩石の掘削など目的によって形状の異なるものが各種ある。
リッパー
爪状で、木の根を抜いたり、岩石を削るのに使用。
油圧ブレーカー
削岩機。主に破つりや採石場での石の小割り、岩盤の掘削作業にに使用。また、トンネルの掘削時に発破ができない場所で使用されることがある。
油圧クラッシャー
鋏状で、鉄骨などを切断する。鉄橋、鉄道車両、自動車、航空機などの解体に使用。
グラップル
嘴状で物が掴める。林業や家屋の解体、廃棄物の分別に使用。
電磁石
くず鉄の移動や分別に用いる。
操作
無限軌道
無限軌道を装備する機種は走行時の操作が統一されており、中央に二本ある走行用のレバーがそれぞれ右のカタピラと左のカタピラに対応し、前へ倒せば前進、後ろに倒せば後退する。ペダルがレバーと直結されていることもある。
【操作例】 前進・後退は車体から見てであり、操縦席が旋回して後を向いている時は逆になる。
左レバー | 右レバー | 動作 |
---|---|---|
前 | 前 | 前へ直進 |
前 | 前へ少し倒す | 右へ曲がりながら前進 |
前 | 中立 | 右へ信地旋回 |
前 | 後 | 超信地旋回(時計回り) |
後 | 前 | 超信地旋回(反時計回り) |
スロットル
出力調整に用いる。
腕・バケット
左右アームレストの部分に操作用のレバーがある。
操作パターンはJIS式とコマツ・日立パターンが主流で、メーカー出荷時はJIS式に設定されている(三菱パターンや旧・ヤンマーパターンもあるが少数派である)。
右レバーの操作
左右でバケット操作(左:掘削、右:開放)、前後でブーム操作(前:下げる、後ろ:上げる)
左レバーの操作
JIS式では前後でアーム操作(前:伸ばす、後ろ:曲げる)左右で旋回(左:左旋回、右:右旋回)。
コマツ・日立パターンではレバーの左右と前後の役割が逆で、(前:右旋回、後:左旋回、左:アーム伸ばし、右:アーム曲げ)。
左レバーの操作が混在している地域では、JIS式を横旋回、コマツ・日立パターンを縦旋回と呼ぶことがある。