作品解説
1997年に公開されたアメリカ映画で、DCコミックスの『バットマン』の実写映画化作品。
1995年公開の映画『バットマンフォーエヴァー』の直接の続編であり、1989年の映画『バットマン』から続いたシリーズの完結編。バットマンと前作で相棒となったロビンが、ゴッサム・シティを氷漬けにしようと企むMr.フリーズとポイズン・アイビーに立ち向かう物語が描かれる。
配給はワーナー・ブラザース。
前作のファミリー向け路線をさらに推し進めた作品であり、『バットマン』をメジャー作品にした60年代のTVドラマシリーズ(アダム・ウェスト版バットマン)を意識した明るくスピーディーな演出がなされている。
監督は引き続きジョエル・シュマッカーが務めているが、主演はヴァル・キルマーから当時スター街道に乗り始めていたジョージ・クルーニーへと交代した。
また、バットガール(バーバラ・ウィルソン)役に当時アメリカでアイドル的な人気のあったアリシア・シルヴァーストーンが抜擢された他、悪役であるMr.フリーズ役にアーノルド・シュワルツェネッガー、ポイズン・アイビー役にユマ・サーマンが起用されたことでも話題になり、シリーズの中でも最も豪華なキャストが揃っている。
しかし、いざ公開されると先述のノリを意識した演出と脚本が完全に裏目に出てしまい、作品評価はボロクソ。
ドラマ性を全く感じられない物語と、悪い意味でサブカル感丸出しなビビッド過ぎる世界観描写が「おもちゃっぽい」と特に批判され、演技面においてはアリシア・シルヴァーストーンがド酷評された(ユマ・サーマンへの批判も存在したが、彼女については肯定的な評価も多かった)。
また、今回のバットスーツやロビンのスーツに付いてる乳首の意匠や、着装時に股間や尻をズームアップする演出が同性愛的であるとも指摘され、「ジョエル・シュマッカー監督は最高のゲイ映画を作った」と陰口を叩かれる有様であった。
公開初週こそ97年度第3位の興行成績を記録したがすぐに下落。海外セールスによって最終興行成績はそれなりのレベルで落ち着いたが、アメリカ本国内では予算分は回収できずに大爆死の結果に終わった。
ダメ映画を表彰する第18回ゴールデンラズベリー賞では各部門にノミネート。
本作の失敗を受けて、製作予定であった続編『バットマントライアンファント』の企画は立ち消えとなり、バットマン映画シリーズは2005年のクリストファー・ノーラン監督の『バットマンビギンズ』でリブートされるまで雌伏の時を余儀なくされた。
後にジョエル・シュマッカー監督自らが「楽しんで欲しかったのだがこんなことになって申し訳ない」と謝罪コメントを残しているが、ワーナー・ブラザースから「バットマンをもっと明るく、子供向けのファミリーフレンドリーな作品にしろ」という要求があったことを明かしている(そういう意味ではジョエル・シュマッカー監督はきちんと仕事をやり遂げたと言える)。
物語
犯罪都市ゴッサム・シティ。
バットマンとロビンの前に現れた冷凍怪人Mr.フリーズ。彼は不治の病の妻を冷凍保存する際、事故で氷点下でしか生きられない肉体となってしまったため、冷凍スーツの原動力となるダイヤモンドを強奪するべく犯罪を重ねていたのだ。
一方その頃、南米ではウッドルー教授の筋肉増強剤の人体実験により、ベインが誕生する。ウッドルーはこの筋肉増強剤を闇で売りさばこうとしていた。
ウッドルーの共同研究者である植物学者パメラ・アイズリーは、その秘密を知った為に彼に食虫植物の毒液の中に突き落とされて殺されかけるが、毒液と反応を起こしたことでフェロモンと毒を含有する女怪人ポイズン・アイビーとして復活。アイビーはウッドルーを毒のキスで殺害し、ベインとともにゴッサムへ向かう。
そんな状況の中、ブルースの忠実な執事にして親代わりであったアルフレッド・ペニーワースは病魔に冒されていた…。
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ティム・バートン&ジョエル・シュマッカー版四部作
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